成宮 鳴
いい夢見てね
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『め、鳴くん!私、ずっと鳴くんのことかっこいいなって思ってて。
野球すごいところとか、かっこいいと思ってて、ずっと好きでした。
よかったら…付き合ってください。』
高校へ入ってから、何度目かわからない告白。
する側ではなく、もちろん、される側。
何回か話したことがある他クラスの子。
正直、顔はあまり好みではないけど、可愛い子だとは思う。
「ごめんね。今は、誰とも付き合うつもりはないんだ。
…だけど、気持ちはすごい嬉しかったから、ありがとう。
これからも、変わらず俺のこと応援しててくれると嬉しい」
そう言ってその場を離れる。
「野球すごいところがって…なんだそれ。
俺の中身が好きなんじゃねぇのかよ」
ひねくれ者の俺は、告白されても本当は全然嬉しくない。
みんなが好きなのは、”野球がすごい成宮鳴”であって、
俺の中身を好きだと言ってくれた女子はいない。
「…うっとうしい」
「え~~~。本当はそんな風に思ってたんだ」
独り言のはずが、なぜか返事が返ってくる。
驚いて、声がした方へ振り向く。
「モテるっていうのも、大変だねぇ」
「…白石さん」
自販機の前のベンチに腰掛け、こちらを見ていた女子生徒が
ベンチから立ち上がり、近づいてくる。
「成宮くんって、告白される自分に浸ってるタイプだと思ってたのに、意外」
「…白石さんは俺のことなんだと思ってるわけ?」
うすら笑いを浮かべながら、近づいてくる彼女を見つめる。
「ん~…。わがままで自分大好きなお坊ちゃま?」
「…それ、悪口だろ」
ケタケタと笑いながら俺の目の前に仁王立ちする。
「それは置いといてさ。
せっかく勇気出して告白してくれたんだから、うっとうしいはよくないよ」
顔の前に人差し指を立てる。
「野球がすごい成宮くんも、成宮くんじゃん」
「…白石さんも、そう思ってんの?」
確かに、野球がすごい俺も、俺なんだけど。
好きな人には、俺自身が好きだと言ってほしい。
「ふふ。拗ねてる」
にこっと笑って、俺の頭を撫でる。
「私は、こどもっぽくて、わがままで、負けず嫌いな成宮くんが大好きだよ」
嬉しくてにやけそうになる顔を必死に隠す。
わかってる。この人の好きは、恋愛的な意味ではない。
俺をいちばん見てくれるのに、俺にいちばん気づいてくれない。
男としての好きじゃなくて、後輩としての好き。
弟みたいな感覚の好き。
「…そんな好き、いらないし」
「ん?何か言った?」
俺の気持ちに、気づけよ、バカ。
俺がいちばん欲しい言葉をくれるのに、俺がいちばん欲しい人は手に入らない。
「別にぃ~~~。白石さんはバカだなって思っただけ!!」
今日も俺の思いは届かないけど、また、好きが積もった。
いつか絶対に、振り向かせてやるからな。
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