人生万事塞翁が虎
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日没まで、あと三時間。
今回は、片方の青年、中島敦の物語。
彼はなぜ探偵社に入ったのだろうか__。
夕暮れ時、僕は、河原で独り佇んでいた。
ふと、頭によぎるのは空腹感と孤児院を追い出されるときに、孤児院の院長から言われた言葉だった__。
“この穀潰しが!お前なんぞ孤児院にもいらんわ!
どこぞで、野垂死んでしまえ!”
五月蠅い、五月蠅い、五月蠅い!
思い返すだけで、嫌な思い出だ。こんなことを言われて黙って言う通りに死にたくはない。
勇気を振り絞って盗みをしよう。次に通った人の物を盗むんだ。僕になら出来る。そう言って自分を奮い立たせる。
人が通る気配がした。振り返り見てみるとバイクに乗った人だった__。
追いつける筈もないし、さすがにこれは無理でしょ。
次だ次。
再度人が通る気配がした。振り返ると消防士が、大人数で走り込みをしていた__。
走り込みの最中に財布を持っている筈ないし、これも無理でしょ。
次のひとだ。絶対に次の人だ。
そう自分に言い聞かせていると川から男が流れて
きた__。
こ、これは流石にノーカンでしょ。ていうか、ノーカンにさせてください。
そう思いつつその男を見ていると、溺れながら、烏に襲われていた。
もう見ていられない。僕の中の善意が動いた。
僕は、川の中からその男を助け出した。
助け出されたその男は、目が開いて、むっくりと起き上がり、物事を察すると、「ちぇっ」と言った。
今、この男、人に助けてもらって“ちぇっ”って言ったのか⁉
僕に助けてもらいながら,,,
又、続けて男は、言った。
「君かい わたしの入水を邪魔したのは。」と。
邪魔なんて。僕はただあなたを助けようとしただけなのに。
__入水?
「自殺のことだよ!」
え⁉じ、自殺⁉
この人、自殺って言った⁉
「私は自殺をしようとしていたんだ。
それを君がいらないことを__」と
男は迷惑そうに言った。
なんか僕怒られてない?
「まあ__
人に迷惑をかけない清くクリーンな自殺が私の信条だ。
だのに君には迷惑をかけた。
これはこちらの落ち度。何かお詫びを__」
そう彼が言った時、僕のお腹は鳴った。
彼はこちらを見てくすりと笑いながら、
「空腹かい少年?」と言った。
じ、実はここ数日何も食べてなくて,,,
と僕が言うや否や、彼のお腹も鳴った。
そして彼は、「私もだ。ちなみに財布も流された。」
え、え?助けたお礼にご馳走っていう流れかと思ったのに,,,
その時、土手の上から、「おォーい」と言う声が聞こえてきた。
そして声の主は次に、「こんな処に居ったか唐変木!」と
言った。
その声が聞こえたのか、僕が助けた男は、
「おー国木田君ご苦労様」と大きな声で言った。
彼が国木田君と言った男は、彼のその言葉を聞くなり怒りながら、
「苦労は凡てお前の所為だ。この自殺嗜癖!」と言った。
彼はそんな言葉を軽く無視して、
「そうだ君。良いことを思いついた。彼は、私の同僚なのだ。彼に奢ってもらおう。」と言い始めた。
国木田と言う男の言葉は、聞かなくても良いのだろうか。
そんな僕の心配をよそに、彼は
「君 名前は?」と聞いてきた。
だから、
「僕は、中島,,,敦ですけど。」と答えた。
すると、「ついて来たまえ敦君。何が食べたい?」と
彼は、言った。
やっと食べ物を食べることができるんだ!
そして僕は、茶漬けが食べたいと答えた。
すると彼は、笑った。そして名乗った。
“太宰治”と。
こうして僕は、太宰という男と、国木田と言う男と出会ったのだった。
僕は、定食屋で、国木田と言う男にお茶漬けをざっと、三十杯くらい奢ってもらった。
こんなに食べたら、もう茶漬けは、十年は見たくない!
