ygo(吹雪受け)

吹雪のパーフェクトれんあい方程式(亮→吹←藤)

2025/04/28 02:01
亮吹藤吹

「なんてことだ……。」

 この恋の魔術師こと天上院吹雪はついに、この難解な恋の方程式を説いてしまった。
 愛の伝道師である僕だからこそ集まってくる、恋の悩み。それを紐解いた結果、分かってしまったんだ。

「亮と藤原は両思いだったんだ……。」

 あぁどうしよう、この胸の高鳴り!愛!なんて素敵なんだろう!
 いや、ここで焦っちゃいけない。計算をもう一度見直そう。


まず仮に

亮の好きな人=X、藤原の好きな人=Y

とする。
ここで相談内容より、

X=男、Y=男

が与えられている。
更に、

X=亮の身近な人、Y=藤原の身近な人

であることがわかっている。
つまり、

X=男+亮の身近な人=藤原、僕
Y=男+藤原の身近な人=亮、僕

ここで僕は虚数解(なぜなら僕はアイでできているからね!)のため、

A≠僕、B≠僕


A=藤原、B=亮


 ん〜、なんって完璧なんだ!ノーベル恋愛賞受賞式には何を着ていこうかな。
 前提が分かってしまえば非常にシンプル。とはいえその前提を聞き出すのにとても苦労したよ。なんと言っても相手はあの二人だからね。
 それにしても、これまで相談を受けてきた親友二人が恋仲になるなんて、なんて素敵な響きだろう。


これは僕も一肌脱がなきゃいけないね。








「というわけで、丸藤亮vs藤原優介ラブデュエルの開催をここに宣言するッ!」
「というわけでって何!?」
「また吹雪の悪い癖が……。」

 会場は異様な熱気に包まれている。ギャラリーは超満員だ。
 それもそのはず。なんといっても今回のラブデュエルでは、負けたほうは好きな人に告白することになっているんだからね。
 天才二人の決闘だけでも見所満載なのに、この僕に負けずとも劣らないイケメン二人のどちらかが告白するとあっては黙っていられないだろう。
 ……まあ、僕だけは結末を知ってるんだけどね!

「負けたほうはこの場で告白って、こんなの公開処刑じゃないか〜!」

 藤原は涙目で頭を抱えている。大丈夫、どちらが勝っても約束されたハッピーエンドさ!
 一方の亮は涼しい顔をしてデッキの確認をしている。

「亮は緊張してないのかい?」
「あぁ。要は勝てばいいんだろう?それに、藤原と本気で決闘できる機会は貴重だから楽しみだ。ありがとう吹雪。」

 さすがはカイザー!圧倒的王者の余裕ある発言に、会場がどよめく。
 しかし、このまま会場の空気が亮側に偏ると良くない。ただでさえ青い顔をしていた藤原がどんどん小さくなっていく。
 僕は藤原に駆け寄った。

「大丈夫さ藤原。亮も言っていたけれど、要は勝てばいいんだ!君なら勝てるさ!」

 震える藤原の手をぎゅっと握る。うわぁなんて冷たいんだ。このままじゃプレイングミスが起きかねない!
 指一本一本を曲げたり握ったり、マッサージを施す。
 その途端、鋭い視線を感じた僕はその方向に目を向ける。視線の主は亮だった。

 なるほど、これはまずい。

 違うんだよ亮、この手は決してそういうのじゃなくて僕は、選手が緊張のあまりドローもできないんじゃまずいと思って、だから僕は二人の間に入ろうなんて気はまったくなくて、……って事を言うわけにはいかないんだよ今は!君らのどちらかがこれからどちらかに告白するんだからね!ネタバレは厳禁さ!恨むなら僕ではなく、とっとと告白しなかった自分を恨んでくれ!まったく世話の焼ける友人だ!
 一方で藤原の顔を見ると、真っ赤になって俯いている。さっきまで顔面蒼白だったのに?
 そうか、藤原は頭脳明晰だから亮の視線の意味に気付いているんだね?
 手もどんどん温かくなって、なんなら少し手に汗握る感じになってきた。もういいだろう。

「じゃあ藤原選手、一言どうぞ!」
「あ、えっと……丸藤。僕は君に勝つ。今のうちに告白の台詞を考えておいたほうがいいよ。」

 なんてことだ……さっきまで縮こまっていた人とは思えない台詞だ!
 でもそれもそうか、藤原は亮が自分の事を好きだってわかっているんだもんね。
 挑発的な言葉を聞いて、亮は不敵に笑う。
 待てよ?亮のあの余裕。もしかして彼も気付いて?いや、それどころか実は既に付き合って……?

