成宮 鳴
いい夢見てね
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「いらっしゃいませー」
今日は鳴の誕生日で、
朝から準備して練習終わりの鳴を迎えようと思っていたのに、
その予定はしっかり潰れ、私はというと、
バイト先のスポーツショップで笑顔を振りまいている。
「ごめんね〜白石さん、今日、お休みだったのに無理言って」
そう言いとても申し訳なさそうな顔をしている店長には
入社当時からとてもお世話になっているため何も言えない。
「明日は、代わりにお休みもらっていいんですよね?」
「もちろん!今日、彼氏くんの誕生日って言ってたよね。
白石さんしか頼む人いなくて、すごく助かったんだけど、本当にごめんね」
まぁ実際、鳴とは練習終わりに会おうと話していただけで
特にどこか行く予定でもなかったので、鳴的には何も問題ないだろう。
問題があるのは私の方で、プレゼントはあらかじめ用意していたからよかったけど、
実はケーキを作ろうと思っていたから、バイト終わりに作って間に合うか
という時間的な問題が発生している。
バイトは1時まで。
鳴の練習終わるのが5時頃だと思うから…ギリギリいけるか?
年明けということもあり、お客の数が多くてあっという間にバイトも終わった。
「白石さん、お疲れ様!
今日は本当にありがとね、これ、ささやかだけど今日のお礼。
彼氏くんと食べて」
そう言いお菓子が入った小袋を手渡された。
「ありがとうございます、では、お先に失礼します」
急いで自転車を漕ぎ出そうとした時、メッセージが入る。
『練習終わった!今から会える?』
「えっ!!!?もう終わったの!?嘘でしょ!
予定外すぎるんだけど…どうしよう」
とりあえずケーキ作らないとだから…
『ごめん!実は今の今までバイト入ってて、今からは、無理かも。』
そう返事をし、自転車を漕ぎ出す。
急げ急げ急げ
とりあえず、4時間くらいあればなんとか完成するはず
自転車を漕いでいる最中に、メッセージや着信が入ったが
それどころではないと無視をしてしまった。
家に着いてから返事をしようと思っていたけど
慌てふためいている私は、すっかり忘れてケーキ作りを始めてしまった。
なんとか作り終え、冷やすために冷蔵庫へケーキを入れ、
ひと段落したところでふと、携帯の存在を思い出す。
「やば!!!」
慌てて見ると、案の定、鳴から大量のメッセージと着信があった。
1時間半程前から放置していたため、急いで鳴に電話を入れた。
プルルと1コール鳴り終える前に、鳴の声が聞こえた。
『…もしもし』
や、やばい。完全に不機嫌モードだ。
「も、もしもし、鳴?練習お疲れ…さま。
連絡気づかなくて、ごめん」
『んー。』
「え、えっと、今日、何時ごろからなら会えるかな」
不機嫌な鳴をへたに刺激しないように問いかける。
『2時間くらい前から、会えますけど。
…どっかの誰かさんが無視したせいでずっと暇してたしね』
うわーーーーー。これはやばい。
ここ最近でいちばんやばいよ!めっちゃ不機嫌だよ!
「そ、そうだよね、ごめんね、せっかく連絡くれてたのに。
えっと、あと2時間後くらいには、会えると思うんだけど…」
『はぁぁあ!?まだ待たせるの?意味わかんないんだけど!
みゆはいったい何してんのさ!
