刃牙その他
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希望の朝
新しい朝が来た。
希望の朝のはずなのに、目を覚ました克巳は喜びに胸を開き大空仰ぐことができないでいた。
頭は鈍く痛み、霞がかかったようにぼんやりしている。起きよう、起きようと思っても身体が言うことを聞かない。
「克巳」
名前を呼ばれ、そこで初めて兄の無門に顔を覗き込まれていることに気づいた。
「いつまで寝てるんだよ。母さん、もう仕事行ったぞ」
「今、何時……?」
「もうすぐ九時だよ」
そうだ、今日は母の休日出勤の日だったか。
うまく回転しない頭で思い出す。
母は克巳が一歳の時に夫と死別し、子供二人を育てるために昼夜問わず働いている。
「……大丈夫か?」
しっかり者の兄は、弟の様子がいつもと違うことに気がつき、額に掌を乗せた。
「……熱はないな」
「何か、頭痛い……」
「そっか……」
無門は少しの間考えていたが、すぐに克巳に微笑みかけた。
「もうしばらく寝てな。そしたら治るかもしれない。一応、熱測っとくか」
「うん……」
克巳の瞼は閉じかかっている。
意識が朦朧とする中で、体温計を取りに部屋を出ようとする無門の後ろ姿から目が離せなかった。
数ヶ月もすれば、兄は家を出ていってしまう。学費の心配をしてか、高校を卒業したら就職し、寮に入るというのだ。
克巳も中学生男子にしては母親とうまくやっているつもりではあるが、それでも多感な時期に母親と二人で暮らすことにはある種の抵抗を覚える。
(兄貴、待って)
呼び止めたいのに異様な眠気が邪魔をする。
(行かないで)
小さい頃からずっと兄の背中を追っていた。その兄と離れ離れになるのは寂しいけれど、克巳の言い知れぬ不安はそれだけではなかった。
(俺を置いていかないで)
自分だけじゃない。母も、この家も、家族にまつわる全てのことを捨てて出て行ってしまうように思えてならないのだ。
(兄貴)
声にならない声を上げ、無門が部屋のドアを閉めたと同時に再び眠りに引き込まれた。
新しい朝が来た。
希望の朝のはずなのに、目を覚ました克巳は喜びに胸を開き大空仰ぐことができないでいた。
頭は鈍く痛み、霞がかかったようにぼんやりしている。起きよう、起きようと思っても身体が言うことを聞かない。
「克巳」
名前を呼ばれ、そこで初めて兄の無門に顔を覗き込まれていることに気づいた。
「いつまで寝てるんだよ。母さん、もう仕事行ったぞ」
「今、何時……?」
「もうすぐ九時だよ」
そうだ、今日は母の休日出勤の日だったか。
うまく回転しない頭で思い出す。
母は克巳が一歳の時に夫と死別し、子供二人を育てるために昼夜問わず働いている。
「……大丈夫か?」
しっかり者の兄は、弟の様子がいつもと違うことに気がつき、額に掌を乗せた。
「……熱はないな」
「何か、頭痛い……」
「そっか……」
無門は少しの間考えていたが、すぐに克巳に微笑みかけた。
「もうしばらく寝てな。そしたら治るかもしれない。一応、熱測っとくか」
「うん……」
克巳の瞼は閉じかかっている。
意識が朦朧とする中で、体温計を取りに部屋を出ようとする無門の後ろ姿から目が離せなかった。
数ヶ月もすれば、兄は家を出ていってしまう。学費の心配をしてか、高校を卒業したら就職し、寮に入るというのだ。
克巳も中学生男子にしては母親とうまくやっているつもりではあるが、それでも多感な時期に母親と二人で暮らすことにはある種の抵抗を覚える。
(兄貴、待って)
呼び止めたいのに異様な眠気が邪魔をする。
(行かないで)
小さい頃からずっと兄の背中を追っていた。その兄と離れ離れになるのは寂しいけれど、克巳の言い知れぬ不安はそれだけではなかった。
(俺を置いていかないで)
自分だけじゃない。母も、この家も、家族にまつわる全てのことを捨てて出て行ってしまうように思えてならないのだ。
(兄貴)
声にならない声を上げ、無門が部屋のドアを閉めたと同時に再び眠りに引き込まれた。