ヒロインの名前
お姉ちゃんは心配性
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4月のある朝。
今日は『仕事』が休みなのか、秀樹も和弘もリビングでくつろいる。
義母が近くにいないことを確認してから、姉は弟たちに尋ねた。
「もうすぐ母の日やけど、どうすると?」
「……」
「……」
返事はなく、まるで母の日の存在を長い間忘れていてたった今思い出した顔をしている。
その様子から、二人とも何も考えていないことを察し、姉は表情を曇らせた。
「母の日っていつ?」
「5月の第二日曜日。三週間後たい」
そんなことも知らなかったのか、と呆れながら和弘の問いに答えてやる。
「兄貴、母の日に何かしたことある?」
弟からの問いかけに、秀樹は黙って首を振る。
「和弘くんは小学校までは私とお金出しあって花束買ってたやないの。博多に行ってる間、まさか……」
「……」
「何もしとらんかったと?」
「うん……」
「……」
小さい頃から素行不良で母親に心配させてばかりいたというのに。こいつらには感謝の気持ちというものはないのか?
弟たちの無頓着さに姉は言葉を失った。
「女子と違って、男は中学生ぐらいから母親とは距離おくもんちゃ」
「そげん言うても……」
納得していない様子の姉に被せるように、秀樹は続けた。
「それに、俺らよりも姉ちゃんの方がお袋と仲ええやろ」
「……」
先妻の娘と後妻は生さぬ仲のはずだが、姉自身、義母からかわいがられている自覚はあった。
秀樹も和弘も昔から物は壊すわよその子は殴るわと手のつけられない悪童だった。それに比べれば、義理の娘はおとなしくて言いつけを素直に守る。それだけで天使のように見えたのだろう。
「お母さんには感謝してるとよ。実の娘でもないのに私のこと大事にしてくれて。それに……」
姉の目は遙か遠くを見つめている。
「和弘くんを産んでくれてありがとう、って……」
「え?」
突然自分の話になり、和弘は戸惑ったが、
「私が和弘くんの姉になることができたのも、お母さんが和弘くんを産んでくれたからこそ……」
いつものアレだった。
姉が訳のわからないことを言うのは慣れっこだ(いちいち話が壮大になるのは勘弁してほしいが)。
さらに、姉の話に兄が同調するまでが一連の流れであることも。
「……そうやな」
腑に落ちたように秀樹も深く頷いている。
和弘が関係しているともなれば決断は早い。
「姉ちゃん、今年は俺も金出すわ」
「わかればよかよ……」
「和弘、お前もやぞ。こういう時くらいは親孝行せんとな」
「へーい」
「三人でお金出し合うんなら、豪華にできそうっちゃね。毎年カーネーションの花束贈ってるんやけど、今年はプレゼントもつけようか」
「プレゼントって何がええんや」
「ハンカチとか?」
「ハンカチは2年前の誕生日にあげたとよ」
「お袋、何かほしいもんとかあるんかな」
三人の作戦会議は続く……。
今日は『仕事』が休みなのか、秀樹も和弘もリビングでくつろいる。
義母が近くにいないことを確認してから、姉は弟たちに尋ねた。
「もうすぐ母の日やけど、どうすると?」
「……」
「……」
返事はなく、まるで母の日の存在を長い間忘れていてたった今思い出した顔をしている。
その様子から、二人とも何も考えていないことを察し、姉は表情を曇らせた。
「母の日っていつ?」
「5月の第二日曜日。三週間後たい」
そんなことも知らなかったのか、と呆れながら和弘の問いに答えてやる。
「兄貴、母の日に何かしたことある?」
弟からの問いかけに、秀樹は黙って首を振る。
「和弘くんは小学校までは私とお金出しあって花束買ってたやないの。博多に行ってる間、まさか……」
「……」
「何もしとらんかったと?」
「うん……」
「……」
小さい頃から素行不良で母親に心配させてばかりいたというのに。こいつらには感謝の気持ちというものはないのか?
弟たちの無頓着さに姉は言葉を失った。
「女子と違って、男は中学生ぐらいから母親とは距離おくもんちゃ」
「そげん言うても……」
納得していない様子の姉に被せるように、秀樹は続けた。
「それに、俺らよりも姉ちゃんの方がお袋と仲ええやろ」
「……」
先妻の娘と後妻は生さぬ仲のはずだが、姉自身、義母からかわいがられている自覚はあった。
秀樹も和弘も昔から物は壊すわよその子は殴るわと手のつけられない悪童だった。それに比べれば、義理の娘はおとなしくて言いつけを素直に守る。それだけで天使のように見えたのだろう。
「お母さんには感謝してるとよ。実の娘でもないのに私のこと大事にしてくれて。それに……」
姉の目は遙か遠くを見つめている。
「和弘くんを産んでくれてありがとう、って……」
「え?」
突然自分の話になり、和弘は戸惑ったが、
「私が和弘くんの姉になることができたのも、お母さんが和弘くんを産んでくれたからこそ……」
いつものアレだった。
姉が訳のわからないことを言うのは慣れっこだ(いちいち話が壮大になるのは勘弁してほしいが)。
さらに、姉の話に兄が同調するまでが一連の流れであることも。
「……そうやな」
腑に落ちたように秀樹も深く頷いている。
和弘が関係しているともなれば決断は早い。
「姉ちゃん、今年は俺も金出すわ」
「わかればよかよ……」
「和弘、お前もやぞ。こういう時くらいは親孝行せんとな」
「へーい」
「三人でお金出し合うんなら、豪華にできそうっちゃね。毎年カーネーションの花束贈ってるんやけど、今年はプレゼントもつけようか」
「プレゼントって何がええんや」
「ハンカチとか?」
「ハンカチは2年前の誕生日にあげたとよ」
「お袋、何かほしいもんとかあるんかな」
三人の作戦会議は続く……。