「お前は居るだけで、周囲を不幸にさせる。」
何度も孤児院で言われた言葉。大人達は、僕の事を見るたびにこう言った。
僕は、孤児院を追い出され、そして、拾ってもらった探偵社の人をも、不幸にしてしまったのだろうか。全ては、僕の所為で。僕が存在しているから。
もう僕は、この世に存在しなくてもいいのではないか。僕が存在している理由なんてないのだから。このまま、この芥川という男に殺されてもいいのではないだろうか。そんな馬鹿げた考えが頭の中を過る。

その時、後ろから、声がした。


「敦...君...に...げ...ろ」


虫の息の谷崎さんが、声を振り絞って言った言葉。
それは、今迄僕が生きてきた中で、誰一人として言わなかった言葉だった
僕は探偵社に居てもいいのだろうか＿＿。

そんなことより、谷崎さんは死んではいない。ナオミさんも荒いが息をしている。まだ、二人共死んではいない。まだ間に合う。
逃げている場合ではない。


国木田さんから言われた言葉。
「貴様も今日から探偵社が一隅。者の看板を汚す真似はするな」

僕が今するべきことは、逃げることじゃない。
例え逃げたとしても、追いかけてくる。
戦わなければ死ぬ。
覚悟を決めて僕は、拳銃を掴み走り出す。


「玉砕かつまらんな。」頭の上から冷たい声が降りかかる。


冬瀬冴月お前でも同じことをするか？