聖闘士達がクトゥルフ始めたようです
カノン「……帰ったぞ」
アフロディーテ「おかえり……大丈夫だったかい?」
カノン「あぁ、お陰様でな(げっそり)」
ミロ「何処に行っていたんだ?」
カノン「アキバにいつもクトゥルフ関係のものを買いに行っている店があってな、そこで新しいクトゥルフの本を買って来たんだ」
サガ「何故新年早々に……」
カノン「…正月休み中にな…海界に行ってソレント達とクトゥルフをやってきたんだが、突発的に白無垢の母の簡易版を俺がキーパリングする事になってな……」
サガ「ほう……?」
カノン「手元にカルトナウが無かったから、記憶を頼りにした少々グダグダな内容になってしまったが……ソレント達から、『クトゥルフらしいクトゥルフを久し振りにやった気がする』と言われてだな(真顔)」
アイオリア「…ポセイドンは一体どのような卓をやっているんだ……?」
カノン「俺が聞きたいorz…だから、俺がもっとキーパリングを重ねて奴等にまともなシナリオをやらせようと思ってな……」
ムウ「そ、そうですか……」
カノン「そういう事だ、この卓が終わっても、いつかまたPLを頼むかもしれん」
ミロ「よく分からんが分かった(キリッ)」
カノン「そう言うと思っていたぞ」
カノン「さぁ、気を取り直して続きを始めるぞ」
アフロディーテ「佐比売党に連絡を取るという事で良いんだよね?」
ムウ「えぇ…その前に、西垣についてなのですが……」
カノン「西垣についてはお前達の好きにして良いぞ?そのまま警察に突き付けても良いし、放置しても良い」
シュラ「……取り敢えず『もうあのような組織と関わらない方が良い』とだけ言っておこうか」
カノン「了解(警察署に連行はしないのか…)…じゃあ、西垣と別れて……すぐに連絡を取るか?」
カミュ「ゲーム内の今の時間は何時だ?」
カノン「うぅむ……何だかんだで昼過ぎぐらいにしておくか。あ、西垣と別れた所で楓は起きるぞ」
ムウ「では、一旦食事にしてから連中に連絡をしましょう」
カノン「(れ、連中……)電話の相手はムウで良いのか?」
ムウ「えぇ」
カノン「…(だろうな)…じゃあ、ざっくり終わらせるぞ…電話の相手は名刺に書かれている杉浦真紀子だ……どんな感じで話すんだ?」
ムウ「西垣に行わせた儀式についての説明を要求します」
カノン「あぁ……じゃあ、杉浦はお前達の事を既に調査済みだったらしく、特に慌てる様子も見せずに素直に非を認めて謝罪してくるぞ」
サガ「西垣経由で私達の事を把握していたという事か……?」
カノン「ぶっちゃけると身内の信興所を通じて探索者達の身元は調査済みだ」
ミロ「うわぁ……」
シュラ「だが、以外だな……てっきり言い訳をして誤魔化すと思っていたが」
カノン「杉浦はその謝罪と楓の今後の扱いについて、会って話したいと持ち出してくるな」
カミュ「…如何にも怪しいが……」
カノン「この話は楓にも同席して欲しいそうだ……場所や日時なんかはお前達に合せるぞ」
ムウ「必ず連れて来なければなりませんか……?」
カノン「可能ならば、といった感じだな。同行させなくても構わないぞ?」
カミュ「大方、私達の警戒を解く為に指示に従うスタンスだろう……場所に関しては、成るべく人の目が多い場所にした方が良いだろう」
カノン(もうやだコイツら)
ムウ「…外出する時はなるべく楓を同行させたいので、楓は連れて行きましょう。場所は…カフェやファミレス辺りでどうです?」
カミュ「良いのではないか?…連中が手段を選ばない輩ならば、人がいてもいなくても同じだろうからな」
カノン「(ほんとにコイツは…)……じゃあ、カフェ的な場所にでもするか?」
ムウ「えぇ。これで場所は決まりましたね……時間は翌日でも良いでしょうか?」
カミュ「そうだな…出来る限り装備を調えた方が良いだろう」
サガ「全員で行くのか?二手に分かれた方が良いと思うのだが……」
カミュ「それもそうだな……サガは待機していてくれ。これ以上SAN値が減ってはカノンの思う壺だ」
カノン「ちっ」
ムウ「サガ関係の事となると分かり易いですね」
カノン「もっと発狂させたいからな(真顔)」
サガ「後で双児宮裏に来なさい」
カノン「だが断る」
ムウ「二手に分かれるとして…どう分けましょうか」
カミュ「ムウには私が同行しよう…後は誰にする?」
シュラ「三人ずつの方がバランスは良いだろうが……」
ミロ「俺はカミュと一緒が良い(きりっ)」
カミュ「仕方無いな……ではミロに同行をしてもらおうか」
シュラ「だが、戦力がミロだけでは不安だ…俺かアイオリアが同行した方が良いんじゃないのか?」
カミュ「…ふむ…今回はアイオリアに同行してもらった方が良いかもしれないな…シュラに比べると、アイオリアの方がSAN値は減っていないだろう?」
シュラ「た、確かにそうだな……」
ムウ「…カノン、盗聴器を使用して、待機している方も話を把握出来るようにしたいのですが」
カノン「…お前の職業探偵だったな…それぐらいなら良いだろう……」
ムウ「では私とカミュとミロとアイオリアでどうです?事務所で待機するのはサガとシュラの二人で……念の為、玄武も待機してもらいましょう」
カノン「(む、玄武の事を覚えていたか)他に準備する事があれば今の内にやっておけよ?」
カミュ「組織という事は、相手がボディーガードを雇って来る可能性もある…人数の指定というものは可能なのか?」
カノン「……まぁ、指定されれば従うだろうが、楓が来るなら最低限、杉浦ともう一人の幹部が追加されるぞ」
カミュ「……二人か」
ムウ「…向こうがどう動くか分かりませんが……二人で来るよう指定しておきましょう。それから、ミロだけ先に店に入って、他人のふりをして待機してもらうというのはどうです?」
ミロ「あ、それ良いな!!」
カミュ「ならば、ミロにはサガ達の連絡係になってもらってはどうだ?スカ○プとイヤホンを使えば、サガと通話も出来るだろう。ス○イプにはチャットのような機能もあるから、ミロは声を出さずに会話が可能の筈だ」
カノン「……もう面倒だ。それやるなら幸運で振れ、成功したら近くの席で他人のふりして座ってスカ○プしてる事にしてやる(頭抱え)」
ミロ「よし……」
〈幸運〉
ミロ(60)→23(成功)
ミロ「成功だ!!(ドヤァ)」
カノン「(幸運成功したから、これも処理しておくか)…ってか、ミロも出目が安定しているな……(再び頭を抱え)」
