jojo(億泰受け)
七夕(仗億)
2025/04/28 01:44「俺、七夕嫌いなんだよなァ。」
亀友のインフォメーション前に飾り付けられた色とりどりの短冊を遠巻きに眺めながら、億泰が呟いた。近くの机には子供たちが並び、こぞってペンを握りしめている。クリスマスや正月ほどではないにしても、店内の色が変わる年間行事の一つだ。どうやら祭りが催される地域もあるらしく、二本並んだ笹の隣にはポスターが掲示されている。
「なんでだよ。おめーイベント事好きだろ?」
去年は入院していた時期を除けば、一年中億泰と季節のイベントを楽しんだ。紅葉狩りにハロウィンにクリスマス。年越しも共に過ごしたし、花見にも行った。バレンタインですら、フェアメニュー全制覇だと意気込んで撃沈していたのに。
そんな億泰が嫌いな行事があるとは思わなかった。
「だってよぉ、願い事叶ったことねーだろ。」
「そうかぁ?」
「そーだよ。願いが叶うなんて言いながら、一つも叶いやしねえもん。まぁそりゃあそうなんだよ。あんな紙切れ1枚で何でも叶ったら誰も苦労しねえっつーの。」
億泰は左腕にかけたカゴに3本入りのごぼうを放り込んだあと、確か人参はあんだよな、と呟いた。
「まぁ、所詮紙切れっつーのはそうなんだけどよお。でもおめー、願い事のハードルが高いんじゃねーの?何書いたんだよ。」
「誰が言うかよ、ンな事。」
億泰は気にする素振りもなかったが、仗助は口にした言葉をすぐに後悔していた。
自分が昔書いたことといえば、まだ叶うかどうかも分からない『お金持ちになりたい』だとか、『新しいゲームが欲しい』とかいうごく小さいものが多かった。そして後者のほうは母や祖父がひっそりと叶えてくれたに違いない。
その中で、一つだけ叶わなかった事があるのを思い出した。『おとうさんができますように』だ。
じゃあ、億泰は?
「大体よぉ、七夕の話もゼータクなんだよ。自業自得のくせして、織姫と彦星は一年に一度でも会えるんだぜ?……いいじゃあねーか、会えるんだからよぉ。美談みたいにすんなよな。」
幼い頃に母を失い父が変わり、とうとう兄も失った億泰はもう、願うこともしなくなったらしい。母に会いたい、父を元に戻したい、そんな願いを短冊に込めたことは想像に難くない。そしてそれが叶わなかったことも。
たまらなくなった仗助は、鶏肉の色を見比べながら未だに文句を垂れている億泰の腕を掴んだ。
「なんだよ仗助。俺はいま真剣に肉を」
「俺よぉ!」
「うお、声でっけ。」
カゴ持って買い物してる不良なんてただでさえ珍しいのに、その片方が大声を出したとあれば周囲の客はそそくさと二人から離れていく。
勢い余っちまった、と少しの気恥ずかしさを感じた仗助は億泰から目を逸らして、それでも言葉を続けた。
「……今年願い事まだ書いてねーんだよ。おめー叶えてくれよ。」
今度は億泰が大声を出す番だった。
「ハァ〜〜?おめー俺の話聞いてたか?なんで俺がおめーの願い叶えなきゃなんねーんだよ!」
「俺の今年の願い事はよぉ!『今日これから友達のウチに泊まって夜通しゲームがしたい』だぜ!」
「……お、おう?」
意地でも今夜は一緒に過ごしてやると意気込んだ仗助の、勢いで押し切る作戦が功を奏したらしく、億泰はそれ以上の文句を言わなかった。
億泰の右手には選ばれし鶏肉が所在なげに佇んでいる。
「おめーの言うとおり、織姫だの彦星だの流れ星だのは信用ならねーからよぉ。手っ取り早くおめーが叶えてくれよ億泰。」
「まぁ、別にそんな事ならいいけどよぉ……。つーか、流れ星は関係ねえだろーが。」
