授業が終わる五分前。
そろそろ帰れる、
そう思っていた私にまるで罰でも与えに来たのかと思うほどの強い雨に降られてしまった。
置き傘なんてものは持ってない私はいずれ治まるだろうと思い、
しばらく学校に残っていたが雨は相変わらず強く叩きつけるように降り続いていた。
今日はもうこのまま降り続けるんだろう、
それに気づいてしまった私はいよいよ濡れて帰る事にしたのだった。



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ぶつぶつと文句を言いながらも帰る身支度をした私は昇降口まで降りて靴を履き替えた。
潔く濡れて帰ろうとした時、聞いたことのある声が私を呼び止めてきた。

「あれ？鳩羽さん？」
「あ……山崎君」

私を呼び止めたのは同じクラスの山崎君だった。

「珍しいね、こんな時間に帰るなんて」
「山崎君こそ部活は？」
「雨で中止」
「なるほど」

"本当はもっとやりたかったんだけどね"
なんて笑いながら言った山崎君は昇降口の前で傘を開こうとした時、
ふと、私を見てそのまま黙り込んでしまった。

「……山崎君？」
「鳩羽さん……もしかして傘持ってない？」
「あー、うん。持ってないよ」

濡れて帰るつもりだった事を伝えると山崎君は自身の傘と私を交互に見ながら、

「もし良かったら家まで送るよ」

そう、私に言ってくれた。

「いいの？」
「うん、俺の事は気にしないでいいからさ」

遠慮する私をよそに彼は傘を広げると一緒に帰ろうと手招きしてくれた。

「じゃあ…お言葉に甘えて」

私はそっと彼の隣に並ぶ。
そんなことはないはずなのに、
心なしか周りの人に見られているような気がして思わず緊張してしまう。

（山崎君は大丈夫なのかな…）

彼がどう思っているのか気になってしまった私は、
つい、彼の顔を見てしまった。
見られていることに気づいた彼は私を見つめ返すと、

「こんな事言うのもアレだろうけど、鳩羽さんと一緒に帰れて嬉しいんだ」




その後私は。
彼のさっきの言葉と笑顔に恥ずかしくなってしまい、
うまく喋る事も出来ないまま送ってもらう羽目になってしまった。