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クリスマスの休暇に入る前にリーマスからお茶の誘いを受けていたユイは、さっそく彼の部屋を訪れていた。休暇明けの授業に使う下級生用の魔法生物の話を聞きながら紅茶を飲んでいると、ドアをノックする音がした。
「どうぞ」
リーマスが返事をすると、扉が開けられた。入って来た人物に、ユイは笑みを浮かべた。
「スネイプ先生!」
パッと立ち上がり、ユイはセブルスに駆け寄った。ユイがいたことに一瞬だけ顔をしかめたセブルスだが、すぐさまいつもの表情に戻り、部屋の中央に設けられたテーブルに進んだ。
セブルスは煙の立ち上るゴブレットを持っている。もうすぐ満月だ。
「ああ、セブルス。今ユイとお茶していたんだよ」
「……そのようですな」
テーブルの上にある空になったカップをちらりと見て、セブルスはそれだけ言った。
「大鍋一杯分煎じた。もっと必要とあらば」
リーマスは立ち上がり、セブルスからゴブレットを受け取った。
「そうだね。また明日飲まなきゃいけないかもしれない。いつもありがとう、助かるよ」
「……礼には及ばん」
仏頂面でセブルスは答えた。
「ねえ、これって本当に砂糖入れちゃだめなのかい?」
煙が立っているゴブレットを指差しながら、リーマスは問いかけた。セブルスは無言で彼を睨みつけた。
「ごめんごめん、ちょっと確認したかっただけだよ」
「文句があるなら自分で作ることだな」
セブルスはフンッと鼻を鳴らした。
「先生たちって、前より仲良くなりましたよね」
ユイの突拍子もない発言に、二人が同時に言葉を発した。
「そう見えるかい?」
「どこがだ」
一人はニコニコと嬉しそうに、もう一人は心底嫌そうにユイを振り返った。二人の正反対の反応に、ユイはふふふっと笑った。
「あ、そうだルーピン先生!NEWT試験のことで聞きたいことがあるので、また今度伺ってもいいですか?その時は甘いお菓子をお持ちしますから」
「本当かい?ありがとう、ユイ。楽しみにしているよ」
リーマスが微笑みながら、ユイの頭を撫でた。彼女が少し照れたように笑っていると、突然後ろからグイッと腰を引き寄せられた。
ユイの頭からリーマスの手が離れ、気付いた時にはセブルスのすぐそばに立っていた。
「せ、先生?」
見上げれば、セブルスは眉間にいつもの三割増しのしわを寄せ、リーマスに睨みを利かせていた。
全神経が腰に回されたままの腕に集中する。頬を赤らめたユイとその原因の睨んでくる男を見て、リーマスはくすくす笑った。
「る、ルーピン先生?」
戸惑うユイはセブルスとリーマスを交互に見遣った。
「さっさと飲みたまえ」
「はいはい、わかってますよ」
威嚇するような態度を取るセブルスに対し、リーマスは笑いながらゴブレットを煽った。リーマスは薬の苦さにブルブルっと体を震わせた。
「用は済んだ。失礼する」
ユイの腰に腕を回したまま、セブルスは部屋の出口へ向かう。
「うわっ!え?え?あ、ルーピン先生ありがとうございました!」
慌ててお茶のお礼を言って、セブルスに連れ出されるユイを、リーマスはにこやかに手を振りながら見送った。
ユイを自分の部屋に入れ、バタンと勢いよく扉を閉めた後、困惑する彼女をセブルスは力強く抱き寄せた。ユイが小さく悲鳴をあげた。
正面から腰を引いたセブルスは、彼女の瞳を覗き込んだ。ユイは機嫌の悪い様子のセブルスを恐々見つめる。彼の強い眼差しに、次第に頬を染めた。
「先生……?」
「……君が、わたし以外の者に触れられるのが気に食わない。ましてやあのルーピンになど」
そう言って、片方の手で後頭部を引き寄せ、先ほどリーマスがほんの一瞬触れていた頭にキスを落とした。
そっとその手を後頭部から、真っ赤なったユイの頬に移し、彼女を見つめた。セブルスの表情は、先ほどとは違い、どこか切なげだった。
「奴は……君に気があるんじゃないのか? 君も——」
「……何を言ってるんですか」
困ったような顔で小さくため息をついた後、ユイは頬に添えられたセブルスの手に優しく触れた。
「そんなことあるわけないじゃいですか。生徒であり、ただの旧友ですよ」
眉をハの字にし、微笑みながらユイは続ける。
「私が好きなのはスネイプ先生です。忘れたんですか?この世界に来る前から、ずーっと先生のことが好きなんですよ?先生以外へ気が向くなんて、どんなことがあってもありえませんよ」
じっとセブルスの目を見たまま、はっきりとした口調でユイは告げた。
「そう、だったな……」
セブルスはそう呟くと、ユイの肩に顔を埋めた。
どうしてしまったのだろう。長い戦いが終わり、ユイの呪いが解けてこの世に戻って来てからというもの、彼は度々このように弱ることがあった。
ユイを失いそうになったことが相当彼にダメージを与えてしまったのかもしれない。
「大丈夫です。私はどこにも行きませんよ。ずっとあなたのそばにいますから」