腑に落ちない顔をしつつも承諾した億泰は、ようやくカゴに鶏肉を入れて歩き出す。もうひと押ししたい仗助は、億泰が好きなゲームの話を持ち出す。
「今日はよぉ、クラッシュバンディクー3やろうぜ。」
「それこの前クリアしたじゃあねーか。」
「何言ってんだよ、真エンディングがあんだろ。今日はトロフィーコンプするまで寝かさねーから覚悟しろよ。」
つい先日二人でクリアした難易度高めのアクションゲーム。全ステージクリアは数週間かかって成し遂げたが、真エンディングのためには再度全ステージを攻略しなくてはならない。しかも時間制限ありで。
真エンディングと聞いて、億泰は目を輝かせた。
「いやそれ超ムズいやつじゃねーかよ!臨むところだぜ。明日は学校行けねーと思えよな。」
「明日は土曜日だから授業は午前中だけだし、そもそも俺達不良だからたまには学校サボってもいいだろ。」
「さすが仗助!よっ、ぶど高不良代表、リーゼントのジョジョ!」
「なんだよそのだせえ二つ名みてーなの……まぁいいや、そんでおめーの願い事は?」
「ん?」
「俺の願いは叶うことが決まったんだから、おめーのも叶えようぜ。なんかねえのかよ。」
「あー……1のダイヤコンプ……?」
二人は思わず顔を見合わせた。シリーズ最高難易度と言われる1の、真エンディングを見るための条件だ。真エンディングどころか、半分程度しか進められずに積みゲーと化してるアレを?
「おめーやっぱ願い事のハードルが高すぎんだよ!」
「そうかもしれねぇなァ……でも、今年はおめーが叶えてくれんだろ?」
「当たり前だろ。おめーの願いはこの仗助くんが預かった!そうと決まればとっとと帰ろうぜ億泰!」
「おう!夜食用に多めに作るから、人参持ってきてくれ仗助!俺はこんにゃくと油揚げを取ってくるぜ!」
こんにゃく目掛けて小走りをはじめた億泰に負けじと仗助も人参へと急いだ。
亀友のインフォメーション前に飾り付けられた色とりどりの短冊を遠巻きに眺めながら、億泰が呟いた。近くの机には子供たちが並び、こぞってペンを握りしめている。クリスマスや正月ほどではないにしても、店内の色が変わる年間行事の一つだ。どうやら祭りが催される地域もあるらしく、二本並んだ笹の隣にはポスターが掲示されている。
「なんでだよ。おめーイベント事好きだろ?」
去年は入院していた時期を除けば、一年中億泰と季節のイベントを楽しんだ。紅葉狩りにハロウィンにクリスマス。年越しも共に過ごしたし、花見にも行った。バレンタインですら、フェアメニュー全制覇だと意気込んで撃沈していたのに。
そんな億泰が嫌いな行事があるとは思わなかった。
「だってよぉ、願い事叶ったことねーだろ。」
「そうかぁ?」
「そーだよ。願いが叶うなんて言いながら、一つも叶いやしねえもん。まぁそりゃあそうなんだよ。あんな紙切れ1枚で何でも叶ったら誰も苦労しねえっつーの。」
億泰は左腕にかけたカゴに3本入りのごぼうを放り込んだあと、確か人参はあんだよな、と呟いた。
「まぁ、所詮紙切れっつーのはそうなんだけどよお。でもおめー、願い事のハードルが高いんじゃねーの?何書いたんだよ。」
「誰が言うかよ、ンな事。」
億泰は気にする素振りもなかったが、仗助は口にした言葉をすぐに後悔していた。
自分が昔書いたことといえば、まだ叶うかどうかも分からない『お金持ちになりたい』だとか、『新しいゲームが欲しい』とかいうごく小さいものが多かった。そして後者のほうは母や祖父がひっそりと叶えてくれたに違いない。
その中で、一つだけ叶わなかった事があるのを思い出した。『おとうさんができますように』だ。
じゃあ、億泰は?