いや 本当に助かった。孤児院を追い出されて、横浜に出てきてから、食べるものも、寝るところもなく、あわや斃死かと。
僕のそんな独り言を聞いて太宰という男は、
「ふうん。君施設の出かい。」と言った。
出というか、追い出されただけなのでのですがね。
経営不振だとか営業縮小だとかで。
僕が、そう呟いているとまたもや太宰という男が、
「それは、薄情な施設もあったものだね」と言った。
そんな太宰という男を見ながら溜息交じりに国木田という男が、
「おい太宰 俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家ではない。仕事に戻るぞ」と太宰という男を促した。
2人は何の仕事をしているのだろうか。
僕の疑問が分かったのか、太宰という男は、
「なぁに 探偵さ」と人差し指を前に出しながら得意げに言った。
僕がぽかんとしていると、国木田と言う男は嫌々ながらも教えてくれた。
彼らが行っている探偵とは、猫探しや不貞捜査などではなく、切った張ったの荒事が領分らしい。
そして国木田という男はこう言った。
「異能力集団『武装探偵社』は知らぬか?」と。
『武装探偵社』聞き覚えがあった。
曰く 軍団や警察に頼れないような、危険な依頼を専門にする探偵集団__
昼の世界と夜の世界、その間を取り仕切る、薄暮の武装集団。なんでも『武装探偵社』の社員は、多くが異能力の力を持つ『異能力者』と聞くが__
この2人も異能力者なのだろうか。そもそも今日の仕事はいったい何なのだろう。
疑問に思ったので僕は聞いてみた。
すると、二人が一斉に
「虎探しだ」と言った。
と虎探し⁉
虎探しと聞いて驚いている僕に太宰という男は言った。
「近頃 街を食い荒らしている『人喰い虎』だよ。倉庫を荒らしたり畑の作物を食ったり好き放題さ」と。
そして続けて
「最近この近くで目撃されたらしいのだけど__」とも言った。
ま、まさかあいつのことなのか⁉あいつのことだとしたら一時でも早くこの二人の傍から離れなければならない。
あいつの餌食になるのだけはごめんだ。
そう思って、勢いよく椅子から離れると国木田という男が僕を持ち上げた。
そして彼は言った。
「待て」と。
ふいに僕は言ってしまった。
「む、無理だ!奴__奴に人が敵うわけがない」と。
国木田という男は言った。
「貴様 『人喰い虎』のことを知っているのか?」と。
だから僕は言った。
「奴は僕を狙っている!殺されかけたんだ!
この辺に出たんなら早く逃げないと」と。
それを言うや否や、僕は、地面にたたきつけられていた。
そして上から声が聞こえた。
「云っただろう 武装探偵社は荒事専門だと」と。
僕は、全てを話すことにした。
僕の孤児院は、あの虎によって倉も畑も全て壊されたということ。そしてその口減らしに僕が追い出されたということ。あと、僕がずっとあの虎に追いかけられているということ。それはつまり僕のいるところに必ずあの虎もいるということ。
それら一斉を話し終えると太宰という男は言った。
「君 今夜暇かい? 君が虎に狙われているのなら好都合だ。 それに報酬も出るよ」と。
報酬の値段が良かったので、僕は太宰という男について行くことにした。
__夜
僕は太宰という男と一緒に倉庫の中にいた。
僕には、今や今日の寝処も食い扶持だってない。
こんな僕なんかいっそ虎に喰われて死んだ方がいいのかもしれない。
そう思った時太宰という男は
「そろそろ時間だ」と言った。
紫色の満月が僕を照らしていた__。
それからの記憶はないが、太宰という男に聞くと僕は
現身に飢獣を降ろす月下の異能力者なのだそうだ。
つまり虎の正体は僕で、施設の大人たちはそのことを皆知っていたが、僕には教えていなかったとのことだった。
そんな僕を太宰という男は探偵社の一員として、迎えることを決めたらしい。
それから僕は無事入社試験を突破して武装探偵社に入ることになった。
今回は、片方の青年、中島敦の物語。
彼はなぜ探偵社に入ったのだろうか__。
夕暮れ時、僕は、河原で独り佇んでいた。
ふと、頭によぎるのは空腹感と孤児院を追い出されるときに、孤児院の院長から言われた言葉だった__。
“この穀潰しが!お前なんぞ孤児院にもいらんわ!
