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旧版:失われし神々の系譜


「前聖戦の…乙女座の黄金聖闘士だと?!」
信じられないと言わんばかりに、ミロが声を荒げる。
「それは…本当なのか……?」
「ふっ……君達を欺いたところで、私には何の利益も無いが」
「そう言い切る証拠はあるのか……?」

怪訝の眼差しを向けながら言ったのはカミュだ。

「証拠、か……」
カミュの言葉にアスミタは薄く笑みを浮かべる。
「ならば、童虎かシオンを連れて来るが良い。今回の聖戦で一度命を落としたとはいえ、童虎は天秤座の聖闘士として、シオンは教皇として、この時代での復活を果たしている筈だ」

アスミタは静かにカミュを見据える。

「二人は何処にいる?水瓶座よ」
「そ、それは……」
有無を言わさないアスミタの口調に、カミュは言葉を詰まらせる。

そんなカミュを尻目に、アスミタは何かを探るように数瞬の間口を閉ざす。



そして……アスミタの発した言葉に、ミロとカミュは驚いた。



「…シオンは聖域にいないようだな……童虎は白羊宮にいるようだが?」
「な……!?」
「何故その事を……!?」


童虎が白羊宮にいる事は、まだ二人とムウしか知らない事だったからだ。




そして……シオンが聖域にいないという事を、その場にいる全員が初めて知った。

「教皇は一体何処に……!?」
「…二人共……老師の身に何が起きたんだ?」
驚くカノンの横で、サガが二人に訊ねた。
「…そ…それは……」




躊躇いがちにカミュは、自分とミロが目の当たりにした光景と、重症を負った童虎を発見した経緯を話した。





「そんな…老師が……!?」
「…………」
サガが瞠目する横で、アスミタは険しい表情を浮かべていた。

「……今から白羊宮へ向かう。手負いの牡羊座では、満足な治療は出来ないだろう」
「な…!?お、おい!!待て貴様!!」

ミロの制止の声をものともせず、アスミタは踵を返す。

「……君達も来たまえ。その方が都合が良い」
「何……!?」
アスミタは僅かに振り返りそう告げると、静かに立ち去った。




「な、何なんだアイツ……!?」
顔をしかめるミロの横でサガが唸るように言った。

「…今は白羊宮に向かおう……老師とムウが心配だ」
「あぁ……急ごう」

カミュがサガの言葉に賛同したその時、


「……私も、行かせてください」


ニケを携えた沙織が、一同の前に進み出た。




「アテナ…!?しかし……!!」
「彼は敵ではありません…それに……」

ニケを握る手に力を込め、沙織は言った。

「私のせいで傷付き倒れた人がいるのに…此処で黙って、見捨てる事はできません」

その眼差しには、哀しみと決意が入り混じっていた。


「…アテナ……」

沙織の意志を感じたのか、サガは僅かにうなだれると釘を刺すようにして言った。

「……分かりました。しかし、決して私達から離れないでください」
「はい…!!」
沙織は力強く頷いた。

「だったら、急いで先代の乙女座に合流するぞ。他の宮にいる奴等も心配だ」
先陣を切ってカノンが教皇の間を後にする。

「だ、だがなぁ……」
「ミロ……」

ミロだけは未だに釈然としない様子だったが、カミュに促される形でカノンの後を追った。


――――





「アテナ…!!ご無事でしたか……!!」
教皇の間を出てすぐ、満身創痍のシュラがデスマスクとアフロディーテに支えられる形で、サガ達に合流した。


「シュラ…!!デスマスクにアフロディーテ……!!貴方達こそ、無事で何よりです……!!」
「まぁ…無事って言えば響きが良いがな……」

沙織の言葉にデスマスクは顔をしかめる。

「……命こそ助かりましたが、敵の侵入を許してしまいました……」

申し訳ありません、と沙織に向かって頭を垂れるアフロディーテの表情は、苦渋の色に染まっていた。

「…いいえ…今回の事は、私にも非があります」

沙織は首を横に振り、三人の前に進み出る。

「三人共、後悔している暇はありません…事態はポセイドンやハーデスの間で起きた聖戦よりも、深刻なものです…今は私達と共に、白羊宮に来てください」
「此処まで来て何でわざわざ下に下りるんだよ……」
「…ふ……どうやら、事の重大さを理解出来ていないようだな」


