社畜ヒロインに優しくするヒプマイ達
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改札を抜けた瞬間、足元がふらついた。
夜のホームは人の波が途切れて、だけど肌にまとわりつくような疲労感が六花の体を重くする。片手には重たいバッグ、もう片方には書類の束。信号待ちの光がチラチラと視界に入り、気づけば目の前の段差に気を取られた。
「うっ」——
ほんの小さな段差につま先を取られただけなのに、避けきれずにバランスを崩す。次の瞬間には膝に鋭い痛みが走っていた。バッグが弾かれて、書類が空気を切って舞い散る。ペラペラと紙片が風に乗って踊るなか、目の前の視線が一斉に集まる。頬が熱を帯びて恥ずかしさが胸を締め付ける。
「ちょ、ちょっと……!」
慌てて四つん這いになり、膝の痛みをこらえながら紙をかき集める。手は震え、後ろから聞こえる足音と微かな声がやけに大きく聞こえる。
「大丈夫ですか?」
ふと声がして顔を上げると、そこにいたのは十四だった。慌てた目でこちらを見つめている。背中にはギターケースらしきもの。手には小さなブタのぬいぐるみ——アマンダがちょこんと抱えられていた。
「えっ、十四……?」
「えっ、誰かと思えば六花さん!?あのっ膝、血、出てないですか!?」
十四はシャツの袖で慌てて膝を覆う仕草をしながら、顔を真っ赤にしている。彼の動きは早くてぎこちないが、そこに漂う誠実さがしみる。
「恥ずかしい……本当にもう、何やってんだろ私」
六花が俯くと、十四はあわあわと跪いて紙を拾い始める。彼の指先は震えているけれど、ひとつひとつ丁寧だ。周りの視線なんて気にせず、十四はただただ必死に手伝ってくれる。
「す、すみません、僕、こういうとき慌てちゃって……でも、ちゃんと拾いますから!」
「いやいや、十四が謝ることなんて何も無いからね!本当にありがとう…!変なことに巻き込んでごめんね助かるよ」
六花はぎこちない笑みを返す。十四がまとめた書類を差し出すと、彼の指先が少し触れて、その温度に六花の心臓がキュッとなる。
「ねぇ、膝、痛くない?消毒した方がいいかも…待っててください、すぐ戻ります!」
十四はそう言い残して、小走りで改札内の小さなコンビニへ走っていった。アマンダはそっとベンチの端に置かれて、まるで「大丈夫だよ」とでも言うように見守っている。
十四、らしい。
彼のその不器用な気遣いが、なんだか嬉しい。膝の痛みはあるけれど、羞恥の熱は少し和らいでいた。
コンビニのレジ袋から消毒液とバンドエイド、ウェットティッシュを取り出して戻ってきた十四は、さらに慌てる。膝にそっとウェットティッシュを当て、消毒液を慎重に吹きかける。指先は細かく震えているけれど、動きはとても丁寧だ。
「もう…っ!本当に何から何までごめんね!
本当にありがとう、十四が居てくれて良かった」
「これぐらい全然平気っすよ!それより、しみませんか?」
「ちょっとしみるけど……でも大丈夫だよ」
「よかった。僕、消毒とか苦手だけど……六花さんのためならちゃんとできます!」
十四は真剣な顔で言って、貼るべき位置に慎重にバンドエイドを当てる。貼り終わると、ふっと肩の力が抜けたように小さく息を吐く。
「ありがとう、十四。本当に優しいんだね」
「だ、ダメっすよ!優しいって……そんなこと言われると僕……顔、真っ赤になりますから!」
十四はまた下を向いてしまう。可愛らしさが胸に刺さる。
「ねぇ……帰り、僕に送らせてくれませんか?」
「えっ?」
「膝も痛そうだし、ゆっくり帰りましょう」
片手には私の鞄まで持ってくれてる
「流石にこれ以上迷惑かけれないよ」
慌てて断ろうとしたけど
「今日の六花さんは、これぐらい優しくされてもいいと思います」
「十四…、ありがとう…!!」
十四は少し照れながらも、にこっと笑う
ギターケースを背負いなおし、
アマンダをそっとポケットに入れる仕草をして、二人はゆっくりと駅の外へ歩き出した。外の空気は冷たくて、膝の熱と対照的に心地よかった。
「十四はこんな時間に何してたの?」
「僕はバンドメンバーと練習っすよ
結構盛り上がっちゃって、気付いたらこんな時間になってました、六花さんこそ夜遅いのに、仕事でそんなに遅くまで?」
「そうなの……残業続きで終電間際になっちゃって。バタバタしてて気づかなかった」
「そっか……六花さんの職場って凄く過酷過ぎません?鞄も、めっちゃ重いっす……」
十四は慌てて、「気にしないでくださいっ!鞄持てて良かったです!僕、男っすから!!」
慌てて訂正する十四にクスッと笑ってしまう
「今日はあんな姿…恥ずかしいところ見られちゃったね」
「僕…、見てられなかったです。あのとき立ち上がれない六花さんを見て、もう……」
十四の声が震える。胸の奥で、守りたい気持ちが確かに伝わってくる。
「……そんなに頑張って……それで怪我したら、元も子もありません」
「……」
「ぼ、僕は……無理して頑張りすぎる人を見ると、放っておけなくて……」
その声は震えているのに、心からの真剣さが伝わってきた。
胸の奥がじんと温かくなる。
「……十四本当にありがとう、こんなに心配してくれる人がいるなんて…」
「ひゃっ!?あ、あ、あの……!ぼ、僕はただ……い、いえっ!ど、どういたしまして!」
耳まで真っ赤になって、慌てふためく姿。
だけどその一生懸命さが、なによりも心を救ってくれる。
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家の前まで着いたとき、十四は深く頭を下げた。
「ちゃんと送れてよかったです……!あ、あのっ、無理しないでくださいね……!」
「うん、今日はほんとにありがとう
絶対、近々お礼させて」
「っ……!!」
一瞬、彼の瞳がきらっと揺れる。
そして、慌てて踵を返しながら叫んだ。
「ま、また……!また困ったら言ってください!!」
夜道に残るその声を聞きながら、私は小さく笑った。
不器用だけど誠実なその優しさに、心がふんわりと温められていた。
膝の痛みはまだあるけれど、心は確かに軽くなっていた。
♡Fin♡
