成宮 鳴
いい夢見てね
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「鳴とはもう、二度と口きかない!!!」
「ふんっ、俺だって、謝られたって許さないから!」
完全に、売り言葉に買い言葉。
勢い余って言ってしまった。
きっかけは、些細なことから始まった。
鳴のファンだと言う子と連絡をとっていたらしい。
それだけなら全然いいのに、半年間もずっと!
ありえない!そんなの、ファンの域超えてるよ!
私が知ったのは偶然で、
携帯に表示されたメッセージには「また会おうね」の文字。
私の知らない名前。…これは完全に、黒でしょ。
鳴に問い詰めると、勝手に見んなよと呆れられる。
いやいや、呆れたいのはこっちですけど!?
なんでずっと連絡とってたのかも聞きたいけど、
私に内緒で会っていたことが、いちばんありえない。
鳴はただのファンだって言い張るが、私には信じられなかった。
それで口論になり、冒頭に至る。
鳴とは連絡すら取らなくなった。
私は何も悪いことをしていないし。
むしろしたのは鳴の方で、これはれっきとした浮気だと思う!
なのに、なんで鳴が怒ってんのか訳がわからない。
なんで早く謝ってこないのか、理解できない。
本当に自分は悪くないとでも思ってるの?
私とこんな状況でも、鳴はきっと例の子と連絡とってるんでしょ
こっそり2人で会ってるんでしょ
そう思うと、急に悔しくなって涙が込み上げる。
鳴が私と過ごしていた時も、
私が鳴のことを思っていた時も、
鳴は私じゃない誰かのことを思っていたの?
考えれば考えるほどどんどんマイナスなことばかり思ってしまう。
『みゆ』って優しく呼ぶ声も、
子どもみたいにくしゃっと笑う顔も、
マウンドで見せる真剣な表情も、
全部全部大好きだった。
私だけのものだと思ってた。
「…みゆ。」
しばらくぶりに言葉を交わす鳴に、突然呼び止められた。
「謝る気になった?」
可愛げもなく、言い放つ。
「ごめん。」
他には何も言わず、鳴はただ謝る。
「…ごめんって、何に対して?
あの日、私に謝らなかったこと?」
本当は、そうではあってくれるなと思っていたことがある。
「それとも…私じゃない別の子を、好きになったこと?」
私の言葉に、鳴は驚くことも動揺することもなく頷いた。
「本当に…ごめん」
いちばん最悪の展開。
鳴に浮気を問い詰めた時に、本当は心のどこかで
浮気なんかではないって思ってた。
そう、思いたかった。
鳴と私が過ごした時間は紛れもなく本物で、
これから先も、ずっと一緒にいられると信じてやまなかった。
どうしてこんなことになってしまったのか、
何が原因で鳴はその人を好きになってしまったのか。
私には、わかるはずもなかった。
「…なんで、なの」
力なく、つぶやいた。
「最初は本当に、ただのファンでいてくれてたんだ。
みゆのことも知ってたし、応援してくれてた。
だけど俺が、みゆよりもその人のことを好きになった。
みゆ以外の人を、選んだんだ」
まるで彼女は悪くないとでも言わんばかりの言い様。
「…私のこと、好きじゃ…なくなっ、た?」
鳴を苦しめないように、笑顔で問いかけたつもりだった。
けど、鳴の表情を見て、私がどんな顔をしているのか悟った。
「みゆ…本当に、ごめん…」
鳴は、深々と頭を下げる。
「俺と…別れてほしい。」
その瞬間、私の頭の中は真っ白になった。
何か言わないと、伝えないと鳴がいなくなってしまう。
わかっているのに、口が思うように動かない。
早く!!!何か言わないと…。鳴が、いってしまう。
そう思えば思うほど、さらに口は動かなくなる。
鳴がこの場を後にし、去っていく。
待って…鳴。行かないで…!
私を置いて、行かないで…っ!!
そこで、はっと目が覚める。
耳に冷たい感覚、涙を流していることに気付く。
横を見ると、そこにはさっき私の前からいなくなった人が
スースーと寝息を立てて、眠っていた。
「よかった…………夢、かぁ」
一気に力が抜ける。
ズズっと鼻をすすり涙を拭く。
よだれを垂らしながら、気持ちよさそうに寝ている鳴の髪に触れる。
「ん…」と、鳴が目を覚ます。
私と目が合うと
「…おはよ、みゆ。」とくしゃりと笑う。
大好きな声で、私の名前を呼ぶ。
大好きな顔で、私に笑いかける。
「…鳴。私のこと、好き?」
そう尋ねると、鳴は少しだけ驚き、また、くしゃりと笑った。
「何言ってんのー。
好きじゃなかったら、今一緒にいるわけないじゃん」
そう言いながら、鳴がおいでと私を呼ぶ。
言われるがままに鳴の体に飛びつき顔を埋める。
「ちょっ、やめてよ。くすぐったいんだけど!」
と言いつつ、私をぎゅっと抱きしめる鳴に安心したんだ。
「夢で、よかったぁ…」