どこまでも
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ざく、ざく、ざく。
小気味のいい音があたりに響く。
その音を遮るかのように私の心臓が鳴っている。
湿った土の匂いと鬱蒼とした植物の香りがあざ笑うかのように鼻をくすぐり、目の前に出来た穴は私を誘うかのようにこちらを見つめていた。
──いっそ私もこの一部になれたなら。
そう思ってふと顔をあげると笑顔でこちらを見つめる男と目が合う。
どうしたの?と聞くように小首をかしげる退は私の視線を嫌でも離そうとはしてくれなかった。
その視線から逃れたくて小さく首を横に振ると、彼はまるで全てを見抜いているかのように優しく微笑み、
「君は駄目だよ」
諭すような声でそう一言伝えてから視線を穴の方へ向けるのだった。
やるせない気持ちを誤魔化すように私も穴を見つめなおす。
深く暗い穴はただ静かに私たちの視線を受け止めるだけだった。
「じゃあ始めようか」
私の気持ちを知ってか知らずか。
彼は気を取り直すかのようにシャベルを私に手渡した。
ずしりとした重みが、もう後戻りは出来ないのだと私に強く訴える。
今からでもやり直せないのか。全て無かったことに出来ないのか。
そんな事をぐるぐる考えながら私は退と一緒に"彼氏だったもの"を穴に落とす。
感傷に浸る間もなく悲しいほどに歪みきった彼の顔に土がかぶさっていく。
思うように身体が動かずその光景をただ眺めていると、
「ほら、早く」
そう、彼に急かされてしまった。
一気に現実に引き戻された私は慌てて同じように土をかぶせる。
腕はまるで重りがついたかのように異様に重く上手く土を掬う事が出来なかった。
それでも私は震える自身の身体を無視してゆっくりと土を掬っては穴に落としていく。
そうしてどんどん土と混ざって消えていくそれを見届け終えたその瞬間、抑えていたものが溢れたように一気に身体中の力が抜けてしまいその場に頽れる。
そんな私の様子に退は困ったように笑うと、彼は付き合ってた頃と同じような優しい手つきで私の頭を撫でた。
ひどく優しく、それでいて気分が悪くなるこの温もりを、私は拒絶することも出来ずただ黙って受け入れていた。
──────
「落ち着いた?……じゃあ、そろそろ行こっか」
もう大丈夫だろうと判断した彼は、私の手を取りゆっくりと立ち上がらせるとそのまま軽やかな足取りで車の方へと歩き出す。
手を繋がれたままの私は頑張ってその足取りに合わせて歩き出した。
「そういえば久々に手を繋いだね」
くすぐったそうな声で、まるで日常をなぞるような問いが私に投げかけられる。
その瞬間、つい先ほどまでの光景を無かったことにするかのような彼に対して不快感が胃の底からせり上がる。
それでもそれらを吐き出さないよう必死に飲み込み小さく頷いた。
頷いたのを確認した彼は何故か子供のような無邪気な笑顔を浮かべる。
そして繋いだ手にぐいと力を込められると彼の方へと引き寄せられ、耳元で愛を囁くように続けて口を開いた。
「よかったよ、君があんなやつと別れてくれて」
耳元で囁かれたその言葉は熱を帯びた刃のように私の心臓を突き刺した。
は、と声のような音のようなものが喉から洩れる。
思わず怒りと恐怖が入り混じった目で彼を睨む。
それでも彼は表情一つ変えずにこちらを見つめ返していた。
「次は俺との仲を邪魔するような変な男に騙されないでよね?いちいち処分するのは大変だからさ」
怒りが、憎しみが、やるせなさが私の身体を駆け巡る。
私の全てを踏みにじったコイツに何もかもをぶつけてやりたいほどの衝動に駆られる。
そんな私の感情を見透かしてか、彼は全てを握りつぶすかのように繋いだ手にさらに力を込める。
自身の指から骨がきしむ音が聞こえ私は痛みで顔を歪ませると、その姿さえ彼はまるで愛おしいと言わんばかりに見つめていた。
「大丈夫。絶対に離してあげないから。死んでも、ずうっと」