アフロディーテ「何処かで反動が来なければ良いね」
ミロ「え……」
カノン「じゃあさっさと翌日のカフェから始めるか(若干投げやり)……一つ聞き忘れていた。席は外か?室内か?」
ムウ「(聞いてくるという事は…どの道変わらないという事でしょうね…)……外でお願いします」
カミュ「そうだ、常に心理学を振れるように警戒しておく事は可能か?」
カノン「へいへい…心理学はムウとサガと…え、アイオリアとカミュ以外全員持ってるのか…まあ良い。じゃあ早速ロールプレイやるぞ」
☆ ☆ ☆
場所は日比谷のとあるカフェ――
ムウ達は思い思いに飲み物を頼み、佐比売党員の到着を待っていた。
カミュは周囲に気付かれないよう、ある席に視線を向ける。
斜め前にあたる席には、ミロが座っている。
カミュの視線に気付いたのか、ミロが僅かに振り返るが、すぐに視線はスマホに落とした。
操作している様子を見ると、事務所にいるサガと連絡のやり取りをしているのだろう。
「……っ」
その時、横でムウが息を呑む気配を感じた。
「?どうした?」
カミュの問いに、ムウは声で答える。
「……あれを」
「……!!」
ムウに促され、視線を向けたカミュは、思わず目を見開いた。
「な、何だ…あれは……」
アイオリアが、思わずそう呟いた。
そう言うのも仕方が無い……その風貌は、明らかに異様だった。
ビジネススーツに身を包み、やや派手な化粧をした女性は、西垣の言っていた杉浦という女性で間違い無いだろう。
――だが、その横にいた人物が問題だった。
その人物は、夏であるにもかかわらず、丈の長いコートを着込み、フードまで被っている。
極め付きは、顔にあった。
西垣も所持していた、目の無い能面―白無垢の仮面を付けていたのだ。
道行く人々も、一度すれ違うが再び振り返る者が殆どだった。
☆ ☆ ☆
ミロ「ちょ、ちょっと、待って!!コイツ絶対黒幕だろう!?」
カミュ「明らかに怪しすぎる(真顔)」
ムウ「アイオリア、殴って構いませんよ」
アイオリア「え、なっ!?」
サガ「い、いや、まだ黒幕と決まった訳では……(あわあわ)」
シュラ「絶対黒幕だろう…この怪しさ……」
カノン「(やべぇ、コイツらの混乱っぷりwwww)つ、続ける…と言いたいが…そうだな…ミロ、目星を振ってくれ」
ミロ「え、俺目星初期値……」
カノン「良いから良いから、初期値で成功したら良い事教えてやる(どうせ失敗だろうからな)」
〈目星〉
ミロ(25)→10(成功)
ミロ「成功した!!」
カミュ「ダイスの女神に好かれているな(なでなでもふもふ)」
ミロ「どさくさまぎれにもふもふしないで」
カノン「なにい!?…く…くそ…仕方あるまい。ミロ、これを渡そう(っメモ)」
ミロ「何だ?……ふぁ!?」
カミュ「どうした?」
ミロ「ちょ、カノン、これ、カミュにメールで知らせる事出来るか!?」
カノン「あぁ、出来るぞ」
ミロ「じゃあメールする!!あと、サガにも一応伝えるぞ!!」
サガ「な、何があったというのだ……?」
カノン「じゃあ、全員にこの情報が行きわたるな」
・杉浦はボディーガードとして屈強な佐比売党員を探索者の数プラス一人連れてくる。
・人数を指定されている場合は、近くに身を潜めさせて、何かあったらすぐにやってくるようにと指示されている。
・今回、ミロは除外されているのでムウ、アイオリア、カミュの三人しか場に居ないと判断した杉浦は店の周囲と店内に合計四人待機させている。
PL一同『………』
アフロディーテ「流石はカミュとムウだね、推測が見事に当たっていたよ」
ミロ「…ま、まさか、さっきの幸運って、ばれるかどうかの判定でもあったのか?」
カノン「まぁそういう事だ。失敗していたら人数をもう一人追加する予定だった」
ムウ「此方から暴力的な事を仕掛けなければ良いだけです」
カミュ「そうだな…此方には楓がいる以上、向こうも下手に行動は出来ない筈だ」
カノン「もう良いか?続けるぞ~」
☆ ☆ ☆
『お待たせして申し訳ありません。この度は、我々の面会に応じてくれて感謝します』
椅子に座り、白無垢の仮面を付けた人物が、ムウ達に一礼をしてくる。
「…貴方達が、佐比売党の方ですか?」
「そうです。ご存じでしょうが、私は佐比売党に所属する弁護士の杉浦と申します」
毅然とした態度で、杉浦も軽く一礼をした。
『私は…そうだな…電人Nとでも呼んで下さい』
電人Nと名乗った者は、西垣の供述した通り、声がボイスチェンジャーで通されたような、ノイズがかった機械的な声だ。
「……約束通り、私達の質問に答えていただきますよ?」
『勿論…我々が知っている事は全て話すつもりです』
不安そうにムウの手を握っている楓を安心させるように、ムウはそっと楓の手を握り返した。
「…単刀直入に聞きます。西垣に行わせた儀式は、一体何の意味があるのです?彼女は繭と呼ばれるものの場所を聞き出そうとしたらしいですが」
『あの儀式は、とても重大な事です。繭とはその少女…楓の精神を蝕んでいる元凶の事を言います』
電人Nは、抑揚の無い声で続ける。
『繭という名は、我々の間で呼んでいる元凶の名称です。その正体は我々にも分かりませんが、繭は人間をテレパシーで操る事が出来るのです』
「…楓の記憶が無くなったのは、そのテレパシーの影響だというのですか?」
『恐らくは…何故繭が楓を狙っているのか、理由も分かっていませんが、楓を救う為にも我々はその繭の場所を特定し、封印を行いたいのです』
「封印……?」
ムウの横で眉を顰めるカミュだが、電人Nはすぐに答える。
『封印と言っても、我々のみが知る聖域にその繭を安置するのです。場所は…残念ですが、機密事項につきお答えする事が出来ません』
「…もし封印しなかった場合、何が起きるというのだ?」
腕を組みながら、カミュが静かに問い掛ける。
『憶測ですが…楓だけでなく、この日本に大きな災いが起きるでしょう』
「災い…ですか?」
いまいち想像出来ない、といった様子でムウが首を傾げる。
『貴方達も見た筈です。室井細胞…あれは、繭と深く関わっており、楓の意思に反応し、彼女を守ろうと活動するのです』
その言葉に、ムウはこれまでに遭遇した黒い泥のようなものを思い出した。
(言われてみれば、確かに…あの泥は楓を守ろうとしているように見えましたが……)