愚痴を漏らすデスマスクの言葉に答えたのは、アスミタだった。


「重傷を負い意識を失った童虎に、深手を負っている現代の牡羊座…そのような二人を無理やり上に連れて来るよりは、私達が下りた方が、二人にとっては良い筈だが?」
「な……!?」

言葉を失うデスマスクをよそに、アスミタは平然と言い放つ。

「…現代の黄金聖闘士の君達の中で、最も深手を負ったのは牡羊座か……シオンの弟子であれば、そう簡単に死にはしないだろうが、万が一という事も有り得るからな」
「貴様…何を言って……!?」

アスミタの言葉にシュラは瞠目する。


しかし…アスミタはシュラにお構いなしといった様子で、視線を三人の後ろに向けた。



「あぁ……獅子座と射手座も此方に向かっているようだな…彼等とも合流しよう」
「……!?待て!!」

アスミタはシュラの声に聞く耳持たず、という様子で三人の脇を通り抜ける。

「な…何だアイツ……!?」
去り行くアスミタの背中に、デスマスクは嫌悪の眼差しを向ける。

「……あの人の名はアスミタ、私の先代にあたる方だ」
「シャカの……?」

シャカの言葉に目を見開くアフロディーテの横で、シュラが声を上げる。

「シャカの先代の黄金聖闘士という事は、老師や教皇と同期なのだろう?その時代の黄金聖闘士は、確か……」


シュラの言わんとしている事は、誰もが理解している。


――二百数十年前の前聖戦において、生き残った黄金聖闘士は、当時の牡羊座の黄金聖闘士である現教皇シオン、そして天秤座の黄金聖闘士である童虎の二名だけなのだ。



他の黄金聖闘士は皆、聖戦の中で若くして命を散らして逝った……。



聖戦に関する古い資料にも、そういった記述が遺されているものが殆どだ。




「アイツ…何が目的なんだ……?」
「……今は詮索する時ではない。急いで白羊宮に向かうぞ

顔を顰めるデスマスクを窘めるように、サガが歩みを早める。

「ちっ……分かったよ」
わざとらしく溜め息をつくと、デスマスクはサガの背中を追いかけた。


――――





「あ、アテナ……!?」
「サガにお前達まで……!?」

彼等がアイオロスに支えられながら宮を繋ぐ階段を上っていたアイオリアと合流するのに、さほど時間はかからなかった。

「アイオリア……!!もう動いて大丈夫なのか?」
「あぁ…いつまでも寝ているわけにはいかないからな」

ミロの言葉に、アイオリアは頷いてみせると「それより…」とアスミタに剣呑な眼差しを向ける。

「…アイオリア、この人は敵ではない」
アイオリアが言わんとしている事を理解したのか、シャカが素早く間に入る。

「だがシャカ、彼が通った気配は俺もリアも全く感じなかった…彼は一体何者なんだ?」

アイオロスの疑問に答えたのは、今だ信じられない表情をしているサガだった。

「……彼はアスミタ、先代の乙女座の黄金聖闘士……らしい」
「先代の乙女座……!?」
「いちいち説明する時間が惜しい。君達も白羊宮に来たまえ」

アスミタは有無を言わさぬ口調で告げると、そのままアイオリアとアイオロスの横を通り過ぎる。

「…!!ま、待て!!」
「……シャカ以上に癖のある奴だな、アイツ」
珍しくアイオリアが嫌味を含んだ言葉を呟く。

「……だが、すれ違っただけで底知れない小宇宙を感じた」
アイオロスが眉間に皺を寄せる。
「彼が只者ではないのは間違い無いだろう……」
「今は白羊宮に向かおう。彼の話では、ムウが危ないらしい」
「らしい、じゃねぇよ……かなりヤバい」

