御幸 一也
いい夢見てね
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第一印象は、可愛らしいタイプのイケメン。
今ほど身長も高くなくて、どちらかというとおぼこい印象。
だけど、入学して半年経つ頃にはもう今現在の
イケメン御幸くんがほぼ出来上がっていた。
女子と絡んでいる印象はあまりなく、
放課中は、同じクラスの野球部員と話すか、
なにかよくわからない本(スコアブックと言うらしい)を読んでいるイメージが強い。
なんというかね。
顔、雰囲気がイケメンなわけだから、勉強してる姿も、
スコアブック?を読んでる姿も、野球部の子と話してる姿も
全てが様になるわけで。
気づけば女子の間では相当人気が出ていた。
私はというと、そんなイケメンに成り果てた御幸くんを、
横目で見つめることしかできなかった。
私は御幸くんと接点があるわけではなく、
他の女子みたいにぐいぐい話しかけにいけるわけでもない。
ただ遠くから見ているだけで、十分だった。
そんなある日の昼放課、
礼ちゃん先生のもとへ未提出だったプリントを届けに職員室まで来たら、
ちょうど御幸くんと話をしているところだった。
邪魔をしてはいけない、と職員室を見渡すと
用務員のおばちゃんが大量の掃除用具を運ぼうとしていたので、
急いで声をかけた。
「佐々木部さん!手伝いますよ」
「あらぁ、白石ちゃん。いつもありがとうねぇ」
「いえいえ!これくらい全然なんともないですよ!
佐々木部さんいつもお菓子くれるからね、
そのお返しだとでも思ってこき使ってください!」
なんて笑いながら話をして、大量の掃除用具を受け取る。
うわっ。結構多いな、、、佐々木部さんと2人で運べるかなぁ。
なんて思って歩き始めようとしたら
「俺も一緒に待つよ」
と声をかけられるのと同時に、私の手から3分の2ほどの荷物がなくなる。
相手を確認する間もなく、
「あらあら御幸くん、助かるわぁ。
白石ちゃんと2人で運べるか心配だったのよぉ。」
と、声の正体が御幸くんだとわかる。
「ははっ。
俺もいつも佐々木部さんにお菓子もらうからさ。
教室戻るついでだし、手伝うよ」
「ありがとねぇ。
ほんっと御幸くんは顔だけじゃなくて中身もイケメンなんだから、
おばちゃんあと30くらい若かったら狙ってたわよ、うふふ。
ねぇ。そう思うわよね?白石ちゃん」
急な出来事についていけずフリーズしていたところに話題を振られ、
まったく2人の会話を聞いていなかった私は、よくわからないまま、
そうですね、なんて返事をする。
「ふふふ。御幸くんはモテモテね」
佐々木部さんは何やら楽しそうに歩き始めた。
やややややややややばい!!!
いつも遠くから見ているだけの御幸くんが、
今!!私の!!!!隣を!!!歩いている!!!
緊張が止まらない。変な汗をかいている気がする。
佐々木部さん…スタスタ歩いて、行かないで。
私を置いて、御幸くんと2人にしないで。
「えっと…白石、さん?」
「ひぇっ!!?」
急に名前を呼ばれ、変な声が出る。
「はっはっは、緊張しすぎじゃない?なんか変な声出てたし」
と御幸くんが楽しそうに笑っている。
は、、、恥ずかしすぎる。
「あ、笑ってごめん…。反応が面白くて、つい。
…白石さんは佐々木部さんと仲良いの?」
信じられない。あの!御幸くんが私に話しかけている。
これは夢だろうか、、、いや。
頬はつねれないけど、手に重みを確かに感じるからきっと夢ではない。
「えっと、うん、そうだね。
週1でお昼ご飯一緒に食べるくらいには」
「え!!!2人で食べてんの!?めっちゃ仲良しじゃん!
佐々木部さんいい人だし面白いよなー。
俺もお昼一緒に食べたいんだけど!今度一緒していい?」
と、少年のように目を輝かせる。
「えっ!!!?」
突然の質問に、目をパチクリさせる。
今、なんて…御幸くんと一緒にお昼を!?