『御津門大学に保管していた室井細胞は、恐らく楓が現れた事により活性化し、何処かへ移動したのでしょう……』
「貴方達は、その室生細胞についても何か知っているのか?」
カミュの質問に、電人Nは何処か申し訳なさそうな声色で答えた。
『残念ですが…我々が把握している事は、室井細胞は我々が知っている生物とは全く異なる生命体であるという事だけです』
電人Nはテーブルの上に、組んだ手を静かに置いた。
『遠い宇宙から飛来したのか…あるいは何者かの手で創造された新種の生命なのか…それを解明する為に、西垣に研究の協力を行ってもらっていたのです』
「それで…室井細胞の研究の代償に、彼女に経済援助を行ったという事ですか」
ムウの言葉に、電人Nは頷くと言葉を続ける。
『先程言った災いとは、その活性化した室井細胞による大量殺戮かもしれません…あるいは、もっと大きな天変地異かもしれません…申し訳ありませんが、何が起きるか我々にも全く想像が付かないのです』
「…ですが、封印するにしろ、その繭の場所は結局分かっていないのでしょう?」
冷ややかなムウの言葉を受け、電人Nは静かに『そうです』と答える。
『繭の場所は、テレパシーを受けている楓にしか分からないのです。彼女から繭の場所を聞き出す為とはいえ、無礼な真似をして申し訳ありません……』
「西垣は、繭の場所を聞き出せなかったと仰っていましたが?」
『…えぇ…繭の場所を聞き出すには、西垣では駄目だったのでしょう……』
電人Nは仮面越しに、ムウに視線を向ける。
『繭の場所を知るには、楓が一番懐いている貴方の協力が必要なのです』
「……それは、私と楓が貴方達に同行しろと、仰いたいのですか?」
サングラスを掛けていても分かる程に、今のムウの視線はとても冷ややかなものだ
『可能であれば…楓は我々で預かりたいですね。楓のような病状に関する治療のノウハウを心得ています』
☆ ☆ ☆
カノン「……アイオリア、何か喋ってくれ。このロールプレイ中地蔵と化しているぞ」
アイオリア「じ、じぞう?」
カノン「場にいるけど地蔵のように何も話さない奴の事を言うんだよ」
アイオリア「だ、だがカノン…この二人に割って入る隙が無いんだが……」
カノン「それには激しく同意する(真顔)」
ムウ「それよりカノン…Nという者の言葉を聞いて、楓は何ともないのですか……?」
カノン「察しが良いなムウよ。電人Nの言葉を聞いた瞬間、楓が泣きそうな表情をするぞ」
ミロ「えっ」
ムウ「不味いですね……」
カノン「そうだな……アイオリアとカミュとムウで聞き耳を頼む」
アイオリア「き、聞き耳だな」
〈聞き耳〉
ムウ(55)→86(失敗)
アイオリア(85)→64(成功)
カミュ(25)→17(成功)
カミュ「(ドヤッ)」
カノン「ちっ…初期値で成功か」
カミュ「だが、この場合は成功しない方が良い気がするのだが」
カノン「まぁ、先に結果だ。成功者には、自分達の方に向かってくる羽音が聞こえるぞ」
ムウ「羽音…まさか……」
アイオリア「シュラが戦ったあの烏か……!?」
カノン「じゃあ続きだな(ニヤニヤ)」
☆ ☆ ☆
「や…やだ……」
「楓……っ!!」
ありったけの力でムウの手を強く握り、楓は震える声で呟いた。。
だが、その呟きは、はっきりとその場にいる者の耳に届く。
「おかあさんとはなれるのは…いやなの……!!」
ムウが楓を落ち着かせようと抱き上げようとした、その時だった。
「…!!ムウ!!」
アイオリアとカミュが立ち上がり、ムウと楓を守るように周囲を警戒する。
「……!?」
二人の様子に、ムウも楓を抱き締めながら、周囲を見渡した。
「きゃあああ!!」
「っ!?」
突如響いた悲鳴に、その場にいた全員が悲鳴がした方向を見やる。
道行く人々に激突しそうになりながら、烏が此方に向かっている様子が見えた。
だが…ムウとカミュには、見覚えがある。
御津門大学や、昨日に公園で出現した、あの黒い泥の烏が、自分達の方に真っ直ぐ目掛けて凄まじい速さで飛来してきたのだ。
☆ ☆ ☆
カノン「では、烏を目撃した事によるSAN値チェックといこうか(にっこり)」
ミロ「で、出たあああああ!!」
ムウ「やはり出ましたか……」
カノン「成功で1、失敗で1D4の喪失だ……あ」
ムウ「どうしました?」
カノン「ムウは大学で烏と遭遇して3喪失しているんだったな」
ムウ「あぁ、確かにそうですね」
カノン「実は、恐ろしさに慣れるというルールがあってな…同じ神話生物に遭遇し続けて、喪失した正気度の合計が、その神話生物を見て失う最大値に達したらそれ以上減らないんだ…ただ、ある程度の時間を過ぎたら無効になるがな」
ムウ「という事は…烏のSAN値喪失の最大値は4ポイントでしたよね?以前3喪失したので…今回は成功失敗関係無く1ポイントしか減らないという事ですか?」
カノン「そういう事になるな…ただし、このセッション内での間だけだからな。別のシナリオでこの烏に遭遇した時はまた同じようにSAN値チェックをする事になるぞ」
ムウ「分かりました」
カミュ「私も大学と公園で遭遇しているから…失敗しても2ポイントしか減らないという事になるな」
カノン「ともかく、SAN値チェックだ」
ミロ「お、俺も……?」
カノン「当然だろう(にっこり)」
〈SAN値チェック〉
ムウ(72)→71(烏を見た際の上限に満たすので自動で1減少)
アイオリア(75)→49(成功)
ミロ(60)→94(失敗)
カミュ(83)→73(成功)
ミロ「うわああああ!!」
カミュ「ミロだけ失敗か」
カノン「成功は1、失敗は1D4の減少だからな」
ミロ「こ、これで少ない数値を出せば良いだけの事……(ころころ)」
カノン「ミロ、固まったがどうした?」
カミュ「……カノン、最大値の4が出た」
カノン「まじかよwwwwwww」
ミロ「うわあああああ!!」
カノン「い、良いじゃないかwwwこれでミロはもう烏を見ても動じないぞwwww」
ミロ「嬉しくねええええええ!!」
カノン「安心しろ、まだ続きがある」
全員『……え』
☆ ☆ ☆
突如飛来した烏に、カフェの周囲が騒然とする。
が、その時、電人Nがすっと立ち上がり、徐に手袋を外した。
だが…そこから覗く電人Nの手は、ゴム手袋でもしているかのように、黒くヌラヌラと光沢を放っている。
その気配を感じたのか、烏はくわっと口を開きながら、電人Nに目掛けて突撃してくる。
