君の世界、僕の世界
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
エレナがいないホグワーツは退屈を極めていた。彼女が卒業してから一年が経つ。
彼女がいないのをいいことに、また懲りずにグリフィンドールの二人は絡んできた。しかしスネイプはエレナとの約束を守り、彼らに構うことも呪文で抵抗することも一切なかった。変わり映えのしないつまらない日が続くなか、スネイプは少しずつ異変を感じるようになった。
彼女と関わりのあったグリフィンドール生の五人を除いて、他の生徒や教授たちから彼女に関する記憶がなくなっていたのだ。日を追うごとに、彼女のことを覚えていないと言い出す者が続出し、彼女をいつも模範生だと称えていた教授までも覚えておらず、終いには彼女の存在すらなかったことにされていた。
スネイプは混乱した。二人で撮った写真や彼女からの手紙だってしっかり残っているのに何故と。ところが翌日、エレナとの写真を見たスネイプは焦りを覚えた。写真の中の彼女の片方の足先が消えかかっていたのだ。スネイプはふと思い出す。エレナが卒業する少し前に彼女からおかしな話を聞かされたことを。
『セブルス、大事な話があるの』
突然彼女からそう言われ、スネイプは空き教室に連れてこられた。神妙な面持ちでスネイプを見つめたまま、エレナはなかなか口を開かなかった。話すことを躊躇っているようだった。
『私ね、本当はこの世界の人間ではないの』
ようやく彼女の口から出て来た話は信じ難いものだった。
『魔法なんて存在しない、ごく普通の一九六〇年代のロンドンに住んでいたのよ。でも、八年前にこちらの世界に突然やってきたの。どうやって来たのかは覚えてないわ』
『けれど、最近おかしいの。寮監に名前をど忘れされてしまうし、この前なんて、目の錯覚かと思ったんだけど手が透けて見えたのよ。ねえセブルス、私、このまま消えちゃうのかしら……? 元の世界に戻ってしまうの?』
涙を浮かべて不安そうに眉を歪めて彼女は言った。
『ちょ、ちょっと待ってくれ。どうしたんだ、アーヴィン? 何か怖い夢でも見たのか? それとも、あいつらに何か変な薬でも盛られたか?』
普段このような妄言などない彼女だ。
『夢……ええ、ええそうね……きっと悪い夢なんだわ……おかしな話をしてごめんなさい』
一度うつむいてから、泣きそうな顔で彼女はそっと笑みを浮かべていた。その後、彼女は一切この話をすることはなかった。普段通りの彼女に戻ったものだから安心してしまい、スネイプもこの話はすっかり忘れてしまっていた。もし彼女の話が本当であれば、エレナはその『元の世界』にいる可能性がある。しかし、それは一体どこなのか。スネイプは悔やんだ。もっと彼女の話を真剣に聞いてあげていれば、手がかりが掴めたかもしれないのに。
協力者を得るため、スネイプはグリフィンドールとの合同授業の後、同じように不審に思い始めていた彼女に声をかけた。
「リリー、話がある」
彼女は信じてくれるだろうか。こんな、こんな馬鹿げたおかしな話を。
彼女がいないのをいいことに、また懲りずにグリフィンドールの二人は絡んできた。しかしスネイプはエレナとの約束を守り、彼らに構うことも呪文で抵抗することも一切なかった。変わり映えのしないつまらない日が続くなか、スネイプは少しずつ異変を感じるようになった。
彼女と関わりのあったグリフィンドール生の五人を除いて、他の生徒や教授たちから彼女に関する記憶がなくなっていたのだ。日を追うごとに、彼女のことを覚えていないと言い出す者が続出し、彼女をいつも模範生だと称えていた教授までも覚えておらず、終いには彼女の存在すらなかったことにされていた。
スネイプは混乱した。二人で撮った写真や彼女からの手紙だってしっかり残っているのに何故と。ところが翌日、エレナとの写真を見たスネイプは焦りを覚えた。写真の中の彼女の片方の足先が消えかかっていたのだ。スネイプはふと思い出す。エレナが卒業する少し前に彼女からおかしな話を聞かされたことを。
『セブルス、大事な話があるの』
突然彼女からそう言われ、スネイプは空き教室に連れてこられた。神妙な面持ちでスネイプを見つめたまま、エレナはなかなか口を開かなかった。話すことを躊躇っているようだった。
『私ね、本当はこの世界の人間ではないの』
ようやく彼女の口から出て来た話は信じ難いものだった。
『魔法なんて存在しない、ごく普通の一九六〇年代のロンドンに住んでいたのよ。でも、八年前にこちらの世界に突然やってきたの。どうやって来たのかは覚えてないわ』
『けれど、最近おかしいの。寮監に名前をど忘れされてしまうし、この前なんて、目の錯覚かと思ったんだけど手が透けて見えたのよ。ねえセブルス、私、このまま消えちゃうのかしら……? 元の世界に戻ってしまうの?』
涙を浮かべて不安そうに眉を歪めて彼女は言った。
『ちょ、ちょっと待ってくれ。どうしたんだ、アーヴィン? 何か怖い夢でも見たのか? それとも、あいつらに何か変な薬でも盛られたか?』
普段このような妄言などない彼女だ。
『夢……ええ、ええそうね……きっと悪い夢なんだわ……おかしな話をしてごめんなさい』
一度うつむいてから、泣きそうな顔で彼女はそっと笑みを浮かべていた。その後、彼女は一切この話をすることはなかった。普段通りの彼女に戻ったものだから安心してしまい、スネイプもこの話はすっかり忘れてしまっていた。もし彼女の話が本当であれば、エレナはその『元の世界』にいる可能性がある。しかし、それは一体どこなのか。スネイプは悔やんだ。もっと彼女の話を真剣に聞いてあげていれば、手がかりが掴めたかもしれないのに。
協力者を得るため、スネイプはグリフィンドールとの合同授業の後、同じように不審に思い始めていた彼女に声をかけた。
「リリー、話がある」
彼女は信じてくれるだろうか。こんな、こんな馬鹿げたおかしな話を。