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可愛い恋人の困ったところ

「……」
デスマスクは今、とてつもなく困っていた。

理由は……己の恋人であるアフロディーテにあった。

「…アフロディーテ…?」
「…!!え…!?な、何!?」
「ハァ……今日は映画見に来たんだよな?誘ったのお前だろ?」
「う…うん……」
「…だったら……」


「何でUFOキャッチャーの縫いぐるみを凝視してんだよ!?」


「え、わ、私は別に見てなんか……!」
必死に否定するアフロディーテだが……
「見てたな…しかも物欲しそーな目で」
デスマスクにズバリ言われ、アフロディーテはしゅんとする。
「だ…だって……」
デスマスクは頭を抱えずにはいられない。


何故なら……アフロディーテは、無類の可愛いモノ好きだからである。

デスマスクがその事を知ったのは、つい最近だった。

――それは、アフロディーテの部屋に初めて行った時のことだ。

宮には何度も遊びに行っているが、何故かアフロディーテは頑なに自分を部屋に入れるのを断っていた。
デスマスクは当然、部屋に入れてくれるよう何度も頼んだが……アフロディーテは首を縦に振らなかった。
それでも粘り強く頼むと、やがて「……見ても何も言わないでよ?」という条件付きで部屋に入れたのだ。

そして……デスマスクは言葉を失った。

―部屋には、大小様々な可愛いらしい縫いぐるみが所狭しと置かれていたのだ―

いずれも、アフロディーテが自分で集めたものである。
オマケに……その縫いぐるみ達を家族同然のように可愛がっているのだ。

デスマスクはその時、アフロディーテが可愛いモノ好きだということを知ったのだ。

…他の皆が知っているのかは知らないが……それはさておき

本当ならば二人で映画を見る予定だったのだが、上映時間よりも早く来てしまったので、暇つぶしがてらにゲームセンターに来たのだ。


だが、UFOキャッチャーの前を通りかかった時……デスマスクは後悔した。

―そして冒頭に至る―

「だ…だって……おっきなリ○ックマ……」
「お…お前な……」
申し訳なさそうに顔を伏せるアフロディーテにデスマスクは呆れ顔だ。
「…ごめん……」
「別に謝らなくていーって……」
がしがしと頭を掻きながら、UFOキャッチャーに鎮座しているリ○ックマを見るとアフロディーテに言った。
「仮に手に入れたとして……お前、アレ持って映画見るのか?」
「………」

……沈黙はおそらく肯定だろう。

大の大人がリ○ックマの縫いぐるみを抱き締めて映画を見るとは……何とも言えない光景だ。

溜め息をしつつも、デスマスクは財布を取り出すと、UFOキャッチャーのリ○ックマと向き合う。
「デスマスク……?」
「いーから見てろ」
ぶっきらぼうな口調でUFOキャッチャーを始めるデスマスク。


あろうことか、一回で縫いぐるみは落ちた。


「ホラ、欲しけりゃやるよ」
デスマスクはリ○ックマの縫いぐるみを投げるようにアフロディーテに渡す。
「わ…!?」
「そろそろ行くか、もうすぐ開演時間だろ?」
デスマスクはアフロディーテに背を向けて歩き始めている。


「デスマスク……」
アフロディーテはリ○ックマの縫いぐるみを抱き締めるとデスマスクの背中を追い掛ける。

―そして映画を見終わった後―

「デスマスク、今日はありがとう!」
アフロディーテは花のように愛らしい笑顔をデスマスクに向ける。
「…ま、別のが欲しくなったら言えよ」
映画もそれなりに面白かったしな、とぶっきらぼうに言葉を返す。
「もう……素直じゃないんだから」
そんなデスマスクにクスクスと笑うアフロディーテ。


―双魚宮にまた一つ、アフロディーテの家族が増えた今日このごろ―
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