だが、電人Nは動じる事なく…あろうことか、烏を鷲掴みにした。
そして――烏は、袖に吸い込まれるように消えていった。
☆ ☆ ☆
カノン「さぁ、四人はアイデアロールを頼む」
カミュ「…これは、失敗した方が良いパターンだ」
ミロ「う、うぅ……」
〈アイデア〉
ムウ(85)→92(失敗)
アイオリア(70)→71(失敗)
ミロ(60)→79(失敗)
カミュ(90)→37(成功)
ミロ「カミュううううううう!!」
カミュ「予感はしていた」
カノン「カミュだけ成功か……じゃあ、カミュは『不定形の烏が、手品でも何でもなく、電人Nの体に吸収された』事に気付いてしまったぞ」
カミュ「やはりそうか……」
カノン「さぁ、この光景を見たお前達は追加でSAN値チェックだ♪」
ミロ「うわああああ!!」
カノン「アイデアに失敗した奴は成功で1、失敗で1D4、アイデアに成功したカミュは成功で1、失敗で1D4+1の喪失だ」
〈SAN値チェック〉
ムウ(71)→86(失敗)
アイオリア(74)→92(失敗)
ミロ(56)→73(失敗)
カミュ(82)→34(成功)
カミュ以外の全員『………』
カミュ「(ドヤァ)」
カノン「ダイズの女神が降臨しやがった……三人は1D4で振れ」
ムウ「カミュのオリハルコンメンタル…(ころころ)…3です」
アイオリア「(ころころ)……1だ」
ミロ「(ころころ)2だ!!」
カノン「アイオリアも固いな……」
アフロディーテ「ムウのSAN値が地道に削れているね…発狂はしていないけど」
ムウ「私よりミロの方が危ないと思いますが」
ミロ「(;ω;)」
カノン「安心しろ、優先順位はサガの方が上だ」
サガ「どういう意味かな?」
シュラ「……カノン、続きは?」
カノン「おっと、そうだった……その前に、ミロ以外の連中で聞き耳頼む」
ムウ「聞き耳ですか?」
〈聞き耳〉
ムウ(55)→20(成功)
アイオリア(85)→33(成功)
カミュ(25)→42(失敗)
カノン「(この結果を踏まえて……)じゃあ、ロールプレイの続きといくか」
☆ ☆ ☆
『まさしく、白無垢の巫女……実に八十年ぶりの再会だ』
電人Nは何事も無かったかのように手袋をはめながら、何処か満足げにそう呟いた。
「この子が、白無垢の巫女……」
電人Nの言葉を聞き、杉浦も感激したような表情で楓を見やる。
(白無垢の巫女……?)
二人の呟きに、楓を抱き締めながらムウは眉を顰める。
「どういう意味だ?」
楓をあやすムウの隣で、アイオリアは怪訝そうな表情を浮かべながら二人に問い詰める。
『…えぇ…過去に、佐比売党が同じような少女に出会い、保護をした記録があり、治療を行った事があるのです』
「白無垢の巫女、という言葉はどういう意味があるのです?」
『大した意味はありませんよ……』
ところで、と電人Nは言葉を続ける。
『楓は貴方達が面倒を見るという…事で宜しいのですか?』
「えぇ…我々が楓の面倒を見ます」
楓を抱き締めながら、ムウは電人Nを射貫くように視線を向ける。
『…分かりました…もし、楓が繭の場所を思い出した時は、我々に連絡をしてもらえませんか?』
「……分かりました」
少しの沈黙があったが、ムウは首を縦に振った。
「その代わり、繭の場所が分かるまで、我々には関わらないでもらえませんか?」
『…良いでしょう』
そのムウの提案に、電人Nは了承をした。
『これだけは言わせてください……楓の症状を悪化させない為にも、彼女を外へ出さないようにしてください』
「室内で安静にした方が良いという事なのか?」
腕を組みながら、カミュが訊ねる。
『そうです。狭い室内にいた方が、彼女の精神は安定します』
「…今日のように、外に連れ出さない方が良いのですか?」
『えぇ。外に出さずに、室内にいた方が症状を緩和出来るのです』
☆ ☆ ☆
カノン(此処で心理学を持ってる奴は全員…本当に人数多いな……)
〈心理学(結果はPLには分からない)〉
ムウ(85)→08(成功)
サガ(85)→100(ファンブル!!)
ミロ(55)→58(失敗)
シュラ(75)→26(成功)
カノン「ぶふぁ!!」
アイオリア「どうしたカノン!?」
カノン「な、なんでもないwwwwww」
サガ「その顔は絶対何かあった顔だ」
カノン「すまん、正直に白状しよう。心理学を振らせてもらった」
カミュ「誰かファンブルでも出したのか?」
カノン「その通りだwwww結果をこれから言うから察してくれwwwww」
ムウ「わ、分かりました」
カノン「ムウと、盗聴器越しに聞いていたシュラは、電人Nが楓を外に出さないうようにする事に固執しているように感じたな」
シュラ「…楓を外に連れ出す事が、相手にとって都合が悪いという事なのか?」
ムウ「そうかもしれませんね……」
カノン「……で、サガ」
サガ「……ファンブルを出したのは私か」
カノン「突然空腹に見舞われて飯の事で頭がいっぱいになるな」
ミロ「ぶふっ!!」
サガ「処理が雑だな」
カノン「こんなのしか思い浮かばないんだよwwwww」
アフロディーテ「これで二人との対談は終了になるけど、他に何か聞きたい事はあるかい?」
シュラ「結局、佐比売党というのはどういう組織なんだ?」
カノン「シナリオ終了すれば正体は教えるが、今の段階ではお前達が調べたような事しか教えてくれないぞ」
シュラ「む…そうか……」
ムウ「私はもう無いですが……」
カミュ「そうだな…私ももう無いな」
アイオリア「俺も特には……」
カノン「じゃあ、佐比売党の連中とはこれでお別れだな……今回はこれで区切るか」
アフロディーテ「次は翌日からスタートだね」
ムウ「了解しました」
カノン「これで一気に進んだようなものだ……あと三分の一ぐらいで終わるぞ」
ミロ「俺のSAN値大丈夫かな……」
カノン「今の内から心配していると、ラスボスと遭遇した時に色々持たないぞ」
ミロ「えっ」
カノン「俺達はまた席を外させてもらうぞ。アフロディーテと今後の流れを確認してくる」
ミロ「……ラスボスって電人じゃないの?ってあれ、カミュは?」
ムウ「…ミロ…時計をご覧なさい」
ミロ「………あ」
アイオリア「…だから先程光速で退場したのか」
シュラ「……シベリア滞在か」
サガ「…仕方あるまい…師弟水入らずで過ごしてもらおう……」
(支部に上げた日がカミュの誕生日でした)
カミュ誕生日おめでとう!!
