紙切れに
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焦げてしまうほど強い日差しの中、
我々真選組は年に一度の七夕祭りの為に会場の警備をしていた。
「あーあ、私も遊びに行きたいなー」
目の前を楽しそうに歩く市民と、けだるそうな表情で横に立つ先輩の顔を交互に見ながら呟く。
そんな私に先輩は微笑む。
「願い事じゃなくて反省文書かされてもいいならね」
ついでに悲しい現実も返してくれた。
「……先輩だって、本当は遊びたいんじゃないんですか?」
「俺だけじゃなくてみんな遊びたいっつーの」
「ですよねー」
先輩の本音に合わせてため息をしてしまう。
表情を見る限り、嘘ではないんだろうなぁ。
そう思うと尚更今の状況にうんざりしてしまった。
「早く休憩時間にならないかなぁ」
「そればっかりは流石に……あ、そうだ」
私の呟きを聞いて何かを思いだしたのか、
先輩はいそいそとポケットから2枚の紙とペンを取りだした。
「休憩時間は流石に無理だけど、気晴らしにはなるでしょ」
「……短冊?」
先輩が渡してきたのはちょっと折れ曲がってしまった短冊だった。
毎年お祭り会場の一角に誰もが自由に短冊に願いを書けるスペースがある。
おそらくこの短冊はそのスペースに置いてあるものだろう。
「これ、どうしたんですか?」
「昨日委員会の方から貰ったんだ。警備のお礼に好きなの貰っていいって言われてね」
可愛らしいお礼だよね、と先輩は言う。
確かに。
大の大人へのお礼に短冊は少々可愛らしい。
かといって何も貰えないよりは幾分もましなのかもしれない。
「折角だしここで書いちゃおうよ」
「おっ!いいですねそれ」
私は先輩からペンを受け取る。
願い事を書くなんて何年ぶりだろうか。
「なに書こうかなぁ」
受け取ったペンをくるくる回しながら考える。
休みを増やせ!給料上げろ!みたいな現実的な事はいくらでも出てくるのだが、
それを短冊に書いてしまうのは何か違うような気がしていた。
かといって世界平和などと大きな事を書く気にもなれなかった。
「……先輩、何か書きました?」
聞くのは野暮とは分かっていたが参考材料なるものが欲しい私は、
つい先輩に聞いてしまう。
先輩は質問の返事代わりに何も書かれていない短冊を私に見せてくれた。
私もお礼に白紙の短冊を見せると、
先輩も察してくれたのか苦笑いをしていた。
「やっぱうまく書けないよね」
「えぇ、ちょっと悔しいです」
「ここに書けない願い事ならいくらでもあるんだけどさ」
うんうん、と私は頷く。
やはり先輩も同じ理由で書けなかったようだ。
「いっそ"鳩羽と一緒に祭りに行けますよーに"って書いちゃおうかな、なーんて」
「え?」
何をふざけた事を、
そう思ったが彼の表情を見る限り、
からかって言ったつもりではなさそうだった。
「……冗談にしては顔がマジですね」
「あはは……バレたか」
「何年後輩をやってると思ってんですか」
「そ、それもそうだったね」
冗談じゃない事がバレて恥ずかしくなったのか、
先輩は気まずそうな顔をしている。
私も雰囲気に飲まれてしまったのか言葉に詰まってしまった。
「それで、その、どうかな?」
「どうって……」
「祭り、一緒に言ってくれるかな」
「まぁ……先輩なら、別に良いですけど」
「本当?」
動揺している私をよそに、
先輩の表情が明るくなったのが目に見えて分かると自分の顔が綻んでいる事に気づいた。
休憩まであと一時間。
私は時間が早く来てほしいような、来てほしくないような。
そんな不思議な気分でいた。
我々真選組は年に一度の七夕祭りの為に会場の警備をしていた。
「あーあ、私も遊びに行きたいなー」
目の前を楽しそうに歩く市民と、けだるそうな表情で横に立つ先輩の顔を交互に見ながら呟く。
そんな私に先輩は微笑む。
「願い事じゃなくて反省文書かされてもいいならね」
ついでに悲しい現実も返してくれた。
「……先輩だって、本当は遊びたいんじゃないんですか?」
「俺だけじゃなくてみんな遊びたいっつーの」
「ですよねー」
先輩の本音に合わせてため息をしてしまう。
表情を見る限り、嘘ではないんだろうなぁ。
そう思うと尚更今の状況にうんざりしてしまった。
「早く休憩時間にならないかなぁ」
「そればっかりは流石に……あ、そうだ」
私の呟きを聞いて何かを思いだしたのか、
先輩はいそいそとポケットから2枚の紙とペンを取りだした。
「休憩時間は流石に無理だけど、気晴らしにはなるでしょ」
「……短冊?」
先輩が渡してきたのはちょっと折れ曲がってしまった短冊だった。
毎年お祭り会場の一角に誰もが自由に短冊に願いを書けるスペースがある。
おそらくこの短冊はそのスペースに置いてあるものだろう。
「これ、どうしたんですか?」
「昨日委員会の方から貰ったんだ。警備のお礼に好きなの貰っていいって言われてね」
可愛らしいお礼だよね、と先輩は言う。
確かに。
大の大人へのお礼に短冊は少々可愛らしい。
かといって何も貰えないよりは幾分もましなのかもしれない。
「折角だしここで書いちゃおうよ」
「おっ!いいですねそれ」
私は先輩からペンを受け取る。
願い事を書くなんて何年ぶりだろうか。
「なに書こうかなぁ」
受け取ったペンをくるくる回しながら考える。
休みを増やせ!給料上げろ!みたいな現実的な事はいくらでも出てくるのだが、
それを短冊に書いてしまうのは何か違うような気がしていた。
かといって世界平和などと大きな事を書く気にもなれなかった。
「……先輩、何か書きました?」
聞くのは野暮とは分かっていたが参考材料なるものが欲しい私は、
つい先輩に聞いてしまう。
先輩は質問の返事代わりに何も書かれていない短冊を私に見せてくれた。
私もお礼に白紙の短冊を見せると、
先輩も察してくれたのか苦笑いをしていた。
「やっぱうまく書けないよね」
「えぇ、ちょっと悔しいです」
「ここに書けない願い事ならいくらでもあるんだけどさ」
うんうん、と私は頷く。
やはり先輩も同じ理由で書けなかったようだ。
「いっそ"鳩羽と一緒に祭りに行けますよーに"って書いちゃおうかな、なーんて」
「え?」
何をふざけた事を、
そう思ったが彼の表情を見る限り、
からかって言ったつもりではなさそうだった。
「……冗談にしては顔がマジですね」
「あはは……バレたか」
「何年後輩をやってると思ってんですか」
「そ、それもそうだったね」
冗談じゃない事がバレて恥ずかしくなったのか、
先輩は気まずそうな顔をしている。
私も雰囲気に飲まれてしまったのか言葉に詰まってしまった。
「それで、その、どうかな?」
「どうって……」
「祭り、一緒に言ってくれるかな」
「まぁ……先輩なら、別に良いですけど」
「本当?」
動揺している私をよそに、
先輩の表情が明るくなったのが目に見えて分かると自分の顔が綻んでいる事に気づいた。
休憩まであと一時間。
私は時間が早く来てほしいような、来てほしくないような。
そんな不思議な気分でいた。