短編(雲雀恭弥)
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廊下を歩いていると前方から美人の女性が歩いてくる。ハイヒールの音が高らかに響いた。
「名前ちゃん!」
彼女は私を見つけると駆け寄って前から抱き締められる。彼女からふんわりと甘い香水が漂ってきた。ボンゴレ霧の守護者の直属部下である彼女は私のことを可愛いがってくれるお姉さんである。
「名前ちゃんのとこに来た新しい部下ね、駄目だわ」
「え?」
私が聞き返すと彼女は困った表情を見せる。そう、新しく入って来た部下がいるのは知っていた。その女性は大和撫子で仕事も完璧、出来た人だと噂に聞いていた。
私は雲の守護者の部下の下っ端のさらに下っ端である。非戦闘員なので部屋に閉じ籠ってひたすら書類やデータを処理する事務員であるので噂しか聞かない。
「……見ちゃたのよ、あれ、男たらしよ。あっちこっちの男、落としては捨て被害者続出よ」
「うわー」
「さすがに上司に手出してはないわよね?あの上司だしね」
「さ、さすがにそれはないかと!」
「でも、あの女、イケメン好きだからやりかねないわよ」
まあ、顔は整っている。というか、守護者全員イケメンですね。
「大丈夫ですよ、きっと、たぶん」
私は遠い目をして現実逃避した。
「残業かな……?」
処理が追い付かないのだ。仕事部屋に戻るとソファーから黒い頭が見えた。また、来たのかと溜め息を付く。ソファーに寝転がってすやすや眠る男性。彼、雲の守護者、雲雀恭弥が入り浸っているのだ。ふらっと来ては寝ている。本来は直属部下じゃない限り、下っ端の下っ端がほとんど関わることはないのに。
私は椅子に座り、書類に目を通す。なんで、この部署は人員がいないんだと常々に思う。時間帯は10時近くになる。さすがに切り上げようと雲雀さんが寝ているソファーまで近付いた。
「雲雀さん、そろそろ私は帰りますよ」
雲雀さんを覗く状態で声を掛ける。彼はうっすら目を開け、こてんとした表情をした。
「……帰るの?」
「はい、雲雀さんもそろそろ戻られた方が……」
「やだ」
普段は普通に帰って行くのに駄々をこねるのは珍しい。
「あの女がいるからやだ」
「え?!」
「最近、入って来た女」
「まさか、口説かれたりしちゃったり……?」
雲雀さんはこくりと頷くと不機嫌そうに目を細めた。
「うざい」
お姉様、まさかの上司を口説いていました!驚きです。
「それは御愁傷様です」
「あれ、どうにかならない?」
「辞めさせない限り無理じゃないですか?」
「仕事は出来るんだよ」
「ドンマイです」
「……君のとこに行っちゃ駄目?」
雲雀さんが私の右手に自分の左手を絡めてくる。
「いやいや、駄目ですよ、恋人でもないし」
「ケチ、恋人ならいいの?」
「うん?」
「そう、なら、君の恋人にしてよ」
「へ?」
雲雀さんに腕をぐいっと引っ張られた。
数日後、前方から彼女がやってきて、前回と同じように私を抱き締める。彼女が怪訝な顔をした。
「あれ?香水をつけはじめたの?」
「つけてませんよ?」
私は首をかしげ、自分の袖口を嗅ぐ、微かに匂いがする。あ、これ、雲雀さんの匂い。だんだん、自分の顔が真っ赤になっていくのがわかった。それを見た彼女は私の腕を掴みとる。
「なに!なに!気になる!話を聞くわ!」
「なんでもないです!!」
ぐいぐいと引っ張られ、部屋に連れてかれた。根掘り葉掘り聞かれ、私はぐったりしてしまった。
「私の可愛い名前ちゃんがあああーー!!」
「いや、貴女の物じゃないでしょう」
自分の上司に愚痴を聞いてもらっている。高級チョコレートを持参して。
「私の可愛い可愛い名前ちゃんが狼に喰われたわ!!うわーん!」
「あの男が彼女の仕事部屋に入り浸っている事態、フラグだったのでは?」
「くっ、やっぱり、あの男、嫌いだわ」
「そこだけは、同感です」