アフロディーテ「おかえり……大丈夫だったかい?」
カノン「あぁ、お陰様でな(げっそり)」
ミロ「何処に行っていたんだ?」
カノン「アキバにいつもクトゥルフ関係のものを買いに行っている店があってな、そこで新しいクトゥルフの本を買って来たんだ」
サガ「何故新年早々に……」
カノン「…正月休み中にな…海界に行ってソレント達とクトゥルフをやってきたんだが、突発的に白無垢の母の簡易版を俺がキーパリングする事になってな……」
サガ「ほう……?」
カノン「手元にカルトナウが無かったから、記憶を頼りにした少々グダグダな内容になってしまったが……ソレント達から、『クトゥルフらしいクトゥルフを久し振りにやった気がする』と言われてだな(真顔)」
アイオリア「…ポセイドンは一体どのような卓をやっているんだ……?」
カノン「俺が聞きたいorz…だから、俺がもっとキーパリングを重ねて奴等にまともなシナリオをやらせようと思ってな……」
ムウ「そ、そうですか……」
カノン「そういう事だ、この卓が終わっても、いつかまたPLを頼むかもしれん」
ミロ「よく分からんが分かった(キリッ)」
カノン「そう言うと思っていたぞ」
カノン「さぁ、気を取り直して続きを始めるぞ」
アフロディーテ「佐比売党に連絡を取るという事で良いんだよね?」
ムウ「えぇ…その前に、西垣についてなのですが……」
カノン「西垣についてはお前達の好きにして良いぞ?そのまま警察に突き付けても良いし、放置しても良い」
シュラ「……取り敢えず『もうあのような組織と関わらない方が良い』とだけ言っておこうか」
カノン「了解(警察署に連行はしないのか…)…じゃあ、西垣と別れて……すぐに連絡を取るか?」
カミュ「ゲーム内の今の時間は何時だ?」
カノン「うぅむ……何だかんだで昼過ぎぐらいにしておくか。あ、西垣と別れた所で楓は起きるぞ」
ムウ「では、一旦食事にしてから連中に連絡をしましょう」
カノン「(れ、連中……)電話の相手はムウで良いのか?」
ムウ「えぇ」
カノン「…(だろうな)…じゃあ、ざっくり終わらせるぞ…電話の相手は名刺に書かれている杉浦真紀子だ……どんな感じで話すんだ?」
ムウ「西垣に行わせた儀式についての説明を要求します」
カノン「あぁ……じゃあ、杉浦はお前達の事を既に調査済みだったらしく、特に慌てる様子も見せずに素直に非を認めて謝罪してくるぞ」
サガ「西垣経由で私達の事を把握していたという事か……?」
カノン「ぶっちゃけると身内の信興所を通じて探索者達の身元は調査済みだ」
ミロ「うわぁ……」
シュラ「だが、以外だな……てっきり言い訳をして誤魔化すと思っていたが」
カノン「杉浦はその謝罪と楓の今後の扱いについて、会って話したいと持ち出してくるな」
カミュ「…如何にも怪しいが……」
カノン「この話は楓にも同席して欲しいそうだ……場所や日時なんかはお前達に合せるぞ」
ムウ「必ず連れて来なければなりませんか……?」
カノン「可能ならば、といった感じだな。同行させなくても構わないぞ?」
カミュ「大方、私達の警戒を解く為に指示に従うスタンスだろう……場所に関しては、成るべく人の目が多い場所にした方が良いだろう」
カノン(もうやだコイツら)
ムウ「…外出する時はなるべく楓を同行させたいので、楓は連れて行きましょう。場所は…カフェやファミレス辺りでどうです?」
カミュ「良いのではないか?…連中が手段を選ばない輩ならば、人がいてもいなくても同じだろうからな」
カノン「(ほんとにコイツは…)……じゃあ、カフェ的な場所にでもするか?」
ムウ「えぇ。これで場所は決まりましたね……時間は翌日でも良いでしょうか?」
カミュ「そうだな…出来る限り装備を調えた方が良いだろう」
サガ「全員で行くのか?二手に分かれた方が良いと思うのだが……」
カミュ「それもそうだな……サガは待機していてくれ。これ以上SAN値が減ってはカノンの思う壺だ」
カノン「ちっ」
ムウ「サガ関係の事となると分かり易いですね」
カノン「もっと発狂させたいからな(真顔)」
サガ「後で双児宮裏に来なさい」
カノン「だが断る」
ムウ「二手に分かれるとして…どう分けましょうか」
カミュ「ムウには私が同行しよう…後は誰にする?」
シュラ「三人ずつの方がバランスは良いだろうが……」
ミロ「俺はカミュと一緒が良い(きりっ)」
カミュ「仕方無いな……ではミロに同行をしてもらおうか」
シュラ「だが、戦力がミロだけでは不安だ…俺かアイオリアが同行した方が良いんじゃないのか?」
カミュ「…ふむ…今回はアイオリアに同行してもらった方が良いかもしれないな…シュラに比べると、アイオリアの方がSAN値は減っていないだろう?」
シュラ「た、確かにそうだな……」
ムウ「…カノン、盗聴器を使用して、待機している方も話を把握出来るようにしたいのですが」
カノン「…お前の職業探偵だったな…それぐらいなら良いだろう……」
ムウ「では私とカミュとミロとアイオリアでどうです?事務所で待機するのはサガとシュラの二人で……念の為、玄武も待機してもらいましょう」
カノン「(む、玄武の事を覚えていたか)他に準備する事があれば今の内にやっておけよ?」
カミュ「組織という事は、相手がボディーガードを雇って来る可能性もある…人数の指定というものは可能なのか?」
カノン「……まぁ、指定されれば従うだろうが、楓が来るなら最低限、杉浦ともう一人の幹部が追加されるぞ」
カミュ「……二人か」
ムウ「…向こうがどう動くか分かりませんが……二人で来るよう指定しておきましょう。それから、ミロだけ先に店に入って、他人のふりをして待機してもらうというのはどうです?」
ミロ「あ、それ良いな!!」
カミュ「ならば、ミロにはサガ達の連絡係になってもらってはどうだ?スカ○プとイヤホンを使えば、サガと通話も出来るだろう。ス○イプにはチャットのような機能もあるから、ミロは声を出さずに会話が可能の筈だ」
カノン「……もう面倒だ。それやるなら幸運で振れ、成功したら近くの席で他人のふりして座ってスカ○プしてる事にしてやる(頭抱え)」
ミロ「よし……」
〈幸運〉
ミロ(60)→23(成功)
ミロ「成功だ!!(ドヤァ)」
カノン「(幸運成功したから、これも処理しておくか)…ってか、ミロも出目が安定しているな……(再び頭を抱え)」
