名前なしの場合は監督生でもnot監督生でもユウになります。
可愛いおねだり
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「たまにはいいでしょう」と拗ねたような口調で紡がれた彼のおねだりに、ユウは顔を真っ赤にして首を左右に振った。
付き合って3ヶ月程経った頃、時折バイト終わりに「泊まっていかれては?」と誘われるようになった。
なにか進展してしまうのではないかと思いはしたが、別に嫌なわけではないし。と何かしらが起こるということを悟っていると、彼に思われないように純然たる態度で「なにして遊びますか?」と招かれた室内ですっとんきょんな言葉を選んだのだが、彼の答えは「疲れたので遊ぶのはまた今度……」とバタンとベッドに倒れ込んでしまった。
どうやら彼はなにかをすると言うより、あまり取れない時間を少しでも共有する為に「共寝」という時間共有を選んだらしい。
静々とベッドの隣に潜り込み、男子高校生とはと少し考えてしまいはしたが、自分がなにを期待していたんだと顔面に火を吹くほどの熱を感じて、彼に背を向けるように目をぎゅっと瞑ったのだった。
ということから、手中に入れた者を様々な意味で自分色に染めるのが大好きそうな、私の彼氏であるアズール先輩とは、お互いのお部屋を行き来する中であるけれど、まだ一線を越えていなかった。
周りからはもうなにかしら事は済んだのだろうと思われているのだが、それについてはヘラヘラ笑ってごまかしている。
「なぜですか?」
「恥ずかしいからですよ」
「散々したじゃないですか」
「そういう発言誤解を招きますから」
「僕とあなたしかいないでしょう」
今私がなにを強請られているかというと、私から彼にキスをしてほしいということなのだが、自己意思で不意にするのと「ねぇお願いしますよぉ」と無駄に色っぽく強請られて、んーっとびっくりするほどきめの細かい綺麗な肌をした美人に、タコのように唇を突き出され、お膳立てされてからするのでは心の整え方が変わってくるのだ。
彼はイマイチ自分の顔が整っているという自覚がないようで困る。
「また今度、ね、今度にしましょう?」
「今度っていつですか?」
「それは、今度ですよ」
「今がいい」
「い、今はむ、む、無理です!もう無理な気持ちになっちゃったので!」
「そんなぁ、…………そんなに僕にキスしたくないんですか?」
「え?」
嘘っぽい嘆きから、深刻そうな声色に変わり、私ははっとしたように彼を見やる。
しょんぼりと肩を落として憂うようにため息をつきながら、足のつま先をコツコツとぶつけ合う様に視線を落として、前々から思っていたという内情を吐露し始めた。
「ユウさんは僕に好意を伝えられたから成り行きで付き合ってくださっているだけで、本当はたいして僕のことなんて好きでもなんでもないのではないかと、とても不安になります」
「そ、そんなこと……」
「あなたはそんなこととおっしゃいますが、僕にとっては口約束のこの関係が、いつか突然終わりになるのではないかと、不安で堪らないんですよ。僕のことはそれなりにおわかりでしょう?」
眼鏡を外して膝の上にぽてんと手を落としたアズール先輩は、背を少し丸めて私を見上げるように見つめた。
彼の抜けるような青い空色の瞳があんまりにも美しくて、この美しい空が今自分のせいで悲しみに揺れていることが許せなかった。
そして同時に彼という存在を自分の所有物のようにできているという支配欲に似たものが、腹の奥の方でぐつぐつと煮えるように湧き上がってきて、ごくりと唾を押し流すように喉を鳴らし、彼の次のセリフを待った。
「僕の不安を取り除いていただけませんか?」
ずるい人だなと思った。
彼は初めから断る術などないという風に持っていけるだけのビジョンを思い描いていたのだろう。
欲しいものを欲しい時に、自分の意のままにできる力を彼は持ち合わせている。
おねだりなんて可愛いものではない。これは命令に近いものだ。
僕のことならそれなりにおわかりでしょう?なんて、本当にそれなりしか知らない。だって彼は私にまだまだ隠していることが沢山あるから。
自分の見た目の価値だって、彼は本当はわかっていたんだってことも、今この瞬間になって知った新しい事実だった。
ずるいなぁ。
私は彼のすべすべの頬に両手を添えて震える唇をきゅっと窄めた。目を硬く閉じる刹那に映った、なんともまぁ満足そうな顔が憎たらしくて愛しくて仕方がない。
けど。
「ごめんなさい、これで許してくださいっ」
むちゅっと彼の口元のホクロに唇を押しつけて、バクバクとする心臓を押さえつけるように胸に手を当てて深呼吸をする。
あと数センチで唇だっただろうというのはわかってる。でもそのたった数センチが途方もなく遠くて高い場所に感じてしまったのだ。
怒ってる、かな。
胸を押さえながら、尋常ではない熱を持ったままの顔をそろりとアズール先輩の方へ向けると、彼はぽかんと口を半開きにしながら、自分のホクロのあたりを抑えていた。
びっくりしてるのかな?