大きな背中を撫でながら、ユイは囁いた。
今夜は自分が温かい紅茶を淹れる番だな。そう考えながら、しばらくユイはセブルスを抱きしめ続けた。
「どうぞ」
リーマスが返事をすると、扉が開けられた。入って来た人物に、ユイは笑みを浮かべた。
「スネイプ先生!」
パッと立ち上がり、ユイはセブルスに駆け寄った。ユイがいたことに一瞬だけ顔をしかめたセブルスだが、すぐさまいつもの表情に戻り、部屋の中央に設けられたテーブルに進んだ。
セブルスは煙の立ち上るゴブレットを持っている。もうすぐ満月だ。
「ああ、セブルス。今ユイとお茶していたんだよ」
「……そのようですな」
テーブルの上にある空になったカップをちらりと見て、セブルスはそれだけ言った。
「大鍋一杯分煎じた。もっと必要とあらば」
リーマスは立ち上がり、セブルスからゴブレットを受け取った。
「そうだね。また明日飲まなきゃいけないかもしれない。いつもありがとう、助かるよ」
「……礼には及ばん」
仏頂面でセブルスは答えた。
「ねえ、これって本当に砂糖入れちゃだめなのかい?」
煙が立っているゴブレットを指差しながら、リーマスは問いかけた。セブルスは無言で彼を睨みつけた。
「ごめんごめん、ちょっと確認したかっただけだよ」
「文句があるなら自分で作ることだな」
セブルスはフンッと鼻を鳴らした。
「先生たちって、前より仲良くなりましたよね」
ユイの突拍子もない発言に、二人が同時に言葉を発した。
「そう見えるかい?」
「どこがだ」
一人はニコニコと嬉しそうに、もう一人は心底嫌そうにユイを振り返った。二人の正反対の反応に、ユイはふふふっと笑った。
「あ、そうだルーピン先生!NEWT試験のことで聞きたいことがあるので、また今度伺ってもいいですか?その時は甘いお菓子をお持ちしますから」
「本当かい?ありがとう、ユイ。楽しみにしているよ」
リーマスが微笑みながら、ユイの頭を撫でた。彼女が少し照れたように笑っていると、突然後ろからグイッと腰を引き寄せられた。
ユイの頭からリーマスの手が離れ、気付いた時にはセブルスのすぐそばに立っていた。
「せ、先生?」
見上げれば、セブルスは眉間にいつもの三割増しのしわを寄せ、リーマスに睨みを利かせていた。
全神経が腰に回されたままの腕に集中する。頬を赤らめたユイとその原因の睨んでくる男を見て、リーマスはくすくす笑った。
「る、ルーピン先生?」
戸惑うユイはセブルスとリーマスを交互に見遣った。
「さっさと飲みたまえ」
「はいはい、わかってますよ」
威嚇するような態度を取るセブルスに対し、リーマスは笑いながらゴブレットを煽った。リーマスは薬の苦さにブルブルっと体を震わせた。
「用は済んだ。失礼する」
ユイの腰に腕を回したまま、セブルスは部屋の出口へ向かう。
「うわっ!え?え?あ、ルーピン先生ありがとうございました!」
慌ててお茶のお礼を言って、セブルスに連れ出されるユイを、リーマスはにこやかに手を振りながら見送った。
ユイを自分の部屋に入れ、バタンと勢いよく扉を閉めた後、困惑する彼女をセブルスは力強く抱き寄せた。ユイが小さく悲鳴をあげた。
正面から腰を引いたセブルスは、彼女の瞳を覗き込んだ。ユイは機嫌の悪い様子のセブルスを恐々見つめる。彼の強い眼差しに、次第に頬を染めた。
「先生……?」
「……君が、わたし以外の者に触れられるのが気に食わない。ましてやあのルーピンになど」
そう言って、片方の手で後頭部を引き寄せ、先ほどリーマスがほんの一瞬触れていた頭にキスを落とした。
そっとその手を後頭部から、真っ赤なったユイの頬に移し、彼女を見つめた。セブルスの表情は、先ほどとは違い、どこか切なげだった。
「奴は……君に気があるんじゃないのか? 君も——」
「……何を言ってるんですか」
困ったような顔で小さくため息をついた後、ユイは頬に添えられたセブルスの手に優しく触れた。
「そんなことあるわけないじゃいですか。生徒であり、ただの旧友ですよ」
眉をハの字にし、微笑みながらユイは続ける。
「私が好きなのはスネイプ先生です。忘れたんですか?この世界に来る前から、ずーっと先生のことが好きなんですよ?先生以外へ気が向くなんて、どんなことがあってもありえませんよ」
じっとセブルスの目を見たまま、はっきりとした口調でユイは告げた。
「そう、だったな……」
セブルスはそう呟くと、ユイの肩に顔を埋めた。
どうしてしまったのだろう。長い戦いが終わり、ユイの呪いが解けてこの世に戻って来てからというもの、彼は度々このように弱ることがあった。
ユイを失いそうになったことが相当彼にダメージを与えてしまったのかもしれない。
「大丈夫です。私はどこにも行きませんよ。ずっとあなたのそばにいますから」
大きな背中を撫でながら、ユイは囁いた。
今夜は自分が温かい紅茶を淹れる番だな。そう考えながら、しばらくユイはセブルスを抱きしめ続けた。