奥村 光舟
いい夢見てね
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「奥村~、今日も一緒にお昼食べよ~」
2学年下の後輩に、今日も元気に絡みに行く。
「…白石先輩って、友だちとかいないんですか?」
「え!奥村に心配されるとか心外なんだけど!
安心して、奥村よりはいるから。」
といたずらっぽく笑うと、
「俺のことはいいんです」
といつもと変わらない表情で答えるが、
いろいろ言いながらも席を立ち、一緒にお昼を食べてくれる。
一匹狼な感じが可愛い後輩だな、なんて思って
純粋に可愛がりたいだけの思いでお昼を誘うようになった。
最初はいやいやだった奥村も、さすがに頻繁に私が誘うもんだから、
今はきっと、なんだかんだ言いつつも、
奥村も楽しんでいるんだと勝手に私は思っている、違ったらごめんね。
めったに人に懐かない奥村が、私にだけは懐いているようで
それが嬉しいと、優越感に浸っているのは内緒。
食堂は、いつもより混んでいて、席がなかなか見つからない。
「今日はいつもより混んでるねぇ」
と呟くと、
「あ。」と奥村が声を漏らすので、どうした?と問いかける。
「…あそこにいる沢村先輩のところなら空いてそうです」
と指をさすので、見てみるとちょうど2席空いていた。
「ほんとだ!今日は沢村たちと一緒に食べよっか」
と足を踏み出そうとすると、制服の裾を掴まれる。
「え?な、なに。どうしたの?」
振り返ると、奥村は少しうつむきながら何やらぼそぼそと呟いていた。
「え?なんて?」
と顔を近づけると、
「俺と、ふたりじゃなくていいんですか?」
と、耳まで赤く染まった顔でそう言うもんだから、私にも伝染してしまう。
「え、いや、えっと…」
と、戸惑っていると
「やや!そこにいるのは白石先輩と奥村少年ではないですか!」
と大声で沢村君が声をかけてきた。
「席なら、ここ空いてますよ!ここ!」
と、無邪気な顔で、どーぞどーぞ、と言ってくるもんだから、
断るにも断れなくて、奥村を見ると思いっきり沢村を睨みつけていた。
それに気づいた沢村が、
「な、なんだよ!座りたかったんじゃねぇのかよ!」
と、あたふたし始めた。
それが可笑しくて、ふはっ、と思わず声を漏らしてしまう。
すると奥村は、今度は私の方を見る。
「俺、白石先輩だから一緒にお昼食べてるんです。
今日はしょうがないですけど、次からは、ふたりでお願いします」
と、少し睨まれたが、そう言った奥村の顔が
さっきよりも赤く染まっていたので、怖いなんて思えなくて、
あぁ、可愛いな、なんて思ってしまった。
「沢村先輩は、本当に空気の読めない人ですね」
と、先輩に向かってなまいきに呟いている奥村の表情はすでにいつも通りだった。
私だからお昼食べてるって、いったいどういう…
っ!!!!!
奥村の言った言葉の意味がわかり、まさかと思って奥村を見ると
今までみたことのないくらい優しい顔で、私に笑いかけた。
初めて見る奥村の表情に、私の胸が、ドクンと跳ねた。
恋に落ちる瞬間は、とてつもなく一瞬だった。