「あ、あの……」
「……っとに……」
「え?」
なんて?と聞き返そうとした音がひゅっと喉の奥に引っ込んだ。いや、引っ込まされた。
アズール先輩ごしの天井をちらっと見上げて、それからアズール先輩に視線を戻すと、彼は顔を真っ赤に染めて眉を吊り上げていた。
どうゆう顔なんだ?と理解に苦しんでいると、唇に噛み付くようにひんやりとした彼のそれが重なって、これまでふわりと重ね合ったり、ちょっと舌を絡ませあったりとしかしたことがなかったその行為を、彼の性格を表すような、しつこく絡みつき全てを搾り取っていくような強欲に舌が口内をうねりまわり、普段はなんて可愛いキスだったんだろうと酸欠で働かなくなった脳がお花畑を散歩し始めたあたりで、ようやく彼の執拗なキスから解放された。
舌先から溢れたお互いの唾液がたらりと私の口端から溢れていたけれど、それを拭うという行動すら起こす気になれず、打ち上げられた可哀想な魚のように、パクパクとどうにか生命を維持するようにと酸素を求める。
生理的に溢れていた涙を、まばたきをすることでクリアにし、私を陸で溺れさせた男に目を向ければ「もう少し待ってあげてもよかったんですけどね」と、ぶつぶつとなにかを呟いていた。
ようやく働くようになった脳が、なんとなく危機を感じ取り「先輩?」と彼の良心に訴えかけるように強請るように尋ねていた。
「はい?」
「もう寝ませんか?」
「ふふふっ」
「なんで笑ってるんですか」
「いやね、わかってて聞いてるんだろうなって思ったらおかしくて」
アズール先輩の手のひらが、私の顔の横にふわりと落ちてきてベッドに沈んでいった。
ごくりと唾を飲み込んで、たっぷり時間をかけて腕の先に視線を向けると、とびきりいい笑顔をでアズール先輩は私を見下ろしていた。
「寝かせるわけないだろ」
付き合って3ヶ月程経った頃、時折バイト終わりに「泊まっていかれては?」と誘われるようになった。
なにか進展してしまうのではないかと思いはしたが、別に嫌なわけではないし。と何かしらが起こるということを悟っていると、彼に思われないように純然たる態度で「なにして遊びますか?」と招かれた室内ですっとんきょんな言葉を選んだのだが、彼の答えは「疲れたので遊ぶのはまた今度……」とバタンとベッドに倒れ込んでしまった。
どうやら彼はなにかをすると言うより、あまり取れない時間を少しでも共有する為に「共寝」という時間共有を選んだらしい。
静々とベッドの隣に潜り込み、男子高校生とはと少し考えてしまいはしたが、自分がなにを期待していたんだと顔面に火を吹くほどの熱を感じて、彼に背を向けるように目をぎゅっと瞑ったのだった。
ということから、手中に入れた者を様々な意味で自分色に染めるのが大好きそうな、私の彼氏であるアズール先輩とは、お互いのお部屋を行き来する中であるけれど、まだ一線を越えていなかった。
周りからはもうなにかしら事は済んだのだろうと思われているのだが、それについてはヘラヘラ笑ってごまかしている。
「なぜですか?」
「恥ずかしいからですよ」
「散々したじゃないですか」
「そういう発言誤解を招きますから」
「僕とあなたしかいないでしょう」
今私がなにを強請られているかというと、私から彼にキスをしてほしいということなのだが、自己意思で不意にするのと「ねぇお願いしますよぉ」と無駄に色っぽく強請られて、んーっとびっくりするほどきめの細かい綺麗な肌をした美人に、タコのように唇を突き出され、お膳立てされてからするのでは心の整え方が変わってくるのだ。
彼はイマイチ自分の顔が整っているという自覚がないようで困る。
「また今度、ね、今度にしましょう?」
「今度っていつですか?」
「それは、今度ですよ」
「今がいい」
「い、今はむ、む、無理です!もう無理な気持ちになっちゃったので!」
「そんなぁ、…………そんなに僕にキスしたくないんですか?」
「え?」
嘘っぽい嘆きから、深刻そうな声色に変わり、私ははっとしたように彼を見やる。
しょんぼりと肩を落として憂うようにため息をつきながら、足のつま先をコツコツとぶつけ合う様に視線を落として、前々から思っていたという内情を吐露し始めた。