アフロディーテ「何処かで反動が来なければ良いね」
ミロ「え……」
カノン「じゃあさっさと翌日のカフェから始めるか(若干投げやり)……一つ聞き忘れていた。席は外か?室内か?」
ムウ「(聞いてくるという事は…どの道変わらないという事でしょうね…)……外でお願いします」
カミュ「そうだ、常に心理学を振れるように警戒しておく事は可能か?」
カノン「へいへい…心理学はムウとサガと…え、アイオリアとカミュ以外全員持ってるのか…まあ良い。じゃあ早速ロールプレイやるぞ」
☆ ☆ ☆
場所は日比谷のとあるカフェ――
ムウ達は思い思いに飲み物を頼み、佐比売党員の到着を待っていた。
カミュは周囲に気付かれないよう、ある席に視線を向ける。
斜め前にあたる席には、ミロが座っている。
カミュの視線に気付いたのか、ミロが僅かに振り返るが、すぐに視線はスマホに落とした。
操作している様子を見ると、事務所にいるサガと連絡のやり取りをしているのだろう。
「……っ」
その時、横でムウが息を呑む気配を感じた。
「?どうした?」
カミュの問いに、ムウは声で答える。
「……あれを」
「……!!」
ムウに促され、視線を向けたカミュは、思わず目を見開いた。
「な、何だ…あれは……」
アイオリアが、思わずそう呟いた。
そう言うのも仕方が無い……その風貌は、明らかに異様だった。
ビジネススーツに身を包み、やや派手な化粧をした女性は、西垣の言っていた杉浦という女性で間違い無いだろう。
――だが、その横にいた人物が問題だった。
その人物は、夏であるにもかかわらず、丈の長いコートを着込み、フードまで被っている。
極め付きは、顔にあった。
西垣も所持していた、目の無い能面―白無垢の仮面を付けていたのだ。
道行く人々も、一度すれ違うが再び振り返る者が殆どだった。
☆ ☆ ☆
ミロ「ちょ、ちょっと、待って!!コイツ絶対黒幕だろう!?」
カミュ「明らかに怪しすぎる(真顔)」
ムウ「アイオリア、殴って構いませんよ」
アイオリア「え、なっ!?」
サガ「い、いや、まだ黒幕と決まった訳では……(あわあわ)」
シュラ「絶対黒幕だろう…この怪しさ……」
カノン「(やべぇ、コイツらの混乱っぷりwwww)つ、続ける…と言いたいが…そうだな…ミロ、目星を振ってくれ」
ミロ「え、俺目星初期値……」
カノン「良いから良いから、初期値で成功したら良い事教えてやる(どうせ失敗だろうからな)」
〈目星〉
ミロ(25)→10(成功)
ミロ「成功した!!」
カミュ「ダイスの女神に好かれているな(なでなでもふもふ)」
ミロ「どさくさまぎれにもふもふしないで」
カノン「なにい!?…く…くそ…仕方あるまい。ミロ、これを渡そう(っメモ)」
ミロ「何だ?……ふぁ!?」
カミュ「どうした?」
ミロ「ちょ、カノン、これ、カミュにメールで知らせる事出来るか!?」
カノン「あぁ、出来るぞ」
ミロ「じゃあメールする!!あと、サガにも一応伝えるぞ!!」
サガ「な、何があったというのだ……?」
カノン「じゃあ、全員にこの情報が行きわたるな」
・杉浦はボディーガードとして屈強な佐比売党員を探索者の数プラス一人連れてくる。
・人数を指定されている場合は、近くに身を潜めさせて、何かあったらすぐにやってくるようにと指示されている。
・今回、ミロは除外されているのでムウ、アイオリア、カミュの三人しか場に居ないと判断した杉浦は店の周囲と店内に合計四人待機させている。
PL一同『………』
アフロディーテ「流石はカミュとムウだね、推測が見事に当たっていたよ」
ミロ「…ま、まさか、さっきの幸運って、ばれるかどうかの判定でもあったのか?」
カノン「まぁそういう事だ。失敗していたら人数をもう一人追加する予定だった」
ムウ「此方から暴力的な事を仕掛けなければ良いだけです」
カミュ「そうだな…此方には楓がいる以上、向こうも下手に行動は出来ない筈だ」
カノン「もう良いか?続けるぞ~」
☆ ☆ ☆
『お待たせして申し訳ありません。この度は、我々の面会に応じてくれて感謝します』
椅子に座り、白無垢の仮面を付けた人物が、ムウ達に一礼をしてくる。
「…貴方達が、佐比売党の方ですか?」
「そうです。ご存じでしょうが、私は佐比売党に所属する弁護士の杉浦と申します」
毅然とした態度で、杉浦も軽く一礼をした。
『私は…そうだな…電人Nとでも呼んで下さい』
電人Nと名乗った者は、西垣の供述した通り、声がボイスチェンジャーで通されたような、ノイズがかった機械的な声だ。
「……約束通り、私達の質問に答えていただきますよ?」
『勿論…我々が知っている事は全て話すつもりです』
不安そうにムウの手を握っている楓を安心させるように、ムウはそっと楓の手を握り返した。
「…単刀直入に聞きます。西垣に行わせた儀式は、一体何の意味があるのです?彼女は繭と呼ばれるものの場所を聞き出そうとしたらしいですが」
『あの儀式は、とても重大な事です。繭とはその少女…楓の精神を蝕んでいる元凶の事を言います』
電人Nは、抑揚の無い声で続ける。
『繭という名は、我々の間で呼んでいる元凶の名称です。その正体は我々にも分かりませんが、繭は人間をテレパシーで操る事が出来るのです』
「…楓の記憶が無くなったのは、そのテレパシーの影響だというのですか?」
『恐らくは…何故繭が楓を狙っているのか、理由も分かっていませんが、楓を救う為にも我々はその繭の場所を特定し、封印を行いたいのです』
「封印……?」
ムウの横で眉を顰めるカミュだが、電人Nはすぐに答える。
『封印と言っても、我々のみが知る聖域にその繭を安置するのです。場所は…残念ですが、機密事項につきお答えする事が出来ません』
「…もし封印しなかった場合、何が起きるというのだ?」
腕を組みながら、カミュが静かに問い掛ける。
『憶測ですが…楓だけでなく、この日本に大きな災いが起きるでしょう』
「災い…ですか?」
いまいち想像出来ない、といった様子でムウが首を傾げる。
『貴方達も見た筈です。室井細胞…あれは、繭と深く関わっており、楓の意思に反応し、彼女を守ろうと活動するのです』
その言葉に、ムウはこれまでに遭遇した黒い泥のようなものを思い出した。
(言われてみれば、確かに…あの泥は楓を守ろうとしているように見えましたが……)
『御津門大学に保管していた室井細胞は、恐らく楓が現れた事により活性化し、何処かへ移動したのでしょう……』
