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旧版:失われし神々の系譜

――女神アテナによって、神話の時代より続いていた海皇ポセイドン、そして冥王ハーデスとの聖戦に終止符が打たれ、世界に平和が訪れた。


その後、アテナは聖闘士、海闘士、冥闘士問わず、聖戦で命を落とした全ての戦士達を甦らせる事、冥界及び海界の復興の支援を条件にポセイドン、ハーデスと和平協定を結んだ。


三界の復興が着実に進み、平穏な世界が訪れたかに思えた――だが、






―新たな戦いが、まもなく始まろうとしていた―






1.兆し



聖域の少し外れにある聖闘士達の墓地……
その入り口に、花束を抱えている一人の男性がいた。

「ふむ…少し早く来すぎたな」
彼の名はシオン……243年前に起きた、冥王ハーデスとの聖戦で生き残った一人だ。

「……ちゃんとした墓参りは、これが初めてだな」

――遠い昔の記憶の筈なのに、昨日のことのように思い出せる。

「私も童虎も、あの聖戦が終わってから……まともに此処を訪れることが出来なかった」

シオンは抱えた花束に視線を落とす。

―その花束は、前聖戦で命を落としたかつての同士……黄金聖闘士達の墓に供えるものだ。

聖戦が終わり、もう二度と戦いが起きない世界になったので、その報告を兼ねての墓参りだ。

「もう…二百年以上も年月が流れているがな……」
自嘲めいた笑みを浮かべながらシオンは呟いた。

一陣の風が吹き抜け、シオンの髪を弄ぶ。


その時だった――


「っ……!?」
不意に小宇宙を感じ、シオンは視線を上げる。


夜遅い時間なので、他に来るのは童虎だけの筈……だが、今の小宇宙は童虎のものでは無かった。

「誰だ……!!」
周囲を見回し、シオンは身構える。

――やがて、暗がりの中から一人の人影を認め、シオンは絶句した。

「な……!?」
「遅くなって悪かったな、シオン……」

一歩一歩近付いて来るその人物に、やがて月の光が降り注ぐ。
露わにされたその姿にシオンは目を見開いた。

「お前は…!?そんな馬鹿な!?」
信じられない、と言わんばかりのシオンに構わず、現れた人物はシオンに手を差し出す。

「迎えに来たんだ」

シオンはその手から目が離せなかった……否、離したくとも離せないのだ。


「一緒に行こう」
「………」

――その言葉に応じるように、ゆっくりとシオンは手を伸ばす。

その手を取ってはいけない――頭では理解しているが…手が、体が、シオンの意志に反して動く。


そして……シオンの手が微かに触れる。

「っ――!?」

全身に、雷が走るような衝撃が走る。


…シオンの意識は、そこで闇に消えた――



―――


片手で花束を抱えた童虎は、聖闘士の墓地へ向かう最中だった。

「少し遅くなってしもうたか……」

空いてる方の手でバケツを持っている。
ちゃんと墓の手入れも行うべきかと考え、掃除道具の準備をしていたため時間が遅くなってしまったのだ。
急ぎ足で、シオンとの待ち合わせの場所へ行く童虎だが、不意に足を止める。
「む……?」

周りは極めて殺風景な岩場だが……どこからか小宇宙を感じたのだ。

「……誰かおるのか?」
童虎は油断なく周囲を見渡す。


――小宇宙の高まりを、感じた


「ぬっ!?」
とっさに飛び退く童虎、入れ違うように童虎の背後にあった岩が瞬時に粉砕される。
「何者じゃ!?」

童虎の声に応じたのか、音も無く一人の人物が現れる。

「…!?お、お主は……!?」
童虎は驚きを隠せない。

「二百数十年ぶりか?童虎よ」
「ば、馬鹿な…!?お主はあの時死んだ筈じゃ?!…それに……」

童虎の視線はその人物が纏っている『もの』に向けられる。

その人物が纏っているのは――

「黄金聖衣、なのか…それは……?」

そう……あまりにも黄金聖衣に酷似していたのだ。

だが、その色は輝く黄金では無く……血のような紅い輝きを放っている。

「答える必要は無い」

混乱する童虎に手を差し出す。

「一緒に来ないか?他の皆も待っている」
「何じゃと……!?」

童虎は言葉を失う。
もしその言葉が事実なら……

……あの聖戦で、死んだ他の黄金聖闘士も生き返ったということになる。

「一緒に来るんだ、童虎……アテナの聖闘士を辞めて、俺達と」
「っ!?」

童虎は目を見張る。

「何を言っておる?!アテナの聖闘士を辞める、じゃと……!?本気か!?」

その人物は答えない。


童虎は声を荒げる、かつての仲間に――



「答えるんじゃ!!アルデバラン……いや、ハスガード!!」
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