どこぞで、野垂死んでしまえ!”
五月蠅い、五月蠅い、五月蠅い!
思い返すだけで、嫌な思い出だ。こんなことを言われて黙って言う通りに死にたくはない。
勇気を振り絞って盗みをしよう。次に通った人の物を盗むんだ。僕になら出来る。そう言って自分を奮い立たせる。
人が通る気配がした。振り返り見てみるとバイクに乗った人だった__。
追いつける筈もないし、さすがにこれは無理でしょ。
次だ次。
再度人が通る気配がした。振り返ると消防士が、大人数で走り込みをしていた__。
走り込みの最中に財布を持っている筈ないし、これも無理でしょ。
次のひとだ。絶対に次の人だ。
そう自分に言い聞かせていると川から男が流れて
きた__。
こ、これは流石にノーカンでしょ。ていうか、ノーカンにさせてください。
そう思いつつその男を見ていると、溺れながら、烏に襲われていた。
もう見ていられない。僕の中の善意が動いた。
僕は、川の中からその男を助け出した。
助け出されたその男は、目が開いて、むっくりと起き上がり、物事を察すると、「ちぇっ」と言った。
今、この男、人に助けてもらって“ちぇっ”って言ったのか⁉
僕に助けてもらいながら,,,
又、続けて男は、言った。
「君かい わたしの入水を邪魔したのは。」と。
邪魔なんて。僕はただあなたを助けようとしただけなのに。
__入水?
「自殺のことだよ!」
え⁉じ、自殺⁉
この人、自殺って言った⁉
「私は自殺をしようとしていたんだ。
それを君がいらないことを__」と
男は迷惑そうに言った。
なんか僕怒られてない?
「まあ__
人に迷惑をかけない清くクリーンな自殺が私の信条だ。
だのに君には迷惑をかけた。
これはこちらの落ち度。何かお詫びを__」
そう彼が言った時、僕のお腹は鳴った。
彼はこちらを見てくすりと笑いながら、
「空腹かい少年?」と言った。
じ、実はここ数日何も食べてなくて,,,
と僕が言うや否や、彼のお腹も鳴った。
そして彼は、「私もだ。ちなみに財布も流された。」
え、え?助けたお礼にご馳走っていう流れかと思ったのに,,,
その時、土手の上から、「おォーい」と言う声が聞こえてきた。
そして声の主は次に、「こんな処に居ったか唐変木!」と
言った。
その声が聞こえたのか、僕が助けた男は、
「おー国木田君ご苦労様」と大きな声で言った。
彼が国木田君と言った男は、彼のその言葉を聞くなり怒りながら、
「苦労は凡てお前の所為だ。この自殺嗜癖!」と言った。
彼はそんな言葉を軽く無視して、
「そうだ君。良いことを思いついた。彼は、私の同僚なのだ。彼に奢ってもらおう。」と言い始めた。
国木田と言う男の言葉は、聞かなくても良いのだろうか。
そんな僕の心配をよそに、彼は
「君 名前は?」と聞いてきた。
だから、
「僕は、中島,,,敦ですけど。」と答えた。
すると、「ついて来たまえ敦君。何が食べたい?」と
彼は、言った。
やっと食べ物を食べることができるんだ!
そして僕は、茶漬けが食べたいと答えた。
すると彼は、笑った。そして名乗った。
“太宰治”と。
こうして僕は、太宰という男と、国木田と言う男と出会ったのだった。
僕は、定食屋で、国木田と言う男にお茶漬けをざっと、三十杯くらい奢ってもらった。
こんなに食べたら、もう茶漬けは、十年は見たくない!