表情を曇らせているデスマスクが、サガの言葉を遮る。

「此処まで下りても、ムウと老師の小宇宙がほんの少ししか感じねぇ……」
「…それどころか…ムウの小宇宙がどんどん弱まっている……」
「何っ……!?」

険しい表情を浮かべているカミュの言葉に、アイオリアは瞠目する。

「私とミロが白羊宮に到着した時には、ムウは既に深手を負っていたのだ…今の状態で老師の治療を行っていれば…ムウもただでは済まないだろう……」
「そ…そんな……何故そのような状態のムウを残して来た!!」
「ムウの性格は、お前も知っているだろう」

声を荒げるアイオリアを諭すように、カミュが鋭く言う。

あの場にカミュが残ろうとしても、恐らくムウは、無理やりにでもカミュを先に行かせていただろう。

「だ…だが……」
「おいおい、喋っている暇なんかねぇだろ?こんな所で突っ立ってる時間があったら、さっさと先に行こうぜ」

訝しむアイオリアの言葉を、デスマスクが遮った。
「…デスの言う通りだ。今は早く白羊宮に向かおう」
デスマスクの言葉に、アフロディーテが賛同する。
「…分かった……」
二人の説得に、アイオリアは渋々頷いた。





「…早まるな、ムウ……」





誰にも届かない程の声で、シャカは密かにそう呟いた。


――――






苦しそうに胸を上下させている童虎の傍らで、ムウは意を決した表情で静かに己の小宇宙を掌に集中させていた。



元々、小宇宙を使用して傷を癒す術に長けているムウだが…自分も瀕死の重傷を負った状態では、非常に困難な状況だ。



……しかし、童虎の状態は悪化する一途を辿っている。



(…せめて…老師の命だけでも……!!)

己の小宇宙を童虎に込めようとした、その時だった。


「やめたまえ、その状態では満足に童虎を回復できないぞ」
「……!?」

突然背後から声を掛けられ、ムウは慌てて振り返る。


そこには純白の鎧に身を包んだ男性――アスミタが立っていた。


「それどころか、君も命を落としかねない……無謀な事だ」
「…貴方は……?」

アスミタは目を見開くムウを一瞥するが、すぐに童虎に視線を落とす。

「…間に合わなかったか……」
「……?」
殆ど聞き取る事が出来ない程の声で、アスミタは呟いた。

「ムウ!!無事か!?」
「カミュ…!?アテナまで……!?」
沙織の姿を見て、慌てて立ち上がろうとしたムウだが、その場にがくりと膝をついてしまう。


「ムウ、老師……!!」
「……予想以上にダメージを受けていたようだな」
アスミタは眉間に僅かに皺を寄せると、ムウの肩に手を触れる。
「君も、少し休んだ方が良い」

その言葉と共に、ムウの身体は糸が切れた人形のように、その場に崩れる。

「ムウ!!」
すんでの所でシャカがムウを抱えるが、既にムウの意識はなかった。

「貴様何を!!」
「気絶させただけだ」
アスミタは声を荒げるアイオリアにそう言い放つと、両の掌を合わせる。


――ゆっくりと印が結ばれるにつれ、アスミタの小宇宙が高まる。


そして、アスミタの掌で凄まじい光が爆ぜる。




「くっ!?」
「何という小宇宙だ……!!」
アイオリアの横で、アイオロスが息を呑んだ。

小宇宙の質、量共に、今まで感じた事のないレベルのものだったからだ。



――アスミタが印を解くと同時に、光が収束した。

「…な…何が起きたんだ……?」
茫然とするミロの言葉に、シャカが答えた。

「先代は老師とムウに、己の小宇宙を分け与えて回復させたのだ」
「先程の光は…二人同時に小宇宙を送った光だったのか……」
信じられない、といった様子でカミュが呟いた。

