社畜ヒロインに優しくするヒプマイ達
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金曜の夜。
残業を終えて会社を出ると、スマホが震えた。
画面に表示された名前を見て、一瞬固まる。
「……銃兎さん?」
電話に出ると、いつもの落ち着いた声が低く響いた。
『今から来れるか? 場所を送る』
それだけ言って、通話は切れた。
一方的だけど、不思議と悪い気はしなかった。
むしろ、心のどこかで待っていた気がする。
送られてきた地図は、会社近くの洒落たバル。
私は急いで足を運んだ。
┈┈┈┈⿻*.·
店の扉を開けると、すぐに見つけられた。
壁際のテーブルで、赤ワインを片手に座る入間銃兎。
鋭い視線がこちらに向けられ、心臓が跳ねる。
「こんばんは」
「お疲れ様。まあ座れ。立ち話するような場所じゃない」
淡々と促されて席につく。
テーブルの上にはすでにおつまみが並んでいた。
「…あの、何かありました?」
「別に大したことじゃないじゃない。ただ……六花がまた思い詰めてると思ってな…顔色だって良くない」
思わず息を呑んだ。
気づかれていたなんて。
「……そんなに酷いですか?」
「鏡で見てみろ。死にかけの社畜って顔だ」
言い方は容赦ないのに、その眼差しはどこか柔らかい。
私は苦笑して、グラスを手に取った。
ワインで乾杯すると、ふっと肩の力が抜けた。
「じゃあ……いただきます」
「あぁ。飲んで少しは血の気を取り戻せ」
一口ワインを口に含む。
芳醇な香りが広がって、少しだけ体が解けていく気がした。
「銃兎さんって、こういうとこ似合いますよね。なんだか……」
「……なんだ?」
「刑事っていうより、やっぱり大人の余裕ある人って感じで」
銃兎は小さく笑った。
「そうか? 俺はただの悪徳警官だぞ」
「ふふ、そんなこと言って……」
ぶっきらぼうに見えるけど、もうグラスを追加で頼んでくれている。
メニューも開かず、さらっとおすすめを注文。
「ここの前菜がうまい。まずは食え。」
「…わ!めっちゃ美味しそう…!!」
さっきまで「もう無理……」って思ってた自分が嘘みたいに、
手が勝手にフォークを伸ばしていた。
一口食べた瞬間、
口いっぱいに広がる塩気と甘みのバランスに、思わず目を丸くする。
「凄く美味しいですっ……!」
「ほんとに美味そうに食うな」
「だって、疲れ全部吹き飛びますよ……!」
「それはそれで、料理人冥利に尽きるな
……まぁ、作ったのは俺じゃないが。」
冗談めかしてワインを口にする彼。
その仕草が妙に絵になって、
少しだけ心が熱くなる。
┈┈┈┈┈⿻*.·
「仕事、大変だったんだろ」
グラスの縁を指でなぞりながら、銃兎さんが問いかける。
「はい…また急な案件振られて……終電ギリギリかと思いました……。」
「相変わらずブラックだな。」
短く返すだけなのに、ちゃんと聞いてくれているのが分かる。
さらにグラスが空くたび、自然に次を頼んでくれる。
「……それでも終わらせたんだろ。」
「はい……。」
「なら、胸張れ。文句言うやつがいたら、俺が全部論破してやる。」
思わず吹き出して笑った。
「ふふ、銃兎さん、怖い顔で上司論破しそうですね。」
「当たり前だ。」
わざと真顔で言うから、ますます笑ってしまう。
そんな六花を見て、銃兎の口元が少しだけ緩んだ。
ワインを飲み干して、ふーっと肩の力が抜けた六花。
さっきまで職場の愚痴をぽろぽろこぼしていたのに、今は少し笑えている。
「……なんか、スッキリしました」
そう言うと、銃兎がグラスをくるりと回しながら、少しだけ満足げな顔をする。
「吐き出すだけ吐き出したか?」
「はい……銃兎さん、聞き上手ですね」
「人の嘘と本音を見抜くのが仕事だからな。黙ってても分かるが、口に出した方が楽になるだろう」
その淡々とした言い方が逆に優しい。
六花がにこっと笑うと、銃兎は一瞬だけ視線を外す。
「……笑うなら最初から落ち込むな」
「ええっ、無理ですよ……!」
「ったく。お前は素直すぎる」
そう言いつつも、店を出るときは自然にドアを押さえて先に通してくれる。
夜風が涼しくて、六花は小さく息を吐いた。
「少し歩くか」
と、銃兎が言うので並んで歩く。
飲みすぎてないかと心配したのか、歩く速度がさりげなくゆっくりで、六花も気づけば安心して足取りが軽くなる。
「さっきの上司、次も同じこと言ったら俺に言え」
歩きながら、さらっと言う銃兎。
「え、でも……」
「でもじゃない。俺が片付ける」
短いけど頼もしい言葉。
六花はつい、感謝の気持ちがあふれて「……入間さん、優しいですよね」って言ってしまう。
すると、銃兎は一瞬黙ってから、
「優しくなんかない。ただ……」
と、横目で六花を見て
「お前が潰れたら、俺が面倒見る羽目になるからな」
と、わざとぶっきらぼうに言う。
でも、その声はほんの少しだけ柔らかい。
六花は胸がじんわり温かくなって、
「じゃあ、これからもちゃんと頼らせてもらいます」
と言ったら、銃兎は口元を僅かに上げて
「……勝手にしろ」
と答える。
その帰り道は、仕事帰りとは思えないくらい心が軽くて、六花はちょっとだけ足取りが弾んでいた。
♡Fin♡
