ygo(吹雪受け)

この身悶えるような甘酸っぱい青春を

2025/04/29 00:43
亮吹


「吹雪は人の恋愛にばかり首を突っ込んでいるが、お前自身はどうなんだ?」

 自称恋の魔術師、天上院吹雪は数秒フリーズした後、琥珀色の大きな瞳をいつも以上にキラキラさせながら亮の手を取った。

「亮!ついに愛の素晴らしさに目覚めたのかい!?」
「違う。なんでそうなるんだ。」
「だって珍しいじゃないか!亮が自らデュエル以外の話題を出すなんて。しかもその話題が愛だなんて、僕は嬉しいよ!」

 犬が尻尾を振るかの如く腕を上下させる吹雪のせいで、亮も上下に振動する。

「それで、この僕の恋愛模様が知りたいんだね?他でもない君の頼みだ、偽りなく話そうじゃないか!」
「いや、そこまで望んだわけでは……。」
「僕はね、僕にとって特別な人を探しているんだ。そう、僕は愛の求道者なのさ!」

 そういえばそんな名前のデッキを使っていたこともあったな。
 すでに胸焼け気味の亮は思考をデュエル寄りにする。
 そんなことを気にも留めない吹雪は勢いのままに亮の手を離し、身振り手振りで大袈裟に話し続ける。

「そう、僕を愛する人は沢山いる。でも残念ながら、僕は一人しかいないから、全員に同じだけの愛を返すことはできないんだ……。」
「そうか。」
「本当はファンのみんなの事を等しく愛したい。それでも、それとは別に、僕にとって特別な存在っていると思うんだ。例えば明日香のようにね。」
「そうか。」
「だから、僕にとって特別な大切な存在がいて、僕のことを愛してくれるのなら、あとはなんだっていいんだ。デュエルに興味がなくたっていいし、凄く歳上でもいい。カードの精霊だっていいさ。僕に見えるのならね。」
「そうか……。」

 3枚の「そうか」によって長い吹雪のターンを乗り切ったところで、亮はおもむろに吹雪の手を取る。
 確かに欲しいカードは得られたが、本当に今でいいのか?
 亮は手を取ったことを後悔しつつもここが好機と思い、切り出す。

「その、吹雪。」
「どうしたんだい?今日はなんだか様子がおかしいじゃないか。」

 風邪でもひいたのかい?と小首を傾げる吹雪の温かい手をぎゅっと握りしめた亮は、意を決して言った。

「俺は、どうだ……?」

 一世一代の告白だった。

「ん」
「……ん?」

 吹雪の唇は横一文字に閉じられ、小さく震えている。感情の読めない表情に亮が不安な数秒を過ごしていると、吹雪は叫んだ。

「んんん〜!!すごいよ亮!普段涼しい顔したカイザーの余裕ない表情!少し自信のない台詞回し!胸キュンポイント文句なしの100点満点!僕が女のコだったら間違いなくイチコロだよ!今ここに僕しかいないことが残念でならないよ!!」
「いや、吹雪。」
「亮!亮のことを特別視してない人間なんていないから安心していい。この僕のお墨付きなんだから。それにしても、誰なんだい?君にそんな顔をさせてしまう恋のお相手は!わざわざ僕に相談を持ちかけるなんて、よっぽど」
「違う、なんでそうなるんだ……。」

 つい先程と同じ台詞を吐いたところで状況は変わらない。このままじゃまたずっと吹雪のターン……冗談じゃない。これ以上空振りしてたまるか。
 亮は腹を決めた。

「吹雪。」
「ところでいつからそのンむっ、」

 亮は吹雪の両頬を手で掴まえ、よく動く唇に口付けた。
 吹雪は完全に動きを止め、もう何も言わなかった。

「まだ、わからないか?」
「あ。えー、と。」

 さっきまであれだけよく回っていた口と頭が停止している吹雪を見て、亮は小さく笑った。

「吹雪、俺はお前が好きだ。」
「その……君の気持ちはよーくわかったよ。」

 突然自分事として降り掛かってきた恋に、魔術師は赤らめた顔を両手で覆った。

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