俺のこと待たせてまでやんなきゃいけない用って何!?』
「えっと…それは、」
さすがに、ケーキ作って渡したいから、とは言えない…
『…別に、もう今日じゃなくてもいいけど』
「え」
『楽しみにしてたの、俺だけかよ。』
そう呟いた鳴の声が、とても寂しそうだった。
「そんなわけないじゃん!!!」
私は、自分でも驚くほど大声を出していた。
『え、何、声…でか、』
「あ、ご、ごめん。でも…
そんな寂しいこと、言わないでよ…。
私だって、鳴に会えるの楽しみにしてたのに。」
『…悪ぃ』
私の声色で察したのか、鳴は素直に謝った。
2人の間に、変な沈黙が続く。
『…みゆ、会いたいよ』
ボソッと呟いた鳴の言葉を私は聞き逃さなかった。
『本当は、なんか用意してくれてんのかな、とか思ってたんだけどさ
そういうの、本当にいつでもいいから。
今日は、1秒でも早く、長くみゆに会いたいんだけど、まだダメなの?』
「鳴…」
『てかもう、来ちゃった』
そういうと同時に、インターホンがなる。
画面に映る人物に、胸が締め付けられる。
走って玄関に向かい、ドアを開ける。
「鳴っ!!!」
「…よっ」
照れ臭そうに手をあげる鳴に思いっきり抱きついた。
「鳴、ごめん!!!
私、自分のことばっかりで、鳴の気持ちこれっぽっちもわかってなかった」
鳴は、そっと抱きしめ返してくれた。
「謝罪とか、いらないから。
みゆに会えただけで十分なんだけど。」
そう言い、私の大好きな顔でにししと笑った。
「鳴、大好きだよー」
鳴の体に、思いっきり顔を埋める。
「ちょっと!くすぐったいんだけど!やめてよ」
と言いながらも、嬉しそうな声で笑う。
それが嬉しくて、私も釣られて笑う。
「鳴、寒そう」
よく見ると、鳴はジャンパーを羽織る以外に防寒具をつけていなかった。
「え、あー。急いで出てきたから」
恥ずかしいのか、ポリポリと頭をかく鳴に、いちいちキュンとしてしまう。
「ちょっと待ってて」
私は家へ入り、ドタバタと音を立てながら急いで鳴の元へ戻る。
「これ!」
袋に入ったプレゼントを渡す。
「誕生日、おめでとう
これからも、野球、頑張ってね」
「うわー、ありがと。開けていい?」
「うん、これからまだ寒くなるから、使ってくれると嬉しいな」
鳴は、嬉しそうに袋を開ける
「うわ!ネックウォーマーじゃん!
しかも俺の好きなブランド!
めっちゃ嬉しいんだけど!!!」
使っていい?とすぐさま頭からかぶり
うわー、あったかいとご満悦の様子。
「みゆ、さっきはごめん
みゆの都合もあったよな、俺、自分のことばっかりだった」
鳴は、私の手をぎゅっと握り、目を見てつぶやく。
「そんなことないよ!私も、自分のことばっかりで、
鳴の気持ちとか、全然考えてなかった。ごめんね」
鳴の目を見て、しっかりという。
「じゃあ、これでおしまいね
今からの時間は、仲良しタイムで」
と笑うと、鳴も、そうだなと言った。
「鳴あのね、本当は、ケーキ作ろうと思ってて…」
「えぇ!そうなの!?超楽しみなんだけど!」
「で、でも!今日まさかバイト入らないといけなくなるとは思わなくて、まだ出来上がってないの。」
「あー、用ってそういうことね。」
鳴は、納得したのかへらっと笑って
「大丈夫!みゆからのプレゼントは年中受付中だから!」
「あの、忙しいのはわかってるけど…
明日の練習終わりとかも会えるかな。」
そう問いかけると、鳴は嬉しそうに
「あったりまえじゃん!
大好きなみゆのためならいくらだって時間作るよ!」
そう言って私を抱きしめた。
「来年も、俺の隣で祝ってくれる?」
耳元でそう呟いた鳴に、私はとびきりの笑顔で
「鳴がいいなら、死ぬまで祝うよ!」
と答える。
顔を離し、私は鳴にキスをした。
君の隣にいられるのは私だけの特権なの。
来年も、その先もずっと、隣にいたい。
HappyBirthDay⚾︎Mei Narumiya