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サロルンリムセ

いなるひと

凛とした声で名乗りを挙げたこの女子、随分と清らかな魂魄をしている。
ここ最近見た …とは言っても十年程は経っているが、『人』の中にはいないたちだ。

霊力の量も質も刀に好まれそうだが、何故政府が審神者にさせなかったのかも疑問だ。

俺はそのまま何も言わずに玄関先の柱に背を預け彼女の行動を見る事にした。小狐丸と江雪が殺る気だからな。
まあ、これで簡単に死ぬ様なら自分が持っているその潤沢な霊力を上手く扱えない、所詮は小物と言う事だ。

案の定、二振りが襲いかかった。

さっき『帰れ』と拒絶したにも関わらず、慇懃無礼な態度を取ったおかげで奴等確実に殺しに行ってしまった。
俺とすれば出来れば生きて捕獲してくれると有り難いんだがなぁ。

やれやれと溜め息をついて目を閉じどんな形で死体が転がるやら、と思ったのだが刀同士を変な形に交えてしまった様な、歪な硬い音が聞こえ、すぐに目を見開いた。

小狐丸と江雪が間を取りつつ後方に飛び退っている。

一体何が起こった?

あの女子を見るが、傷一つ付いていないし自分で防御をした素振りもない。幻術でも使ったのか?

『あーすみません。私に刀と言うか攻撃は無駄です』

この後に及んで随分と間の抜けた声が響き、すぐさま感電でもしたかの様な音と青白い光りと小狐丸の叫び声が上がった。

『あーすみません。今、首掴もうとしたみたいですがそれも無駄です。ていうか、さっきも言いましたが私に攻撃は総て無駄です』

小狐丸は刀が駄目と解ったらすぐに首を捻り潰しに行ったのか。相変わらず血の気が多いなぁ。

しかし、へぇ…
どんな奇っ怪な術を纏ってここに送られたかは知らぬが政府は本当にこの本丸をどうにかするつもりの様だ。

そしてこの娘が政府の満を持しての最終兵器。とうの昔に最高値になった俺達を、まとめてどうにか出来る程の霊力と能力を持ったものが漸く現れたという事か。


……面白い。
そう来なければ、な。


江雪も小狐丸も遊び終わった様だし次は俺の番だが…ともかくあの面妖な術がどんな物か解術の糸口を探らんと何とも出来ん。
仕方がないから…そうだな、友好的に話しをしてやろうか。

後は俺の好奇心が腹の中でうずうずしているし、とりあえずどんなもんか触ってみるとするか!


さてさて、何処を触ってやろう?
やはりこういう時は弾かれたとしても相手が驚く様な場所がいい。

よし。顔面だな。

躊躇なく正面から鷲掴んでみたが、柔そうな肌に触れる前に何か硬い大きな物で掌を振り払われたかの様に弾かれた。

派手な音の割には地味、痛みは演出通りビリビリとした痺れ。
そこそこ痛いが我慢出来ない程では無い。

やはり見た目からして静電気の強力版みたいな物だが、これであの小狐丸があんなに声を上げて痛がるのは随分とおかしな気がするな……急所を突いたから?
では俺も機を見て心臓辺りにでも刀を突き立ててみようか。


そんな事を考えながら話して解ったのは、この術には隙が無いらしい事。
ここに来る為に掛けた訳ではないと自分から言って来た。俺の思惑は筒抜けだったらしい。

だが、おかげで飛び切り面白い物とも解った。
この術、なんと四年も前から掛けっぱなし!

ははっこりゃ驚いた!
一体どんな術を使えばそんな事が出来るんだ?俺の本体にも欲しいぞ。


うん。決まりだ。
此奴は丁重にもてなしてやろう。
この本丸を結界封鎖するには時間が掛かる。その間に術の成形がどんなもんか少しでも聞き出してやろう。


上手く俺の物にしてこの時代の政府とやらに、最高の驚きを齎してやろうじゃあないか!


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