 ま、いいか!残る僕の役目は決闘開始の宣言をするだけだ。審判の位置につく。

「じゃあ磯野さん、お願いします。」
「決闘開始ィィィ!!!」

高らかな開始宣言が響きわたった。



(決闘の様子はダイジェストでお送りいたします。ダイジェスト終了時にはお知らせしますので、安心して読み飛ばしてください。)



「手札からサイバー・ドラゴンを特殊召喚!」
『後攻1ターン目から星5モンスターのお出ましだー!!』
「そう来ると思ったよ!トラップ発動、落とし穴!」

(中略)

「フィールド魔法発動!クリアーワールド!」
『藤原選手、フィールド魔法、クリアーワールドを発動しました!丸藤選手のモンスターは光属性のため、手札を公開し続けなくてはいけません!』
「フ……手札くらい、いくらでも見せてやろう。」

(中略)

「罠発動!ラストバトル(禁止カード)!」
「何ッ!?」
『ラストバトル!?これはまさかの展開!藤原選手、一気に勝負を終わらせに来た〜!!』
「自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、そのモンスター以外のお互いの手札・フィールド上のカードを全て墓地へ送る!」
「くっ……!」
『丸藤選手、手塩にかけてパワーボンドしたモンスターが墓地へと送られてしまったー!』
「その後、相手はデッキからモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚し、僕が選択したモンスターと戦闘を行う。さあ丸藤!デッキからモンスターを特殊召喚しろ!」
亮の心の声(既にエースモンスターを使い果たし、デッキにはモンスターは殆ど残っていない。藤原のモンスターの攻撃力を上回ることができない……。)
「ならば、俺が選択するのはこのカードだ!出てこい、サイバー・ドラゴン・ヘルツ!攻撃だ!」
「この戦闘によって発生するお互いのプレイヤーへの戦闘ダメージは0になる。君のその攻撃力100の雑魚モンスターは破壊されるけどね。そして、このターンのエンドフェイズ時、どちらかのプレイヤーのみがモンスターをコントロールしていた場合、そのコントローラーはデュエルに勝利する!(それ以外の場合は引き分けになる)」
 ※公式カードデータベースより引用
『なんてことだ!丸藤選手のフィールドにはモンスターがいない!』
「さあ丸藤!バトルフェイズを終わらせ、負けを認めろ!」
「確かに、俺は勝つことができなかった……。だが、負けはしない!サイバー・ドラゴン・ヘルツの特殊効果発動!このカードが墓地に送られた時、墓地からこのカード以外のサイバー・ドラゴンを手札に加える!」
「何ッ!?」
「ここでバトルフェイズを終了し、メインフェイズ2を行う。お前のフィールドにはモンスターがいて、俺のフィールドにはいない。よって、手札からサイバー・ドラゴンを特殊召喚!ターンエンドだ!」
『なんということだ!ラストバトルの発動ターンのエンドフェイズに、どちらのプレイヤーもモンスターをコントロールしている……!つまり、』





(ダイジェスト終了)

「引き、分け……?」

 藤原は悔しそうに唇を噛む。亮は静かにフィールド上のサイバー・ドラゴンをデッキに収めている。
 見事なデュエルだった。うきうきで最前列をおさえていた校長先生もご満悦のご様子で頷いている。

「素晴らしい!本当に互角の戦いだった!勝者が決まらなかったのは残念なことではあるけれど、見てごらんよこの会場の盛り上がり!」

 鳴り止まない拍手が会場を包んでいる。薄っすらと涙ぐんでいる人すらいることからも、誰が見てもハイレベルなデュエルだったことが解る。

「では、まずは藤原選手から一言。」
「やっぱり君は強いな、丸藤。あのターンのあの展開(ダイジェスト版ではカットされています)、きっと君じゃなきゃ思いつかない。手札にあれ(ダイジェスト版ではカットされています)がなかったら負けてしまうところだったよ。」
「いや、藤原。お前の戦略(ダイジェスト版ではカットされています)は見事だった。そしてあの罠……。あの瞬間、確かに俺は負けを覚悟した。だから俺はあえて、敗者として告白しようと思う。」
『何ということでしょう!丸藤選手、引き分けたにも関わらず告白をするそうです!!!』

 ドッと沸く会場!鳴り止まないカイザーコール!流石はカイザー亮!リスペクトを忘れない男は企画の趣旨も忘れないしファンサービスも怠らない!まさに誇り高き決闘者だ!