そんな夢みたいなことがあるの!!?
「無理に、とは言わねーけど」
私の反応を見て、少しだけしゅんとした表情をする。
それがすごく可愛くて、ふふっと笑ってしまう。
「…何笑ってんだよ」
眼鏡の奥から覗くタレ目に、少し睨まれる。
「な、なんでもないよ!!是非、一緒に食べましょう!
今度佐々木部さんにも話しておくね」
そう言い、掃除道具を倉庫に戻し御幸くんと別れた。
佐々木部さんと2人で職員室に戻る。
「御幸くんって、ほんとーにいい子よねぇ。
いつもね、白石ちゃんみたいに、私のこと手助けしてくれるのよ〜
それにやっぱり、顔がイケメンなのよねぇ。
あんな中身も外見もイケメンな子が彼氏だったら、いいわよねぇ」
「ふふふ。そうですね、たしかに、御幸くんはイケメンです!
私、今日初めて御幸くんとお話ししたんですけど…
すごく嬉しかったなぁ」
「…あら、もしかして白石ちゃん、御幸くんのこと好きなの?」
佐々木部さんは、嬉しそうに笑う
「え!?や、好き、なんて。
私と御幸くんじゃ生きてる世界が違うんで!!
そんなおこがましいこと言えない、ですよ…」
「そんなことないわよ?
同じ高校生なんだもの。好きなら、堂々と好きでいていいのよ。」
佐々木部さんは、にこりと笑ってじゃあまたねと職員室を後にした。
私は礼ちゃん先生にプリントを渡し、教室に戻った。
堂々と好きでいていい、か。
そっか、せっかく好きになったんだもん。
佐々木部さんの言う通りなのかも…
一か八かで、私も、頑張ってみようかな。
「そんでそこで急にみゆが俺の教室来て、
私、1-Cの白石みゆです!
御幸くんの彼女になりたいです!
って言い放ったんだよなー。
しかも、クラスのやつほぼ全員の前でな!
…くくくっ。あれは、本当に…
今まで受けた告白の中でいちばん衝撃的で漢らしかったわ」
あー、腹痛ぇ。と涙を流しながら笑い続ける男に飛びかかる。
「…別にいいじゃん。
そのおかげで今もこうして一緒にいれるんだから!」
私は、御幸の胸に頭をぐりぐりと押しつける。
「そうだな、今俺がこうして幸せなのも、みゆのおかげ。
今でも思い出すと笑えるけど、
あの日のみゆは最高にかっこいい告白してくれたよな。
俺を、好きになってくれてありがとな」
飛びついた私の体を、御幸はぎゅっと抱きしめる。
「でも、みゆは知らなかったと思うけど、
実は俺、入学してすぐの頃にはもうみゆの存在知ってたんだぜ」
「えぇ!?そうなの?」
付き合って3年ほど経つが、初めての事実。
「あの日もみゆは、佐々木部さんの手伝いしてた。
2人で会話しながら、めちゃくちゃ楽しそうでさ。
ちょうど夕日で、みゆの笑顔が照らされてさ、
それが超綺麗で、めっちゃ感動したんだよね。
今でも、あの瞬間は鮮明に思い出せる。
きっと、あの時にはもうみゆは俺の心を動かしててさ。
トドメの1発が、あの告白だったのかもな。」
ニシシ、と御幸が笑う。
御幸がそんな風に思ってたなんて知らなくて、少しだけ恥ずかしかったが、
御幸の笑顔に釣られて、私も笑ってしまう。
「…てことは、私たちの恋のキューピッドは、佐々木部さんなんだね」
「ははっ。本当だな」
「今度さ、青道顔出して、佐々木部さんに会いに行こうよ」
「それもありだな。
俺らのキューピッドだって知ったら喜ぶんじゃねーの?」
そう言って、私たちは唇を重ねる。
段々と荒くなる2人の吐息が、静かな部屋に響き始めた。