KOP(ミナト受け)
The gift of effort
2025/08/03 23:48カケミナ
夕食の支度中に出た洗い物をしながら何気なく見ていたニュースが告げたのは、僕にとってのまさに「本懐」だった。
「たっだいま~!」
玄関からの声にハッとする。
あぁ、大変だ。もうこんな時間なんて。
かろうじて皿を洗い終えてからの記憶があまり無い。ご飯の支度はどこまでした?ドレッシングは作ったっけ?
「ミナト?」
いつもの出迎えをしなかったせいか、同居人はこの歳になっても変わらない綺麗な顔でのぞき込んでくる。
「おかえりカズオ。」
一緒に住み始めて27年。いや、寮生活も含めたらもっと長い付き合いだ。
今年45歳になった僕らは、17歳の頃からずっと恋人だった。
いつものようにおかえりのキスをすると、彼はいつも以上の満面の笑み。
「もう見た?」
思い当たる事なんて、一つしかない。
「見たよ。」
「……おまたせ、ミナト。」
スーツに皺が寄るのも気にせず、ぎゅっと抱きしめる。
「まさか本当に成し遂げちゃうなんてなぁ。」
「信じてなかった?」
「…信じてたよ。誰よりもね。」
僕の本懐は、そのまま彼の本懐だった。
彼の望みが彼の力によってついに叶った事が、本当に嬉しい。
「ホントはもっと早くしたかったんだけどねぇ。」
彼が十王院ホールディングスの代表取締役社長に就任したのが24歳。その座をあっさり捨てて政界入りを目指し始めたのが35歳。
それから今まで、知名度も能力もある彼でもここまでたどり着くのには大変な苦労をしてきた。
「いつまでだって待てたよ、僕はね。」
「おれっちがそれじゃ我慢できないんですぅ~!」
「ははは、その口調好きだなぁ。カケルって感じで。」
「だって今夜はパーリナイ!じゃん?」
「そうか、もう少し早く分かれば今夜はご馳走にしたのに……。」
「ミナトッチの作るものはいつだってご馳走ですけど~?それでほら、これお土産。」
革の鞄から取り出されたファイルを受け取る。
「結婚しよう。」
婚姻届。
今日、ついにこの日本でも同性婚が法的に認められた。それは彼の長きにわたる努力が少なからず影響していて、それに微力ながらも僕も貢献できていたのなら、いいなと思う。
目頭が熱くなってきた。
「僕らもようやく、本当に家族になれるね。」
すでに一部記入されている婚姻届は、涙で滲んで光って見えた。
