お酒事情(麻天狼)
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「……はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
カウンターに肘をついて、独歩が何度目か分からない溜め息をついた。
手元のグラスは半分空いてて、さっきまでは静かだったのに──
今はもう、ダムが決壊したみたいに、止まらない。
「ったくよォ……今日も上司に詰められて、
部下は報連相もできねーし、客は勝手に怒鳴ってくるし……なんなんだよッ!!」
バチン、とおしぼりを叩いて強調する独歩。
酔いがまわってきたのか、普段のクールなトーンよりも少し熱がこもってる。
「てか、あれ意味わかんなくねぇ?
“とりあえず怒っとけ”みたいな客マジで……マジでさぁ……!!」
「うんうん……わかるよ……」
「でしょ!? でしょ!!?」
あなたが相槌を打つと、独歩は思わず身を乗り出してきた。
目が本気。顔が近い。ちょっと熱い。
「俺さぁ……別に目立ちたくて働いてんじゃねーの。
ちゃんと真面目にやってんのにさぁ……なんで評価されねぇんだよ……」
一瞬言葉が詰まったかと思えば、ぽつりと漏れた本音。
「……たまに全部投げ出したくなるよ。ほんと、ぜんぶさ……」
あなたは静かに、おちょこにお酒を注ぎながら、
彼のグラスにもそっと追加してあげた。
「じゃあ、今日はそのぶんだけ、毒吐いてって」
「え……」
「私がいるうちに、全部吐いちゃって。独歩さんはさ、抱えすぎなんだよ」
それは怒ってるような、でも優しい声で。
独歩は、グラスをじっと見つめながら、ふっと笑った。
「……六花って、やっぱ変わってんな。
こんな俺の話、ちゃんと聞くやつ、滅多にいねーのに」
次の瞬間、彼はまたグラスをあおって、
そして、言葉の洪水が──また始まった。
「それでさぁ!今朝もまた上司が“報告書のフォーマットが違う”って……!!」
その夜の居酒屋には、ずーっと独歩の愚痴が響いていた。
でも、あなたは終始笑いながら、それを聞き続けていた。
(……さて。いつ寝落ちするか、見ものだな……)
────
「でさぁ……あのプロジェクトも……あー、もうどうでもいいや……」
独歩のグラスが空になったころ、テンションはピークを過ぎ、
言葉に少しずつ間ができ始めていた。
あなたが水を差し出すと、彼はぼんやりとそれを受け取って、
「……ありがと」
とだけ、ぽそっと呟いた。
先ほどまでの熱量はすっかり落ち着いていて、今はもう完全に”脱力モード”。
「話しすぎた……俺、めっちゃしゃべってたよな」
「うん。すごい勢いでずっと怒ってたね」
「……うっわ……だっせ……」
顔を両手で覆う独歩。
でも、それを見てあなたはちっとも「ださい」なんて思わない。
「そんなふうに思わないで。独歩さんが素で話してくれたの、嬉しかったよ?」
「……マジで?」
「マジで」
彼の肩が、すこしだけふっと緩んだ。
照れくさそうに目をそらして、それでも心は緩んでいるのが伝わる。
「六花ってやっぱり……変なやつ」
「それ、今日だけで3回目くらい聞いたよ?」
「うっ……」
そんなやりとりのあと、静かに時間が流れて──
気づけば、独歩はテーブルに突っ伏していた。
「……ん……すぅ……」
「寝た……」
嘘みたいに、ぐっすりと。
眉間にしわを寄せるクセが抜けきらず、でも安心してる顔。
あなたはそっと、彼の背中に自分の上着をかけた。
ちょっと冷房強めだったからね。
「おつかれさま、独歩さん。今日も頑張ったね」
そう小さく囁くと、独歩はふにゃっと笑ったように見えた。
寝てるのに、きっと、聞こえてたんだ。