「貴方達は、その室生細胞についても何か知っているのか?」
カミュの質問に、電人Nは何処か申し訳なさそうな声色で答えた。
『残念ですが…我々が把握している事は、室井細胞は我々が知っている生物とは全く異なる生命体であるという事だけです』
電人Nはテーブルの上に、組んだ手を静かに置いた。
『遠い宇宙から飛来したのか…あるいは何者かの手で創造された新種の生命なのか…それを解明する為に、西垣に研究の協力を行ってもらっていたのです』
「それで…室井細胞の研究の代償に、彼女に経済援助を行ったという事ですか」
ムウの言葉に、電人Nは頷くと言葉を続ける。
『先程言った災いとは、その活性化した室井細胞による大量殺戮かもしれません…あるいは、もっと大きな天変地異かもしれません…申し訳ありませんが、何が起きるか我々にも全く想像が付かないのです』
「…ですが、封印するにしろ、その繭の場所は結局分かっていないのでしょう?」
冷ややかなムウの言葉を受け、電人Nは静かに『そうです』と答える。
『繭の場所は、テレパシーを受けている楓にしか分からないのです。彼女から繭の場所を聞き出す為とはいえ、無礼な真似をして申し訳ありません……』
「西垣は、繭の場所を聞き出せなかったと仰っていましたが?」
『…えぇ…繭の場所を聞き出すには、西垣では駄目だったのでしょう……』
電人Nは仮面越しに、ムウに視線を向ける。
『繭の場所を知るには、楓が一番懐いている貴方の協力が必要なのです』
「……それは、私と楓が貴方達に同行しろと、仰いたいのですか?」
サングラスを掛けていても分かる程に、今のムウの視線はとても冷ややかなものだ
『可能であれば…楓は我々で預かりたいですね。楓のような病状に関する治療のノウハウを心得ています』
☆ ☆ ☆
カノン「……アイオリア、何か喋ってくれ。このロールプレイ中地蔵と化しているぞ」
アイオリア「じ、じぞう?」
カノン「場にいるけど地蔵のように何も話さない奴の事を言うんだよ」
アイオリア「だ、だがカノン…この二人に割って入る隙が無いんだが……」
カノン「それには激しく同意する(真顔)」
ムウ「それよりカノン…Nという者の言葉を聞いて、楓は何ともないのですか……?」
カノン「察しが良いなムウよ。電人Nの言葉を聞いた瞬間、楓が泣きそうな表情をするぞ」
ミロ「えっ」
ムウ「不味いですね……」
カノン「そうだな……アイオリアとカミュとムウで聞き耳を頼む」
アイオリア「き、聞き耳だな」
〈聞き耳〉
ムウ(55)→86(失敗)
アイオリア(85)→64(成功)
カミュ(25)→17(成功)
カミュ「(ドヤッ)」
カノン「ちっ…初期値で成功か」
カミュ「だが、この場合は成功しない方が良い気がするのだが」
カノン「まぁ、先に結果だ。成功者には、自分達の方に向かってくる羽音が聞こえるぞ」
ムウ「羽音…まさか……」
アイオリア「シュラが戦ったあの烏か……!?」
カノン「じゃあ続きだな(ニヤニヤ)」
☆ ☆ ☆
「や…やだ……」
「楓……っ!!」
ありったけの力でムウの手を強く握り、楓は震える声で呟いた。。
だが、その呟きは、はっきりとその場にいる者の耳に届く。
「おかあさんとはなれるのは…いやなの……!!」
ムウが楓を落ち着かせようと抱き上げようとした、その時だった。
「…!!ムウ!!」
アイオリアとカミュが立ち上がり、ムウと楓を守るように周囲を警戒する。
「……!?」
二人の様子に、ムウも楓を抱き締めながら、周囲を見渡した。
「きゃあああ!!」
「っ!?」
突如響いた悲鳴に、その場にいた全員が悲鳴がした方向を見やる。
道行く人々に激突しそうになりながら、烏が此方に向かっている様子が見えた。
だが…ムウとカミュには、見覚えがある。
御津門大学や、昨日に公園で出現した、あの黒い泥の烏が、自分達の方に真っ直ぐ目掛けて凄まじい速さで飛来してきたのだ。
☆ ☆ ☆
カノン「では、烏を目撃した事によるSAN値チェックといこうか(にっこり)」
ミロ「で、出たあああああ!!」
ムウ「やはり出ましたか……」
カノン「成功で1、失敗で1D4の喪失だ……あ」
ムウ「どうしました?」
カノン「ムウは大学で烏と遭遇して3喪失しているんだったな」
ムウ「あぁ、確かにそうですね」
カノン「実は、恐ろしさに慣れるというルールがあってな…同じ神話生物に遭遇し続けて、喪失した正気度の合計が、その神話生物を見て失う最大値に達したらそれ以上減らないんだ…ただ、ある程度の時間を過ぎたら無効になるがな」
ムウ「という事は…烏のSAN値喪失の最大値は4ポイントでしたよね?以前3喪失したので…今回は成功失敗関係無く1ポイントしか減らないという事ですか?」
カノン「そういう事になるな…ただし、このセッション内での間だけだからな。別のシナリオでこの烏に遭遇した時はまた同じようにSAN値チェックをする事になるぞ」
ムウ「分かりました」
カミュ「私も大学と公園で遭遇しているから…失敗しても2ポイントしか減らないという事になるな」
カノン「ともかく、SAN値チェックだ」
ミロ「お、俺も……?」
カノン「当然だろう(にっこり)」
〈SAN値チェック〉
ムウ(72)→71(烏を見た際の上限に満たすので自動で1減少)
アイオリア(75)→49(成功)
ミロ(60)→94(失敗)
カミュ(83)→73(成功)
ミロ「うわああああ!!」
カミュ「ミロだけ失敗か」
カノン「成功は1、失敗は1D4の減少だからな」
ミロ「こ、これで少ない数値を出せば良いだけの事……(ころころ)」
カノン「ミロ、固まったがどうした?」
カミュ「……カノン、最大値の4が出た」
カノン「まじかよwwwwwww」
ミロ「うわあああああ!!」
カノン「い、良いじゃないかwwwこれでミロはもう烏を見ても動じないぞwwww」
ミロ「嬉しくねええええええ!!」
カノン「安心しろ、まだ続きがある」
全員『……え』
☆ ☆ ☆
突如飛来した烏に、カフェの周囲が騒然とする。
が、その時、電人Nがすっと立ち上がり、徐に手袋を外した。
だが…そこから覗く電人Nの手は、ゴム手袋でもしているかのように、黒くヌラヌラと光沢を放っている。
その気配を感じたのか、烏はくわっと口を開きながら、電人Nに目掛けて突撃してくる。