「吹雪、お前には何度か話したように、俺が好きなのはいつも俺のそばにいてくれる人だ。心根が優しい奴で、俺をはじめ、周りの人のことをいつも気にかけている。」

 うんうん、わかるよ。藤原だね?いつも一緒にいるし、彼は本当に優しいもんね。
 聞いてるかい?藤原。そんな顔しないでよ、大丈夫だから。

「時々困らされることもあるが、そんなところも魅力的だと思っている。」

 分かるよ亮。藤原には僕も手を焼かされているさ。研究に没頭すると我を忘れちゃったりとか、人の発言を気にしすぎて病んじゃったりとか、ね。彼は繊細だから。
 それにしても楽しみだなぁ、親友カップル+僕の学園生活!ハートのストローで一つの飲み物を飲んでもらったり、ポッキーゲームしてもらったり、そうだ、カップルデッキでタッグデュエルしてもらうのも良いね!
 藤原は写真を撮るのが好きだけど、二人の写真は僕がしっかり撮るから安心してね。
 亮が深呼吸する。カイザーでも緊張することがあるんだね。でも大丈夫、君たちは両思いさ!







「吹雪。俺はお前が好きだ。」







…………ん?

『『えぇぇぇー!!!?!?』』

 会場が揺れるほどのどよめきが襲いかかる。

 待って、吹雪って言った?吹雪って藤原?違う、僕?

「……僕?」
「あぁ。だが、すぐに答えがほしいわけじゃない。少し考えてみてくれ。」

 大混乱の中、もう一つのマイクが拾った声が会場に響き渡る。

「ま、待てよ!」

 藤原!そうだよね、君は亮のことが好きだもんね?
 まさか僕をダシにして藤原から告白させるために……亮ってば本当に策士だね!藤原もよく勇気を出した!二人に胸キュンポイント10ポイント!
 しんと静まった会場で、藤原が愛を叫ぶ。

「僕だって、僕だって吹雪が好きだ!!」







「…………ん?」

『『わぁぁぁ!!!?!?』』

 再び、会場が割れるほどの大盛り上がり。失神した女子生徒が運ばれていくのが横目で見えた。

「ふ、藤原も……?ドッキリ……?」
「吹雪、僕は丸藤ほど完璧な人間じゃない。魅力も無い。」

 ドッキリを疑っている僕を無視して藤原は語り始める。亮を見ても藤原を見ても会場中を見渡しても、ドッキリ大成功の札を持った人はいない。

「それでも、君を想う気持ちは誰にも負けない。君と一つになりたいと何度願ったことか……あ、ごめん、一つにって、その、そういう意味じゃなくて……!とにかく、僕も吹雪が好きなんだ!だからその、考えてほしい……です。」

 顔を真っ赤にした藤原は、きちんと言い終えてから手で顔を覆う。
 いや、確かに僕が見たかったのはこういうシーンだったはずなんだけど、根本的に違うというか、想定とは違うドキドキというか。残りLP200で決死の攻撃宣言をしたところで
、相手の罠が発動したみたいな緊張感だ。
 それにしても、亮も藤原も僕のことが好きだって?まったく、僕はどれだけの人を魅了すれば気が済むんだい?神から与えられた自分の才能が怖いよ。

「吹雪様ー?」
「JOINしてあげて〜!!」

 そうこうしている間に会場の期待が僕に向き始めてしまった。このままじゃまずい。どうしよう。
 新たな恋人の誕生を祝福して幕を閉じる予定だったのに!

「吹雪様!答えてー!」
「どちらとお付き合いするんですかー!」

 ついには僕のファン達がこんな事を言い出した。付き合うも何も、考えたこともなかったし……待てよ?ファン?そうか!

「アイドルは愛、NGなんだ!!だからごめんね亮、藤原。そしてファンのみんな!気持ちは嬉しいけれど、僕はみんなのものだから!」

 会場中がしんとなったのもつかの間。さすが吹雪様ー!究極アイドル!などと黄色い声が上がり始める。さすがは僕、作戦成功だ!全てを有耶無耶にできるこの美貌、まったく末恐ろしいね。
 この調子で一気に決める!ビシッと人差し指を上げる。

「僕が指差す先にあるものは?」
『『天〜!!!!』』
「んんんんん〜〜〜〜〜〜JOIN!!!」
『『キャー!!!!』』
『『素敵〜!!!!』』

 こうして、ラブデュエルは大熱狂のなか閉幕した。
 三天才なんて呼ばれていた僕らはいつのまにかトライアングル・エリア(魔法カード)と呼ばれるようになった。エーリアン扱いとは本当に心外だよ。

 ……それにしても、僕の完璧な計算はどこで間違えたんだろう?

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