克巳夢
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美しい骨
ぱちん、ぱちんと音が鳴り、サイドテーブルに敷かれた新聞紙の上に三日月型の爪が飛び散る。
二週間に一度、左手の爪を切ってやる。
足の爪は自力で切っているらしいが、さすがに左腕しかないのに左手の爪を切るのはとてもできない芸当だろう。
右腕があった頃には、こんなことしなかった。
この、爪を切ってやる時だけは彼にかつて右腕があったことをまざまざと思い知らされるのだ。
最後は骨だけになってしまったらしい。
できることならこの目で見ておきたかった。
きっと、白く美しかったに違いない。
つけっぱなしのテレビはいつの間にかバラエティー番組に変わっていてた。
ふと顔を上げると、都市伝説が取り上げるコーナーだった。
今日のお題は『東京の地下にまつわる都市伝説』。
地下水道に、誰かが飼っていた鰐が逃げだし住みついている。
今は鰐だけじゃなく、あの古代から甦った原人ピクルもいるとかいないとか。
「……あんなのと闘って大丈夫だったの?」
「大丈夫って?」
「殴り合いなんかして……、怪我でもさせたら世界中から非難囂々だったんじゃない?」
わざと意地悪く睨んでやると、素知らぬ顔でそっぽを向かれた。
親指から順番にヤスリをかけてやりながら、考えずにはいられない。
爪が伸びる。
これが生きているということなのに。
「まあ、この身体はあなたのものなんだから、あなたの好きにすればいいんだけど」
あの右腕は、右手は、もうどこにもないのだ。
「私は、あなたの右腕を奪ったやつのこと、許せないでいるのよ」
ぱちん、ぱちんと音が鳴り、サイドテーブルに敷かれた新聞紙の上に三日月型の爪が飛び散る。
二週間に一度、左手の爪を切ってやる。
足の爪は自力で切っているらしいが、さすがに左腕しかないのに左手の爪を切るのはとてもできない芸当だろう。
右腕があった頃には、こんなことしなかった。
この、爪を切ってやる時だけは彼にかつて右腕があったことをまざまざと思い知らされるのだ。
最後は骨だけになってしまったらしい。
できることならこの目で見ておきたかった。
きっと、白く美しかったに違いない。
つけっぱなしのテレビはいつの間にかバラエティー番組に変わっていてた。
ふと顔を上げると、都市伝説が取り上げるコーナーだった。
今日のお題は『東京の地下にまつわる都市伝説』。
地下水道に、誰かが飼っていた鰐が逃げだし住みついている。
今は鰐だけじゃなく、あの古代から甦った原人ピクルもいるとかいないとか。
「……あんなのと闘って大丈夫だったの?」
「大丈夫って?」
「殴り合いなんかして……、怪我でもさせたら世界中から非難囂々だったんじゃない?」
わざと意地悪く睨んでやると、素知らぬ顔でそっぽを向かれた。
親指から順番にヤスリをかけてやりながら、考えずにはいられない。
爪が伸びる。
これが生きているということなのに。
「まあ、この身体はあなたのものなんだから、あなたの好きにすればいいんだけど」
あの右腕は、右手は、もうどこにもないのだ。
「私は、あなたの右腕を奪ったやつのこと、許せないでいるのよ」
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