奥村 光舟
いい夢見てね
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同じクラスの奥村くんは、いつもひとりで何かを読んでいて
クラスメイトが近づけないようなオーラを放っている。
それでも、今日もかっこいいなぁ、なんて思って見ていると
「みゆ、顔から気持ちが溢れ出てるよ」
なんて笑って話しかけてくる友人に
「え!うそうそ。どんな顔してた私」
なんて顔を机に突っ伏す。
私は同じクラスの奥村くんに恋をしている。
入学して半月、喋ったこともないし、席が隣なわけでもない。
野球部だと言うのは知っていたけど、
初めて練習しているところを見たのは、2.3年生たちとの試合の時だった。
先輩相手に堂々とプレーしている奥村くんに惹かれて、
気づけば、その日から毎日目で追っていた。
奥村くんを見ていて、気づいたこと。
口数は少ないけど、感情がすぐ顔やオーラに出る。
勉強は、あんまり得意じゃなさそう。
あと、とにかく野球が大好きで大好きでしょうがない。
知れば知るほど、私は奥村くんにハマっている。
「彼女とか、いるのかなぁ」
「どうだろねー、瀬戸に聞く限りではそれっぽい人はいないみたいだけど。」
「え?桜、瀬戸くんと友達なの?」
「うん、こないだ図書館でたまたま話す時あってそっからかなぁ」
「……桜はすごいよね。すぐに誰とでも話せるし」
「いやでも、さすがの私も奥村とは話したことない」
と言って笑っている友人越しに見える奥村くんは難しい顔をしていた。
「…奥村くんは、どんな子と付き合うんだろう」
「えーーー、それ私じゃなくて本人に聞きなよ」
「はっ!?何言ってんの!無理無理!
そもそも、私の名前も知らないだろうし!
話したことない女にそんなこと聞かれたらキモいでしょ!」
「いや、みゆ、そこまで卑下する必要ないでしょ」
でも、奥村くんはどんな女の子なら仲良くなるんだろう
どんな女の子と付き合うんだろう
なんて思っていると、
「奥村、お昼行こう〜」
って、見知らぬ女の人、しかも先輩ぽい人が奥村くんに話しかけていた。
え?だ、誰?
奥村くんはといえば、嫌そうな表情をしてたけど
最終的には立ち上がり先輩と教室から出て行った。
「え、い、今の誰?」と、完全にテンパっている私を見て
「確か、野球部のマネージャーだった気がする」
「マ、マネージャー…」
「別に、付き合ってる感じでもなかったし、
きっと同じ部活の先輩後輩で仲良いだけじゃない?」
さ、うちらもお昼食べよって桜は話を切り替えるけど
私は、一日何も頭に入ってこなかった。
あの日から、毎日とは言わないけどマネージャーの先輩は
頻繁に教室に来ては奥村くんをお昼に誘う。
どことなく、奥村くんも楽しそうに見えて私は辛くなった。
きっと、奥村くんは、あの先輩のことが好きなんだ。
仲良いだけ、とかじゃないよ。
顔、見れば嫌でもわかる。
あれは絶対、恋をしてる顔だ。
私がそう確信してから、
奥村くんと、例の先輩が付き合ったっていう噂を聞くまでに時間はかからなかった。
ただのクラスメイトでしかない私と、同じ部活の先輩後輩。
スタートの時点で、すでに私が不利なんだから、
あの人が奥村くんと付き合えるのは当たり前。
私だって、野球部だったら、マネージャーだったら、
きっと奥村くんと、仲良くなって今頃……
「なんて、あるはずないのにね」
そうつぶやいて、静かに涙を流した。
恋が終わる瞬間は、あまりにも唐突だった。
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