眠れぬ龍の夜の飯
腹の虫は圧し斬れない
この間、ついにアレを買った。
俺専用の炊飯器だ。
三合炊きで小さく、気軽に片手で運べるのも魅力だった。色々な機能や形があったが、そもそも炊いたらすぐに食べるつもりなので無駄な機能など一切要らない。
形に拘りなどなく、持ち運びに便利かどうかだけだ。
結局、炊きと保温、予約の機能がついた丸い形のモノに決めた。
恐ろしく値段が安かったが、新品で売っているんだ問題は無かろう。(あれば直々に文句を言いに行ってやる)
そんな訳で、今夜の夜食は炊き込みだ。畑でピーマンとパプリカを頂き厨にむかった。
今日はいつもの時間より少し早目だが、厨には誰もいない。最小限の灯りを付けて、料理の開始だ。
米櫃から二合程頂き手早く米を研ぐ。定量より少し少な目に水を入れ、置く。
冷蔵庫から余った玉ねぎと、厳重に包んでおいた鶏のもも肉一枚を取り出す。コレは今日の厨当番で、唐揚げを担当したおかげで材料庫から一枚くすねておいたモノだ。超貴重。
鶏のもも肉の皮目にフォークで穴を開けビニール袋へ。おろし生姜とおろしニンニク、クレイジーソルトと胡椒を入れ揉み込む。
次にピーマンとパプリカは細切りに、玉ねぎはみじん切り。炊飯器と共に持って来た袋から魔法の粉(今回は固形だが)のコンソメを出す。それと、この料理の決め手になる自分専用のカレールーを出し刻む。
全てを先程置いておいた米釜の中に投入。ケチャップととんかつソース少々も入れて少し掻き回し、その上に味付けしておいた鶏肉を乗せる。
…ヤバい既にこれだけでウマそうだ。
炊飯器にセットしスイッチオン。
出来るだけ使った形跡を残さぬ様包丁や俎の片付けをし、米が炊けるまでしばし時間があるので灯りも落とし、何事も無かったかの様にして風呂へと向かった。
※※※※※※※※※※
首と肩と腰が痛い。
ちょっと…いや、大分だな書類作成に没頭してしまった。
薄暗い廊下を腕を伸ばし肩と首を回しながら歩く。あーテレビで観た何処かのおっさんの様だなと、ゲンナリした。(実際はテレビのおっさんなんかより自分の方が断然歳くっているのだが)
厨でお茶でも入れて、何かあったら摘みたい。この際、飯物でなくてもいい。大福でも饅頭でもチョコレートの一欠片でもいいのだ。腹が減って仕方ない。
夕餉にも顔を出せなかった俺を、燭台切が見兼ねて部屋の隅に握り飯二つと漬物、常温の麦茶(気遣いが有難い)を置いて行ってくれたが、仕事を終えた今、それだけでは腹の足しにもならなかった。むしろ、食欲を沸き立たせてしまった。
燭台切にお礼を言うついでに次があったら、握り飯の数を倍にしてくれと言おう。
厨の戸を引くと何やら良い香りがふわりと鼻を抜ける。
暖簾をくぐり中を見るが誰もいないし明かりも着いていなかった。
一つ、換気扇だけ回っている。
誰かが切り忘れたのかと近づくと、香りが強くなる。ふと、手元を見ると小さな炊飯器?が換気扇の下にちょこんと置いてあった。匂いの元はそこだ。
灯りを付け、もう一度確認。
やはり、小さい炊飯器。かわいい。
そして物凄く空きっ腹を揺さぶる湯気がこいつから出ている。カレーがベースの甘い香りが換気扇に逃げて行く。やめろ、俺はこの匂いで飯を食う。
そんな、どこぞのお笑い芸人の様な本当にギリギリな事を考えていた時。
「…長谷部か」
厨の戸が開き、寝着に上着を羽織った大倶利伽羅が入って来た。近付かれて分かったが、水の匂いを纏い髪がまだ半分程濡れている。風呂上がりらしい。
長谷部の隣に立ちチラリ、金の瞳が此方を見る。
「お前も食べるか」
そこからの長谷部の動きは早かった。
炊飯器のふたを開け、スパイシーかつ玉ねぎとパプリカの甘い匂いがむわりと広がり中身が全て見えた瞬間、手元には皿が二枚滑り込んで来た。
杓文字で上に乗せてあったプリプリの鶏肉を皿に一旦出し六等分に切り分け、下の炊き上がった米を混ぜ、それぞれの皿に盛り付け上に鶏肉を乗せる。
その間に長谷部は貯蔵庫に走りレモンと炭酸水を持って来た。レモンをサッと洗い八等分に切り分け、グラスを出して氷を入れ炭酸水を注ぎレモンをほおりこむ。スプーンを用意し、炭酸水と共にセット。
作業台に持って来た皿にレモンを添えて大倶利伽羅と長谷部は向かいあって座る。
「いただきます」
長谷部は深々と頭を下げた。
今日の夜食は
☆炊飯器で簡単♪ジャンバラヤ
☆長谷部がダッシュで取って来た炭酸水、レモン入り