「応急処置にすぎない。目覚めたとしても万全の状態ではないだろう」

アスミタはサガ達を見やると言葉を続ける。

「意識を取り戻しても、暫くは安静にさせる必要がある……特に、牡羊座はな」
アスミタは更に言葉を続ける。
「血と共に、かなりの小宇宙が流れ出ているようだ」
「……」
その言葉を聞き、カミュはムウと童虎に視線を向けた。


小宇宙を送られ容体が安定している童虎に比べ、ムウの小宇宙はまだ弱々しいものだった。


(そんな状態で老師を回復しようとしたのか……)



「見かけによらず、大した精神力の持ち主だ。流石はシオンの弟子といったところか」

だが、とアスミタは言葉を続けた。

「現代の聖闘士も随分と質が落ちたものだ…十二宮が突破されたのは当然の結果というべきか」
「なっ……!?」
「貴様…!!その言葉を取り消せ!!」
「落ち着けリア!!」

怒りに拳を震わせ、声を荒げたアイオリアをアイオロスが間に入って止める。

「私には、牡羊座よりもお前達の傷が軽いように見えるが?」
「っ……」
アスミタの鋭い言葉に、アイオリアは言葉を詰まらせる。


……アスミタの言う通り、ムウの負った傷の度合いは、十二宮にいた黄金聖闘士の中で最も酷いと言っても過言ではない。


「…くっ……」

アスミタの言葉に返答できず、アイオリアは項垂れた。

……否、アイオリアだけではない。



実際、突如現れた敵に、十二宮を突破されてしまったのだ。


もしアスミタがあの場に現れなければ……言葉にしたくもない最悪の事態が訪れていただろう。



その場に居る黄金聖闘士は皆、反論する事が出来なった。





――沈黙が、重くのしかかる。




その時だった。





「…ぅ……」
僅かに、童虎が身じろいだのだ。

「……!!」
アスミタが素早く童虎の傍に近寄り膝を付く。
「老師!?」
「静かにしたまえ」
ミロを鋭く制すると、アスミタは静かに童虎の様子を窺う。



やがて、童虎の目がうっすらと開かれる。



「…わし…は……」

童虎は視線を彷徨わせていたが、やがてアスミタの姿を捉えた。

「…アス…ミタ……?わしは…あの世にでもいるのか……?」
「ふっ…何を呆けた事を言っている」

言葉とは裏腹に、アスミタは安心したように笑みを浮かべる。

「君はまだ生きている…私も…今は此処に存在している」
「……?!」

童虎は目を見開くと、勢い良く上半身を起こした。

「な、何故お主が……!?」
「まだ体を動かさない方が良い。それと…少し静かにしたまえ」

アスミタは童虎の横で眠っているムウに視線を向ける。
「怪我人が横にいるからな」
「…!!ムウ……!?」

血の気を失っているムウを見て、童虎は束の間言葉を失った。

「エルシド達を相手に一人で戦ったのだ……無理もないだろう」

そのアスミタの言葉に、童虎は驚愕する。

「エルシドじゃと…!?あ奴も生き返ったのか!?」
「……その口振りだと、やはり他の誰かと交戦したのか」

童虎は力なく頷くと、ミロとカミュに視線を向ける。

「お主達は見たじゃろう?わしが居た場所が、大地が返ったように荒らされた景色を……」
「え、えぇ…酷い光景でした……」

カミュが頷く様子を確認すると、童虎は言葉を続ける。

「あれは先代の牡牛座…ハスガードという者の仕業じゃ。ハスガードは辺り一帯の大地を返す技を使うのじゃ」
「先代の牡牛座……!?」

童虎の言葉に、カミュが目を瞠る。


「…童虎の前にはハスガードが現れたのか……」
アスミタは眉をひそめると、童虎に訊ねる。
「……童虎、シオンは今何処にいる?」

アスミタの言葉に、童虎が浮かべたのは驚愕の表情だった。

「なっ…聖域にいないのか!?」
「…ふむ…シオンは聖域にはいたが、彼等の襲撃とほぼ同時に姿を消した…と考えて良いな……」
童虎の反応を見たアスミタは、顔をしかめながら言葉を発する。