だが、電人Nは動じる事なく…あろうことか、烏を鷲掴みにした。
そして――烏は、袖に吸い込まれるように消えていった。
☆ ☆ ☆
カノン「さぁ、四人はアイデアロールを頼む」
カミュ「…これは、失敗した方が良いパターンだ」
ミロ「う、うぅ……」
〈アイデア〉
ムウ(85)→92(失敗)
アイオリア(70)→71(失敗)
ミロ(60)→79(失敗)
カミュ(90)→37(成功)
ミロ「カミュううううううう!!」
カミュ「予感はしていた」
カノン「カミュだけ成功か……じゃあ、カミュは『不定形の烏が、手品でも何でもなく、電人Nの体に吸収された』事に気付いてしまったぞ」
カミュ「やはりそうか……」
カノン「さぁ、この光景を見たお前達は追加でSAN値チェックだ♪」
ミロ「うわああああ!!」
カノン「アイデアに失敗した奴は成功で1、失敗で1D4、アイデアに成功したカミュは成功で1、失敗で1D4+1の喪失だ」
〈SAN値チェック〉
ムウ(71)→86(失敗)
アイオリア(74)→92(失敗)
ミロ(56)→73(失敗)
カミュ(82)→34(成功)
カミュ以外の全員『………』
カミュ「(ドヤァ)」
カノン「ダイズの女神が降臨しやがった……三人は1D4で振れ」
ムウ「カミュのオリハルコンメンタル…(ころころ)…3です」
アイオリア「(ころころ)……1だ」
ミロ「(ころころ)2だ!!」
カノン「アイオリアも固いな……」
アフロディーテ「ムウのSAN値が地道に削れているね…発狂はしていないけど」
ムウ「私よりミロの方が危ないと思いますが」
ミロ「(;ω;)」
カノン「安心しろ、優先順位はサガの方が上だ」
サガ「どういう意味かな?」
シュラ「……カノン、続きは?」
カノン「おっと、そうだった……その前に、ミロ以外の連中で聞き耳頼む」
ムウ「聞き耳ですか?」
〈聞き耳〉
ムウ(55)→20(成功)
アイオリア(85)→33(成功)
カミュ(25)→42(失敗)
カノン「(この結果を踏まえて……)じゃあ、ロールプレイの続きといくか」
☆ ☆ ☆
『まさしく、白無垢の巫女……実に八十年ぶりの再会だ』
電人Nは何事も無かったかのように手袋をはめながら、何処か満足げにそう呟いた。
「この子が、白無垢の巫女……」
電人Nの言葉を聞き、杉浦も感激したような表情で楓を見やる。
(白無垢の巫女……?)
二人の呟きに、楓を抱き締めながらムウは眉を顰める。
「どういう意味だ?」
楓をあやすムウの隣で、アイオリアは怪訝そうな表情を浮かべながら二人に問い詰める。
『…えぇ…過去に、佐比売党が同じような少女に出会い、保護をした記録があり、治療を行った事があるのです』
「白無垢の巫女、という言葉はどういう意味があるのです?」
『大した意味はありませんよ……』
ところで、と電人Nは言葉を続ける。
『楓は貴方達が面倒を見るという…事で宜しいのですか?』
「えぇ…我々が楓の面倒を見ます」
楓を抱き締めながら、ムウは電人Nを射貫くように視線を向ける。
『…分かりました…もし、楓が繭の場所を思い出した時は、我々に連絡をしてもらえませんか?』
「……分かりました」
少しの沈黙があったが、ムウは首を縦に振った。
「その代わり、繭の場所が分かるまで、我々には関わらないでもらえませんか?」
『…良いでしょう』
そのムウの提案に、電人Nは了承をした。
『これだけは言わせてください……楓の症状を悪化させない為にも、彼女を外へ出さないようにしてください』
「室内で安静にした方が良いという事なのか?」
腕を組みながら、カミュが訊ねる。
『そうです。狭い室内にいた方が、彼女の精神は安定します』
「…今日のように、外に連れ出さない方が良いのですか?」
『えぇ。外に出さずに、室内にいた方が症状を緩和出来るのです』
☆ ☆ ☆
カノン(此処で心理学を持ってる奴は全員…本当に人数多いな……)
〈心理学(結果はPLには分からない)〉
ムウ(85)→08(成功)
サガ(85)→100(ファンブル!!)
ミロ(55)→58(失敗)
シュラ(75)→26(成功)
カノン「ぶふぁ!!」
アイオリア「どうしたカノン!?」
カノン「な、なんでもないwwwwww」
サガ「その顔は絶対何かあった顔だ」
カノン「すまん、正直に白状しよう。心理学を振らせてもらった」
カミュ「誰かファンブルでも出したのか?」
カノン「その通りだwwww結果をこれから言うから察してくれwwwww」
ムウ「わ、分かりました」
カノン「ムウと、盗聴器越しに聞いていたシュラは、電人Nが楓を外に出さないうようにする事に固執しているように感じたな」
シュラ「…楓を外に連れ出す事が、相手にとって都合が悪いという事なのか?」
ムウ「そうかもしれませんね……」
カノン「……で、サガ」
サガ「……ファンブルを出したのは私か」
カノン「突然空腹に見舞われて飯の事で頭がいっぱいになるな」
ミロ「ぶふっ!!」
サガ「処理が雑だな」
カノン「こんなのしか思い浮かばないんだよwwwww」
アフロディーテ「これで二人との対談は終了になるけど、他に何か聞きたい事はあるかい?」
シュラ「結局、佐比売党というのはどういう組織なんだ?」
カノン「シナリオ終了すれば正体は教えるが、今の段階ではお前達が調べたような事しか教えてくれないぞ」
シュラ「む…そうか……」
ムウ「私はもう無いですが……」
カミュ「そうだな…私ももう無いな」
アイオリア「俺も特には……」
カノン「じゃあ、佐比売党の連中とはこれでお別れだな……今回はこれで区切るか」
アフロディーテ「次は翌日からスタートだね」
ムウ「了解しました」
カノン「これで一気に進んだようなものだ……あと三分の一ぐらいで終わるぞ」
ミロ「俺のSAN値大丈夫かな……」
カノン「今の内から心配していると、ラスボスと遭遇した時に色々持たないぞ」
ミロ「えっ」
カノン「俺達はまた席を外させてもらうぞ。アフロディーテと今後の流れを確認してくる」
ミロ「……ラスボスって電人じゃないの?ってあれ、カミュは?」
ムウ「…ミロ…時計をご覧なさい」
ミロ「………あ」
アイオリア「…だから先程光速で退場したのか」
シュラ「……シベリア滞在か」
サガ「…仕方あるまい…師弟水入らずで過ごしてもらおう……」
(支部に上げた日がカミュの誕生日でした)
カミュ誕生日おめでとう!!