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人は見かけによらないと言うけれど……

その日、宝瓶宮の主は親友に物凄い剣幕で迫っていた。

「ミロ!…お前は気付いているか……?」
「い、いきなり何だ」
顔が近い、と必死にカミュの肩を掴んで引き剥がそうとしているミロだが、逆に肩を掴まれてしまう。

「お前はわからないのか!?」
「だから何がだ!?とにかく落ち着けカミュ!!」
ミロの言葉にカミュは正気に戻ったのか、ミロの肩から手を離す。
「す…すまない……」
「全く…それで、一体何があったんだ?」
カミュは辺りを注意深く見渡す。
「…人に聞かれるとマズい話なのか……?」
「…私が言いたいのは……」
ミロしかいない事を確認すると、カミュは小声で言う。


「最近、シュラの様子がおかしくないか?」


「……は?」
「シュラの奴……最近やたらと双魚宮を出入りしているんだ」
本人に問いただしたところ、アフロディーテの手伝いらしい。
「へぇ~……」
特に感心が無いのか、ミロは間延びした返事を返す。
「だが……ここのところ、奴の機嫌が妙に良い」
「…はい……?」
ミロの頭に?マークが浮かぶ。


「この前なんか…双魚宮から自分の宮へ帰る時……奴は鼻歌を歌っていたんだぞ!?」
あまりの光景に、カミュは己の部屋から出てこられなかった程だそうだ。

……確かに、シュラが鼻歌を歌っている光景は想像しにくい。

「……」

試しにミロは想像してみるが……

「ぶっ!!」

吹き出してしまう。

「とにかく、奴が何故あんな風になってしまったのか……」
必死に笑いを堪えているミロを尻目に、カミュは溜め息をつく。

「何を話しているんだ?」

ミロは背後から声を掛けられ、笑いながらも答える。
「くく…いや、カミュの奴が最近シュラが…ぇ……?」

ミロは恐る恐る振り返る。

「ってシュラーー!?」

話しの本人――シュラがそこにいた。

「俺がどうかしたか?」
「そりゃお前「い、いや……何でも無いんだ!!」
カミュが慌ててミロの言葉を遮る。
「…?用が無いなら俺は帰るぞ?」
「あぁ…呼び止めてすまない」
シュラは訝しみながらもそのまま去っていく。

「……?」
その時、カミュはシュラが紙袋を持っていることに気付いた。
「…あれは……?」

カミュが首を傾げるが、ミロは目を見開いてシュラの背を見ていた。
「……」
「……ミロ?」
どうした?とカミュが声を掛け、漸くミロは我に返る。
「はっ……」
「どうしたんだ?……何か見たのか?」
カミュの言葉に、慌てて首を振る。
「い、いや、お…俺は何も見てない!!」
普通の人なら、今のミロが十分過ぎる程怪しいく見えるが……聖域の天然さんであるカミュは気付く筈もなく
「そうか」
あっさり納得する。
「お、俺も帰るからな……」
「あぁ……」
ギクシャクとした足取りでミロは宝瓶宮を後にする。

――実は、ミロはあの紙袋の中身を見てしまったのだ。

「ま…まさか…奴があんな……」


あんな可愛い猫の縫いぐるみを持って帰ってるなんて!!


それから暫くの間、ミロは天蠍宮から出てこなかったそうだ――

「……」
シュラは自室に帰ると、早速アフロディーテから仕事の報酬としてもらった縫いぐるみを紙袋から取り出しジッと見つめる。
「…可愛い……」
シュラは口元を緩めてそう呟いたそうな――


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