眠れぬ龍の夜の飯
眠れぬ龍の夜の飯
腹が減った。
夕餉の時刻からは二刻程経って居る。
時刻は日付けが変わったくらい。
酒呑み連中と書類仕事の長谷部以外は殆どが夢の中だ。
どうも、この身体は他の刀よりも燃費が悪いようで、すぐに腹が減る。
不具合かと主に相談したら、人で言う成長期辺りの身体で顕現してるのではと言われた。体を造る為に本能的に物を食べ、外から栄養分を摂り込み大きくなって行くのだと。
刀は成長などしないのに。ふざけるな。
そんな訳で、灯りの落とされた厨に忍び込む。
業務用のデカい冷蔵庫を漁る。
朝餉の仕込みと明日使うであろう物達は、手を付けると厨番達にゴリラ並の拳骨を食らわされるので避けておく。
タッパーやそのままラップに包んである、所謂使い残しを見付ける。
今日はあまり具材の残りが少ない。
タッパーを開けてみると中には長葱のみじん切りと小口切りがラップで分けて入っていた。
小口切りは朝餉の味噌汁にも使えるから使わず、みじん切りだけ頂く。後は、豚肉が薄切りと切り落しが残っている。
雅や格好付けは混ぜて使ったりはしないのだ。
俺は腹に溜まれば今は何でも良いので、両方使わせて貰う。
ネギと肉…少し考え冷凍庫から誰が食べても良い様に小分けにされた飯を取り出しレンジに入れ時間をセットし厨を出て足早に部屋に戻る。
部屋に戻って小箪笥から幾つか袋を取り出し目的のモノを探す。コレらは所謂出汁の元。
コレも厨番達に見付かるとうるさいが自分が作る時はこれが一番楽だ。
万事屋でコレを見付けた時は雷に打たれたかの様に震えた。
霧中の中に居たのに一瞬で霧が晴れ視界がいきなりクリアになった様だった。
勿論、即刻全種類お買い上げだ。
その中の一つ、鶏ガラスープの素を取り上げ厨に戻る。
これで全ての材料が揃った、早速料理を開始しよう。もう、俺の腹は限界だ。
余った豚肉を全て俎の上に出す。
薄切りも切り落としも一口大に料理鋏で切る。
少し厚めのビニール袋を取り出し、その中に切り落としと生姜、ニンニク、酒、先程持って来た鶏ガラスープの元を入れ揉み込む。
切り落としの方が厚めだから先に味付けをする。
次にネギのみじん切りと薄切りの豚肉とレモン汁をたらしまた揉み込む。
その間にフライパンに胡麻油を入れ熱する。
胡麻の良い香りが厨内に漂い始めた時。
「…大倶利伽羅?」
振り返ると寝着の山姥切国広が、引戸を顔の分だけ開けて暖簾をちょいと捲っている。
目でこちらへと促し、フライパンに向き直る。
袋の全てを落とし入れ焼いて行く。
じゅわりと音を立て肉が胡麻油と混ざり合う。少し遅れてネギとニンニクの香ばしい匂いが辺りに漂った。
ととと、とコチラにやって来て俺の後ろから横へと身を乗り出し、手元を覗き込んだ山姥切国広。
「…肉…か?」
と、キラキラと瞳を輝かせて俺に問う。
無意識でやっているのだろうが、控え目な碧い双眸の上目遣いと小首を傾げる仕草。何故か俺はコレに弱い。
どのみち見つかったのだから、食わせるのは普通だがとりあえず大きく溜息をついて言った。
「冷凍庫にある飯を温めろ」
瞬間、素早く移動して凍った飯を取り出しレンジを開ける。
「どんぶりでいいのか」
俺に聞いてる割にはさっさとどんぶりを出し、先に温めてあった俺の分をそれに入れて上の部分を平らにする。
次に奴は、スープカップを取り出しそれぞれに味噌を入れ冷蔵庫にある出汁のストックを注ぐ。引出しから乾燥ワカメを取り出しパラパラと両方に入れ、ラップをしたら、先程の飯を出して、替わりにスープカップを入れ時間をセット。そして俺と自分のどんぶりを俺の後ろにある作業台に置いた。
全体に火が通った所で塩胡椒で味を整える。味見はしてないが匂いからすると大丈夫だろう。
火を止めて二つのどんぶりに盛り付ける。
ちょうどレンジも音を立て奴が取りに行き一つを俺に渡してくれた。
箸の用意をし、冷蔵庫からレモン汁の瓶を出し真ん中に置く。
作業台を挟んで向き合い二振りで合掌。
「いただきます」
食べ終わるまで二振りに言葉は無かった。
今日の夜食は
☆簡単ネギ塩豚丼~レモン汁でサッパリと~
☆山姥切国広作簡単味噌汁
でした。
※※※※※※※※※※
「…大倶利伽羅も夜食食べるんだな」
「…夜食が無いと眠れん」
「………実は、俺も…」
「今までどうしていた」
「水で誤魔化すか、たまに厨番に握り飯を頼んだり…」
「腹が減ったら来ればいい。夜はほぼ、ここで何か食っているからな」
「………わかった。その時はまた頼む…」
腹が減った。
夕餉の時刻からは二刻程経って居る。