いや 本当に助かった。孤児院を追い出されて、横浜に出てきてから、食べるものも、寝るところもなく、あわや斃死かと。
僕のそんな独り言を聞いて太宰という男は、
「ふうん。君施設の出かい。」と言った。
出というか、追い出されただけなのでのですがね。
経営不振だとか営業縮小だとかで。
僕が、そう呟いているとまたもや太宰という男が、
「それは、薄情な施設もあったものだね」と言った。
そんな太宰という男を見ながら溜息交じりに国木田という男が、
「おい太宰 俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家ではない。仕事に戻るぞ」と太宰という男を促した。
2人は何の仕事をしているのだろうか。
僕の疑問が分かったのか、太宰という男は、
「なぁに 探偵さ」と人差し指を前に出しながら得意げに言った。
僕がぽかんとしていると、国木田と言う男は嫌々ながらも教えてくれた。
彼らが行っている探偵とは、猫探しや不貞捜査などではなく、切った張ったの荒事が領分らしい。
そして国木田という男はこう言った。
「異能力集団『武装探偵社』は知らぬか?」と。
『武装探偵社』聞き覚えがあった。
曰く 軍団や警察に頼れないような、危険な依頼を専門にする探偵集団__
昼の世界と夜の世界、その間を取り仕切る、薄暮の武装集団。なんでも『武装探偵社』の社員は、多くが異能力の力を持つ『異能力者』と聞くが__
この2人も異能力者なのだろうか。そもそも今日の仕事はいったい何なのだろう。
疑問に思ったので僕は聞いてみた。
すると、二人が一斉に
「虎探しだ」と言った。
と虎探し⁉
虎探しと聞いて驚いている僕に太宰という男は言った。
「近頃 街を食い荒らしている『人喰い虎』だよ。倉庫を荒らしたり畑の作物を食ったり好き放題さ」と。
そして続けて
「最近この近くで目撃されたらしいのだけど__」とも言った。
ま、まさかあいつのことなのか⁉あいつのことだとしたら一時でも早くこの二人の傍から離れなければならない。
あいつの餌食になるのだけはごめんだ。
そう思って、勢いよく椅子から離れると国木田という男が僕を持ち上げた。
そして彼は言った。
「待て」と。
ふいに僕は言ってしまった。
「む、無理だ!奴__奴に人が敵うわけがない」と。
国木田という男は言った。
「貴様 『人喰い虎』のことを知っているのか?」と。
だから僕は言った。
「奴は僕を狙っている!殺されかけたんだ!
この辺に出たんなら早く逃げないと」と。
それを言うや否や、僕は、地面にたたきつけられていた。
そして上から声が聞こえた。
「云っただろう 武装探偵社は荒事専門だと」と。
僕は、全てを話すことにした。
僕の孤児院は、あの虎によって倉も畑も全て壊されたということ。そしてその口減らしに僕が追い出されたということ。あと、僕がずっとあの虎に追いかけられているということ。それはつまり僕のいるところに必ずあの虎もいるということ。
それら一斉を話し終えると太宰という男は言った。
「君 今夜暇かい? 君が虎に狙われているのなら好都合だ。 それに報酬も出るよ」と。
報酬の値段が良かったので、僕は太宰という男について行くことにした。
__夜
僕は太宰という男と一緒に倉庫の中にいた。
僕には、今や今日の寝処も食い扶持だってない。
こんな僕なんかいっそ虎に喰われて死んだ方がいいのかもしれない。
そう思った時太宰という男は
「そろそろ時間だ」と言った。
紫色の満月が僕を照らしていた__。
それからの記憶はないが、太宰という男に聞くと僕は
現身に飢獣を降ろす月下の異能力者なのだそうだ。
つまり虎の正体は僕で、施設の大人たちはそのことを皆知っていたが、僕には教えていなかったとのことだった。
そんな僕を太宰という男は探偵社の一員として、迎えることを決めたらしい。
それから僕は無事入社試験を突破して武装探偵社に入ることになった。