「ユウさんは僕に好意を伝えられたから成り行きで付き合ってくださっているだけで、本当はたいして僕のことなんて好きでもなんでもないのではないかと、とても不安になります」
「そ、そんなこと……」
「あなたはそんなこととおっしゃいますが、僕にとっては口約束のこの関係が、いつか突然終わりになるのではないかと、不安で堪らないんですよ。僕のことはそれなりにおわかりでしょう?」
眼鏡を外して膝の上にぽてんと手を落としたアズール先輩は、背を少し丸めて私を見上げるように見つめた。
彼の抜けるような青い空色の瞳があんまりにも美しくて、この美しい空が今自分のせいで悲しみに揺れていることが許せなかった。
そして同時に彼という存在を自分の所有物のようにできているという支配欲に似たものが、腹の奥の方でぐつぐつと煮えるように湧き上がってきて、ごくりと唾を押し流すように喉を鳴らし、彼の次のセリフを待った。
「僕の不安を取り除いていただけませんか?」
ずるい人だなと思った。
彼は初めから断る術などないという風に持っていけるだけのビジョンを思い描いていたのだろう。
欲しいものを欲しい時に、自分の意のままにできる力を彼は持ち合わせている。
おねだりなんて可愛いものではない。これは命令に近いものだ。
僕のことならそれなりにおわかりでしょう?なんて、本当にそれなりしか知らない。だって彼は私にまだまだ隠していることが沢山あるから。
自分の見た目の価値だって、彼は本当はわかっていたんだってことも、今この瞬間になって知った新しい事実だった。
ずるいなぁ。
私は彼のすべすべの頬に両手を添えて震える唇をきゅっと窄めた。目を硬く閉じる刹那に映った、なんともまぁ満足そうな顔が憎たらしくて愛しくて仕方がない。
けど。
「ごめんなさい、これで許してくださいっ」
むちゅっと彼の口元のホクロに唇を押しつけて、バクバクとする心臓を押さえつけるように胸に手を当てて深呼吸をする。
あと数センチで唇だっただろうというのはわかってる。でもそのたった数センチが途方もなく遠くて高い場所に感じてしまったのだ。
怒ってる、かな。
胸を押さえながら、尋常ではない熱を持ったままの顔をそろりとアズール先輩の方へ向けると、彼はぽかんと口を半開きにしながら、自分のホクロのあたりを抑えていた。
びっくりしてるのかな?
「あ、あの……」
「……っとに……」
「え?」
なんて?と聞き返そうとした音がひゅっと喉の奥に引っ込んだ。いや、引っ込まされた。
アズール先輩ごしの天井をちらっと見上げて、それからアズール先輩に視線を戻すと、彼は顔を真っ赤に染めて眉を吊り上げていた。
どうゆう顔なんだ?と理解に苦しんでいると、唇に噛み付くようにひんやりとした彼のそれが重なって、これまでふわりと重ね合ったり、ちょっと舌を絡ませあったりとしかしたことがなかったその行為を、彼の性格を表すような、しつこく絡みつき全てを搾り取っていくような強欲に舌が口内をうねりまわり、普段はなんて可愛いキスだったんだろうと酸欠で働かなくなった脳がお花畑を散歩し始めたあたりで、ようやく彼の執拗なキスから解放された。
舌先から溢れたお互いの唾液がたらりと私の口端から溢れていたけれど、それを拭うという行動すら起こす気になれず、打ち上げられた可哀想な魚のように、パクパクとどうにか生命を維持するようにと酸素を求める。
生理的に溢れていた涙を、まばたきをすることでクリアにし、私を陸で溺れさせた男に目を向ければ「もう少し待ってあげてもよかったんですけどね」と、ぶつぶつとなにかを呟いていた。
ようやく働くようになった脳が、なんとなく危機を感じ取り「先輩?」と彼の良心に訴えかけるように強請るように尋ねていた。
「はい?」
「もう寝ませんか?」
「ふふふっ」
「なんで笑ってるんですか」
「いやね、わかってて聞いてるんだろうなって思ったらおかしくて」
アズール先輩の手のひらが、私の顔の横にふわりと落ちてきてベッドに沈んでいった。
ごくりと唾を飲み込んで、たっぷり時間をかけて腕の先に視線を向けると、とびきりいい笑顔をでアズール先輩は私を見下ろしていた。
「寝かせるわけないだろ」
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