時刻は日付けが変わったくらい。
酒呑み連中と書類仕事の長谷部以外は殆どが夢の中だ。
どうも、この身体は他の刀よりも燃費が悪いようで、すぐに腹が減る。
不具合かと主に相談したら、人で言う成長期辺りの身体で顕現してるのではと言われた。体を造る為に本能的に物を食べ、外から栄養分を摂り込み大きくなって行くのだと。
刀は成長などしないのに。ふざけるな。
そんな訳で、灯りの落とされた厨に忍び込む。
業務用のデカい冷蔵庫を漁る。
朝餉の仕込みと明日使うであろう物達は、手を付けると厨番達にゴリラ並の拳骨を食らわされるので避けておく。
タッパーやそのままラップに包んである、所謂使い残しを見付ける。
今日はあまり具材の残りが少ない。
タッパーを開けてみると中には長葱のみじん切りと小口切りがラップで分けて入っていた。
小口切りは朝餉の味噌汁にも使えるから使わず、みじん切りだけ頂く。後は、豚肉が薄切りと切り落しが残っている。
雅や格好付けは混ぜて使ったりはしないのだ。
俺は腹に溜まれば今は何でも良いので、両方使わせて貰う。
ネギと肉…少し考え冷凍庫から誰が食べても良い様に小分けにされた飯を取り出しレンジに入れ時間をセットし厨を出て足早に部屋に戻る。
部屋に戻って小箪笥から幾つか袋を取り出し目的のモノを探す。コレらは所謂出汁の元。
コレも厨番達に見付かるとうるさいが自分が作る時はこれが一番楽だ。
万事屋でコレを見付けた時は雷に打たれたかの様に震えた。
霧中の中に居たのに一瞬で霧が晴れ視界がいきなりクリアになった様だった。
勿論、即刻全種類お買い上げだ。
その中の一つ、鶏ガラスープの素を取り上げ厨に戻る。
これで全ての材料が揃った、早速料理を開始しよう。もう、俺の腹は限界だ。
余った豚肉を全て俎の上に出す。
薄切りも切り落としも一口大に料理鋏で切る。
少し厚めのビニール袋を取り出し、その中に切り落としと生姜、ニンニク、酒、先程持って来た鶏ガラスープの元を入れ揉み込む。
切り落としの方が厚めだから先に味付けをする。
次にネギのみじん切りと薄切りの豚肉とレモン汁をたらしまた揉み込む。
その間にフライパンに胡麻油を入れ熱する。
胡麻の良い香りが厨内に漂い始めた時。
「…大倶利伽羅?」
振り返ると寝着の山姥切国広が、引戸を顔の分だけ開けて暖簾をちょいと捲っている。
目でこちらへと促し、フライパンに向き直る。
袋の全てを落とし入れ焼いて行く。
じゅわりと音を立て肉が胡麻油と混ざり合う。少し遅れてネギとニンニクの香ばしい匂いが辺りに漂った。
ととと、とコチラにやって来て俺の後ろから横へと身を乗り出し、手元を覗き込んだ山姥切国広。
「…肉…か?」
と、キラキラと瞳を輝かせて俺に問う。
無意識でやっているのだろうが、控え目な碧い双眸の上目遣いと小首を傾げる仕草。何故か俺はコレに弱い。
どのみち見つかったのだから、食わせるのは普通だがとりあえず大きく溜息をついて言った。
「冷凍庫にある飯を温めろ」
瞬間、素早く移動して凍った飯を取り出しレンジを開ける。
「どんぶりでいいのか」
俺に聞いてる割にはさっさとどんぶりを出し、先に温めてあった俺の分をそれに入れて上の部分を平らにする。
次に奴は、スープカップを取り出しそれぞれに味噌を入れ冷蔵庫にある出汁のストックを注ぐ。引出しから乾燥ワカメを取り出しパラパラと両方に入れ、ラップをしたら、先程の飯を出して、替わりにスープカップを入れ時間をセット。そして俺と自分のどんぶりを俺の後ろにある作業台に置いた。
全体に火が通った所で塩胡椒で味を整える。味見はしてないが匂いからすると大丈夫だろう。
火を止めて二つのどんぶりに盛り付ける。
ちょうどレンジも音を立て奴が取りに行き一つを俺に渡してくれた。
箸の用意をし、冷蔵庫からレモン汁の瓶を出し真ん中に置く。
作業台を挟んで向き合い二振りで合掌。
「いただきます」
食べ終わるまで二振りに言葉は無かった。
今日の夜食は
☆簡単ネギ塩豚丼~レモン汁でサッパリと~
☆山姥切国広作簡単味噌汁
でした。
※※※※※※※※※※
「…大倶利伽羅も夜食食べるんだな」
「…夜食が無いと眠れん」
「………実は、俺も…」
「今までどうしていた」
「水で誤魔化すか、たまに厨番に握り飯を頼んだり…」
「腹が減ったら来ればいい。夜はほぼ、ここで何か食っているからな」
「………わかった。その時はまた頼む…」
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