そう囁いた退は幸せそうに目を細め、私の手を引きながら暗い森を歩き続けていった。
小気味のいい音があたりに響く。
その音を遮るかのように私の心臓が鳴っている。
湿った土の匂いと鬱蒼とした植物の香りがあざ笑うかのように鼻をくすぐり、目の前に出来た穴は私を誘うかのようにこちらを見つめていた。
──いっそ私もこの一部になれたなら。
そう思ってふと顔をあげると笑顔でこちらを見つめる男と目が合う。
どうしたの?と聞くように小首をかしげる退は私の視線を嫌でも離そうとはしてくれなかった。
その視線から逃れたくて小さく首を横に振ると、彼はまるで全てを見抜いているかのように優しく微笑み、
「君は駄目だよ」
諭すような声でそう一言伝えてから視線を穴の方へ向けるのだった。
やるせない気持ちを誤魔化すように私も穴を見つめなおす。
深く暗い穴はただ静かに私たちの視線を受け止めるだけだった。
「じゃあ始めようか」
私の気持ちを知ってか知らずか。
彼は気を取り直すかのようにシャベルを私に手渡した。
ずしりとした重みが、もう後戻りは出来ないのだと私に強く訴える。
今からでもやり直せないのか。全て無かったことに出来ないのか。
そんな事をぐるぐる考えながら私は退と一緒に"彼氏だったもの"を穴に落とす。
感傷に浸る間もなく悲しいほどに歪みきった彼の顔に土がかぶさっていく。
思うように身体が動かずその光景をただ眺めていると、
「ほら、早く」
そう、彼に急かされてしまった。
一気に現実に引き戻された私は慌てて同じように土をかぶせる。
腕はまるで重りがついたかのように異様に重く上手く土を掬う事が出来なかった。
それでも私は震える自身の身体を無視してゆっくりと土を掬っては穴に落としていく。
そうしてどんどん土と混ざって消えていくそれを見届け終えたその瞬間、抑えていたものが溢れたように一気に身体中の力が抜けてしまいその場に頽れる。
そんな私の様子に退は困ったように笑うと、彼は付き合ってた頃と同じような優しい手つきで私の頭を撫でた。
ひどく優しく、それでいて気分が悪くなるこの温もりを、私は拒絶することも出来ずただ黙って受け入れていた。
──────
「落ち着いた?……じゃあ、そろそろ行こっか」
もう大丈夫だろうと判断した彼は、私の手を取りゆっくりと立ち上がらせるとそのまま軽やかな足取りで車の方へと歩き出す。
手を繋がれたままの私は頑張ってその足取りに合わせて歩き出した。
「そういえば久々に手を繋いだね」
くすぐったそうな声で、まるで日常をなぞるような問いが私に投げかけられる。
その瞬間、つい先ほどまでの光景を無かったことにするかのような彼に対して不快感が胃の底からせり上がる。
それでもそれらを吐き出さないよう必死に飲み込み小さく頷いた。
頷いたのを確認した彼は何故か子供のような無邪気な笑顔を浮かべる。
そして繋いだ手にぐいと力を込められると彼の方へと引き寄せられ、耳元で愛を囁くように続けて口を開いた。
「よかったよ、君があんなやつと別れてくれて」
耳元で囁かれたその言葉は熱を帯びた刃のように私の心臓を突き刺した。
は、と声のような音のようなものが喉から洩れる。
思わず怒りと恐怖が入り混じった目で彼を睨む。
それでも彼は表情一つ変えずにこちらを見つめ返していた。
「次は俺との仲を邪魔するような変な男に騙されないでよね?いちいち処分するのは大変だからさ」
怒りが、憎しみが、やるせなさが私の身体を駆け巡る。
私の全てを踏みにじったコイツに何もかもをぶつけてやりたいほどの衝動に駆られる。
そんな私の感情を見透かしてか、彼は全てを握りつぶすかのように繋いだ手にさらに力を込める。
自身の指から骨がきしむ音が聞こえ私は痛みで顔を歪ませると、その姿さえ彼はまるで愛おしいと言わんばかりに見つめていた。
「大丈夫。絶対に離してあげないから。死んでも、ずうっと」
そう囁いた退は幸せそうに目を細め、私の手を引きながら暗い森を歩き続けていった。
1/1ページ
