刃牙その他
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沈まない骨
「やっぱスゲェな」
「ええ?」
「左手だけで何でもできちゃうから」
ミネラルウォーターのペットボトルを両膝で挟み左手で蓋を開ける様子に、刃牙は感心したように呟いた。
退院すれば、腕が二本ある人間たちが大半を占める社会に嫌でも放り出される。それに義父と同じ年齢になる頃には、右腕があった期間よりない時の方が長くなっているのだから、さっさと隻腕の身に慣れた方が自分のためだとリハビリに励んだおかげだ。
自身を叩きのめした烈海王を師範として招聘したことといい、この切り替えの速さもまたこの青年の強みであった。
しかし片腕を喪った事実はそう簡単に受け入れられず。
時々、あるはずのない右手が痛む。医学上では幻肢痛と言うらしく、末梢神経の損傷が云々という難しい説明は忘れてしまったが、要するに失くした腕を脳が覚えているということか。
それはまるで、俺のことを忘れるなと叫んでいるようでもあり、今まで散々こき使いやがってと恨み節を言っているようにも思えた。
魔法が解けて骨が晒された右腕は、実父が眠る墓に埋めた。
あなたがくれた身体だから。
あなたが最初に使い方を教えてくれたのだから。
(片腕だけ先にそっちに行ったから驚いてるだろうなァ)
父とともに眠っているはずなのに、今でも手指や腕があるような錯覚に陥る。でも右肩に目を向けてもそこにあるわけがなく。
死んでしまった右腕。
俺の元を離れてどこに行ってしまったのだろうか。
(食われる覚悟で臨んだっていうのに、こんな感傷に浸ってるなんて……)
(これじゃあお母さんに怒られるな)
(お母さん……)
小さい頃、縁日か何かで買ってもらったビー玉。帰る道すがら、気になって何度もポケットから取り出しては眺めているうちに落としてしまい、そのまま転がって測講に落ちてしまった。母が蓋を持ち上げてくれたが手を伸ばしても底には届かず、汚れた水路の中で光を受けきらきらと輝いていた。
あの時一緒にいたのは養母の夏恵だったか。
それとも……………………。
宝物を失くした夏の日。
あの時のように暑い日に喪くした右腕が、またぎりりと痛んだ。
「やっぱスゲェな」
「ええ?」
「左手だけで何でもできちゃうから」
ミネラルウォーターのペットボトルを両膝で挟み左手で蓋を開ける様子に、刃牙は感心したように呟いた。
退院すれば、腕が二本ある人間たちが大半を占める社会に嫌でも放り出される。それに義父と同じ年齢になる頃には、右腕があった期間よりない時の方が長くなっているのだから、さっさと隻腕の身に慣れた方が自分のためだとリハビリに励んだおかげだ。
自身を叩きのめした烈海王を師範として招聘したことといい、この切り替えの速さもまたこの青年の強みであった。
しかし片腕を喪った事実はそう簡単に受け入れられず。
時々、あるはずのない右手が痛む。医学上では幻肢痛と言うらしく、末梢神経の損傷が云々という難しい説明は忘れてしまったが、要するに失くした腕を脳が覚えているということか。
それはまるで、俺のことを忘れるなと叫んでいるようでもあり、今まで散々こき使いやがってと恨み節を言っているようにも思えた。
魔法が解けて骨が晒された右腕は、実父が眠る墓に埋めた。
あなたがくれた身体だから。
あなたが最初に使い方を教えてくれたのだから。
(片腕だけ先にそっちに行ったから驚いてるだろうなァ)
父とともに眠っているはずなのに、今でも手指や腕があるような錯覚に陥る。でも右肩に目を向けてもそこにあるわけがなく。
死んでしまった右腕。
俺の元を離れてどこに行ってしまったのだろうか。
(食われる覚悟で臨んだっていうのに、こんな感傷に浸ってるなんて……)
(これじゃあお母さんに怒られるな)
(お母さん……)
小さい頃、縁日か何かで買ってもらったビー玉。帰る道すがら、気になって何度もポケットから取り出しては眺めているうちに落としてしまい、そのまま転がって測講に落ちてしまった。母が蓋を持ち上げてくれたが手を伸ばしても底には届かず、汚れた水路の中で光を受けきらきらと輝いていた。
あの時一緒にいたのは養母の夏恵だったか。
それとも……………………。
宝物を失くした夏の日。
あの時のように暑い日に喪くした右腕が、またぎりりと痛んだ。