でした。
この間、ついにアレを買った。
俺専用の炊飯器だ。
三合炊きで小さく、気軽に片手で運べるのも魅力だった。色々な機能や形があったが、そもそも炊いたらすぐに食べるつもりなので無駄な機能など一切要らない。
形に拘りなどなく、持ち運びに便利かどうかだけだ。
結局、炊きと保温、予約の機能がついた丸い形のモノに決めた。
恐ろしく値段が安かったが、新品で売っているんだ問題は無かろう。(あれば直々に文句を言いに行ってやる)
そんな訳で、今夜の夜食は炊き込みだ。畑でピーマンとパプリカを頂き厨にむかった。
今日はいつもの時間より少し早目だが、厨には誰もいない。最小限の灯りを付けて、料理の開始だ。
米櫃から二合程頂き手早く米を研ぐ。定量より少し少な目に水を入れ、置く。
冷蔵庫から余った玉ねぎと、厳重に包んでおいた鶏のもも肉一枚を取り出す。コレは今日の厨当番で、唐揚げを担当したおかげで材料庫から一枚くすねておいたモノだ。超貴重。
鶏のもも肉の皮目にフォークで穴を開けビニール袋へ。おろし生姜とおろしニンニク、クレイジーソルトと胡椒を入れ揉み込む。
次にピーマンとパプリカは細切りに、玉ねぎはみじん切り。炊飯器と共に持って来た袋から魔法の粉(今回は固形だが)のコンソメを出す。それと、この料理の決め手になる自分専用のカレールーを出し刻む。
全てを先程置いておいた米釜の中に投入。ケチャップととんかつソース少々も入れて少し掻き回し、その上に味付けしておいた鶏肉を乗せる。
…ヤバい既にこれだけでウマそうだ。
炊飯器にセットしスイッチオン。
出来るだけ使った形跡を残さぬ様包丁や俎の片付けをし、米が炊けるまでしばし時間があるので灯りも落とし、何事も無かったかの様にして風呂へと向かった。
※※※※※※※※※※
首と肩と腰が痛い。
ちょっと…いや、大分だな書類作成に没頭してしまった。
薄暗い廊下を腕を伸ばし肩と首を回しながら歩く。あーテレビで観た何処かのおっさんの様だなと、ゲンナリした。(実際はテレビのおっさんなんかより自分の方が断然歳くっているのだが)
厨でお茶でも入れて、何かあったら摘みたい。この際、飯物でなくてもいい。大福でも饅頭でもチョコレートの一欠片でもいいのだ。腹が減って仕方ない。
夕餉にも顔を出せなかった俺を、燭台切が見兼ねて部屋の隅に握り飯二つと漬物、常温の麦茶(気遣いが有難い)を置いて行ってくれたが、仕事を終えた今、それだけでは腹の足しにもならなかった。むしろ、食欲を沸き立たせてしまった。
燭台切にお礼を言うついでに次があったら、握り飯の数を倍にしてくれと言おう。
厨の戸を引くと何やら良い香りがふわりと鼻を抜ける。
暖簾をくぐり中を見るが誰もいないし明かりも着いていなかった。
一つ、換気扇だけ回っている。
誰かが切り忘れたのかと近づくと、香りが強くなる。ふと、手元を見ると小さな炊飯器?が換気扇の下にちょこんと置いてあった。匂いの元はそこだ。
灯りを付け、もう一度確認。
やはり、小さい炊飯器。かわいい。
そして物凄く空きっ腹を揺さぶる湯気がこいつから出ている。カレーがベースの甘い香りが換気扇に逃げて行く。やめろ、俺はこの匂いで飯を食う。
そんな、どこぞのお笑い芸人の様な本当にギリギリな事を考えていた時。
「…長谷部か」
厨の戸が開き、寝着に上着を羽織った大倶利伽羅が入って来た。近付かれて分かったが、水の匂いを纏い髪がまだ半分程濡れている。風呂上がりらしい。
長谷部の隣に立ちチラリ、金の瞳が此方を見る。
「お前も食べるか」
そこからの長谷部の動きは早かった。
炊飯器のふたを開け、スパイシーかつ玉ねぎとパプリカの甘い匂いがむわりと広がり中身が全て見えた瞬間、手元には皿が二枚滑り込んで来た。
杓文字で上に乗せてあったプリプリの鶏肉を皿に一旦出し六等分に切り分け、下の炊き上がった米を混ぜ、それぞれの皿に盛り付け上に鶏肉を乗せる。
その間に長谷部は貯蔵庫に走りレモンと炭酸水を持って来た。レモンをサッと洗い八等分に切り分け、グラスを出して氷を入れ炭酸水を注ぎレモンをほおりこむ。スプーンを用意し、炭酸水と共にセット。
作業台に持って来た皿にレモンを添えて大倶利伽羅と長谷部は向かいあって座る。
「いただきます」
長谷部は深々と頭を下げた。
今日の夜食は
☆炊飯器で簡単♪ジャンバラヤ
☆長谷部がダッシュで取って来た炭酸水、レモン入り
でした。