「大体よぉ、七夕の話もゼータクなんだよ。自業自得のくせして、織姫と彦星は一年に一度でも会えるんだぜ?……いいじゃあねーか、会えるんだからよぉ。美談みたいにすんなよな。」
幼い頃に母を失い父が変わり、とうとう兄も失った億泰はもう、願うこともしなくなったらしい。母に会いたい、父を元に戻したい、そんな願いを短冊に込めたことは想像に難くない。そしてそれが叶わなかったことも。
たまらなくなった仗助は、鶏肉の色を見比べながら未だに文句を垂れている億泰の腕を掴んだ。
「なんだよ仗助。俺はいま真剣に肉を」
「俺よぉ!」
「うお、声でっけ。」
カゴ持って買い物してる不良なんてただでさえ珍しいのに、その片方が大声を出したとあれば周囲の客はそそくさと二人から離れていく。
勢い余っちまった、と少しの気恥ずかしさを感じた仗助は億泰から目を逸らして、それでも言葉を続けた。
「……今年願い事まだ書いてねーんだよ。おめー叶えてくれよ。」
今度は億泰が大声を出す番だった。
「ハァ〜〜?おめー俺の話聞いてたか?なんで俺がおめーの願い叶えなきゃなんねーんだよ!」
「俺の今年の願い事はよぉ!『今日これから友達のウチに泊まって夜通しゲームがしたい』だぜ!」
「……お、おう?」
意地でも今夜は一緒に過ごしてやると意気込んだ仗助の、勢いで押し切る作戦が功を奏したらしく、億泰はそれ以上の文句を言わなかった。
億泰の右手には選ばれし鶏肉が所在なげに佇んでいる。
「おめーの言うとおり、織姫だの彦星だの流れ星だのは信用ならねーからよぉ。手っ取り早くおめーが叶えてくれよ億泰。」
「まぁ、別にそんな事ならいいけどよぉ……。つーか、流れ星は関係ねえだろーが。」
腑に落ちない顔をしつつも承諾した億泰は、ようやくカゴに鶏肉を入れて歩き出す。もうひと押ししたい仗助は、億泰が好きなゲームの話を持ち出す。
「今日はよぉ、クラッシュバンディクー3やろうぜ。」
「それこの前クリアしたじゃあねーか。」
「何言ってんだよ、真エンディングがあんだろ。今日はトロフィーコンプするまで寝かさねーから覚悟しろよ。」
つい先日二人でクリアした難易度高めのアクションゲーム。全ステージクリアは数週間かかって成し遂げたが、真エンディングのためには再度全ステージを攻略しなくてはならない。しかも時間制限ありで。
真エンディングと聞いて、億泰は目を輝かせた。
「いやそれ超ムズいやつじゃねーかよ!臨むところだぜ。明日は学校行けねーと思えよな。」
「明日は土曜日だから授業は午前中だけだし、そもそも俺達不良だからたまには学校サボってもいいだろ。」
「さすが仗助!よっ、ぶど高不良代表、リーゼントのジョジョ!」
「なんだよそのだせえ二つ名みてーなの……まぁいいや、そんでおめーの願い事は?」
「ん?」
「俺の願いは叶うことが決まったんだから、おめーのも叶えようぜ。なんかねえのかよ。」
「あー……1のダイヤコンプ……?」
二人は思わず顔を見合わせた。シリーズ最高難易度と言われる1の、真エンディングを見るための条件だ。真エンディングどころか、半分程度しか進められずに積みゲーと化してるアレを?
「おめーやっぱ願い事のハードルが高すぎんだよ!」
「そうかもしれねぇなァ……でも、今年はおめーが叶えてくれんだろ?」
「当たり前だろ。おめーの願いはこの仗助くんが預かった!そうと決まればとっとと帰ろうぜ億泰!」
「おう!夜食用に多めに作るから、人参持ってきてくれ仗助!俺はこんにゃくと油揚げを取ってくるぜ!」
こんにゃく目掛けて小走りをはじめた億泰に負けじと仗助も人参へと急いだ。