「…ま…まさか…あの連中に……!?」
「…考えたくは無いが……」
青ざめるミロの隣でカミュが唸るように呟いた。

「……アテナ、現代の天馬星座は何処に?牡牛座の小宇宙も感じられないが」

アスミタの言葉に、沙織は戸惑いながらも答える。

「現代の天馬星座…星矢なら、今は日本の私の屋敷にいます」
「牡牛座のアルデバランならば、星矢達の所だ」
沙織の言葉にサガが続いた。

「神々との聖戦が終わり…女神の計らいで、天馬星座を始めとする青銅聖闘士達には、年相応の普通の子供としての生活を送ってもらっている」

だが…と、サガは言葉を続ける。

「……長期の休みには、此方に来る手筈となっているのだ」
「確か…もうすぐ夏休みがあるとか言ってたな」

カノンが眉間に皺を寄せながら言葉を繋ぐ。

「アルデバランには、星矢達の迎えに行ってもらっている。日本との時差があるから、聖域が朝を迎える時にやって来るよう調節をしてもらっているが……」
「……」

言葉を聞くにつれ、アスミタの表情は険しくなってゆく。

「…天馬星座…そうか…奴等が次に狙うとすれば……」
そう呟くと、アスミタはさっと背を向ける。
「アスミタ、何処へ行く!!」
「決まっているだろう。天馬星座の元だ」

童虎の声にアスミタは振り返ると、閉じた瞳で一同を見やる。

「奴等の狙いはアテナと現代の天馬星座だ。アテナが無事となれば、次の狙いは必然と天馬星座となる」
「星矢が……!?」

驚愕するアイオロスに、アスミタは頷いてみせる。

「奴等は必ず現れる。手遅れになる前に、私一人でも天馬星座の元に向かう」
「先代、ならば私も……!!」
同行を申し出るシャカだが、アスミタは首を横に振った。
「君は此処に残るべきだ……牡羊座の治療をしてほしい」
「っ……」

シャカは未だに意識を戻さないムウを見やると、小さく「…わかりました」と頷いた。

シャカはこの襲撃で傷を負っていない、数少ない人物なのだ。

小宇宙の質も、黄金聖闘士の中では最も高い分類に入る為、安定した治療を行う事が出来る。


一番深手を負ったムウの治療を行うには、シャカの力が不可欠である事を、誰もがアスミタの言葉で理解した。

「……アテナ、私に出撃の命令を!!」
その時、拳を握りしめたサガが、沙織の前に進み出た。

「私は他の黄金に比べると軽傷です。この中で満足に動ける私が……!!」
「サガ、俺を忘れていないか?」

アイオロスがサガの肩に手を置きながら、横に並んだ。

「……アテナ、彼の言葉が事実であれば一刻を争います。どうか私達に、出撃の許可を」
「………」

アイオロスとサガの視線を受け、沙織は数秒の沈黙の後に言葉を告げる。

「お願いします…二人共…ですが、必ず生きて帰ってくるのですよ」
「「はっ!!」」
二人は力強く答えた。


「兄さん……」
アイオロスは、不安げな声を上げるアイオリアを安心させるように、すれ違い間際に肩を軽く叩いた。

「…リア、アテナを頼んだぞ」
「……はい!!」

その言葉に安心したように、アイオロスは頷くとアスミタの元へと向かった。


「カノン、この場は任せたぞ」
「お前の心配なんかしないからな?…早く片付けて、さっさと戻ってこいよ?」

サガとカノンは、お互いの拳を軽くぶつけ合う。



「覚悟は出来たか?」
アスミタの言葉に、二人は同時に頷いた。
「…では、行くぞ」

その言葉と同時に、三人は姿を消した。

黄金聖闘士のみが可能とする光速の速さで、星矢達がいる日本へ向かったのだ。



「…サガ…アイオロス……アスミタ……」

沙織は遠ざかる三人の小宇宙を感じながら、両の手を組む。


「…星矢…皆……!!」



そして、遠く離れた天馬星座達の無事を、静かに祈る――
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