雲雀とホラー
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※ネームレス
下校中の事だった。雨がザアザアと降る中、通学路を一人で歩いていた。前方に赤い傘を差した女性が歩いているのが、視界に入る。女性の顔は傘で隠れて見えない。しかし、すれ違い様に、女性の顔をしっかりと見えた。美人だ。表情はにっこりと笑っていた。
次の日もまた、雨だった。そして、赤い傘を差した女性が前方から歩いてくる。表情はまたしても、にっこりと笑っていたのだ。
毎回、雨の日に限り、その赤い傘を差した女性を見るようになった。あのうわさを聞くまで私はまったく気にしなかったのだ。
数日後、学校であるうわさが立っていた。赤い傘の女のうわさを。雨の日によく出るらしく、女の表情が笑っている時はまだ良いらしい。表情が変わったなら、何かしら起こるらしい。
そんなうわさを聞いた私は真っ青になって、慌てて応接室に向かった。
今日は雨の日だ――。
「恭弥くん、お願い!! 一緒に帰って!」
この通りと両手を合わせて、頼み込んだ。不機嫌な顔した幼なじみの雲雀恭弥に。
「嫌だ」
私の願いは直ぐ様、玉砕した。
「お願い! 恭弥くん!」
「……僕と学校では関わらないじゃなかったのかい?」
恭弥くんは応接室に飛び込んだ私を見て、すごく驚いていた。そりゃあそうだ。中学を入学した時にそう宣言したのだ。私は目立ちたくなかった。しかし、背に腹はかえられぬ。
「で、理由は?」
赤い傘の女のうわさと実際に見たことを話した。
「しょせん、うわさじゃないの?」
ぐうの音も出なかった。うわさはあくまでもうわさだ。
「恭弥くんは私に何かあってもよいの?!」
「別に」
恭弥くんは私を見る事もなく、書類に目を通した。
「恭弥くんが冷たい……昔は優しかったのに」
私は俯いた。しょせん、ただの幼なじみ。分かっていた事だ。はぁと溜め息が聞こえた。
「……これが済んだらね」
私はぱっと顔を上げる。
「一緒に帰ってくれるの?!」
「仕方がないからね」
「恭弥くん、大好き!」
恭弥くんに抱き付くとうざそうな顔をしたのだ。
「はいはい」
学校の玄関前で恭弥くんが黒い傘を開き、差した瞬間、一緒に傘に入った。
「自分の傘差しなよ」
恭弥くんの腕にしがみ付く。私は首を振った。恭弥くんは諦めた様子で歩き始めた。
しばらく歩いていると前方から赤い傘を差した女性が歩いてくるのが見えた。恭弥くんの腕にぎゅっとさらにしがみ付く。すれ違い様に見た顔はすごい形相していた。
「ひっ」
驚いて、悲鳴を上げそうになる。しかし、あの女性は何事もなかった様に通りすぎたのだ。振り向くとあの女性は居なくなっていた。
「恭弥くん、見た?!」
帰宅後、開口一番に恭弥くんに尋ねる。
「見てないけど」
「え? 私だけ見えてたの?」
「そうみたいだね」
私は恐怖でカタカタと体を震わせた。
「……表情、変わっていたの?」
「すごい形相だった」
恭弥くんは少しだけ考え込む。
「しばらくは一緒に帰ってあげる」
あれっきり、赤い傘を差した女性を見ることもなくなった。私は何事もなく、過ごしている。
雨の日になると思い出す。憎悪に満ちた顔を――。
下校中の事だった。雨がザアザアと降る中、通学路を一人で歩いていた。前方に赤い傘を差した女性が歩いているのが、視界に入る。女性の顔は傘で隠れて見えない。しかし、すれ違い様に、女性の顔をしっかりと見えた。美人だ。表情はにっこりと笑っていた。
次の日もまた、雨だった。そして、赤い傘を差した女性が前方から歩いてくる。表情はまたしても、にっこりと笑っていたのだ。
毎回、雨の日に限り、その赤い傘を差した女性を見るようになった。あのうわさを聞くまで私はまったく気にしなかったのだ。
数日後、学校であるうわさが立っていた。赤い傘の女のうわさを。雨の日によく出るらしく、女の表情が笑っている時はまだ良いらしい。表情が変わったなら、何かしら起こるらしい。
そんなうわさを聞いた私は真っ青になって、慌てて応接室に向かった。
今日は雨の日だ――。
「恭弥くん、お願い!! 一緒に帰って!」
この通りと両手を合わせて、頼み込んだ。不機嫌な顔した幼なじみの雲雀恭弥に。
「嫌だ」
私の願いは直ぐ様、玉砕した。
「お願い! 恭弥くん!」
「……僕と学校では関わらないじゃなかったのかい?」
恭弥くんは応接室に飛び込んだ私を見て、すごく驚いていた。そりゃあそうだ。中学を入学した時にそう宣言したのだ。私は目立ちたくなかった。しかし、背に腹はかえられぬ。
「で、理由は?」
赤い傘の女のうわさと実際に見たことを話した。
「しょせん、うわさじゃないの?」
ぐうの音も出なかった。うわさはあくまでもうわさだ。
「恭弥くんは私に何かあってもよいの?!」
「別に」
恭弥くんは私を見る事もなく、書類に目を通した。
「恭弥くんが冷たい……昔は優しかったのに」
私は俯いた。しょせん、ただの幼なじみ。分かっていた事だ。はぁと溜め息が聞こえた。
「……これが済んだらね」
私はぱっと顔を上げる。
「一緒に帰ってくれるの?!」
「仕方がないからね」
「恭弥くん、大好き!」
恭弥くんに抱き付くとうざそうな顔をしたのだ。
「はいはい」
学校の玄関前で恭弥くんが黒い傘を開き、差した瞬間、一緒に傘に入った。
「自分の傘差しなよ」
恭弥くんの腕にしがみ付く。私は首を振った。恭弥くんは諦めた様子で歩き始めた。
しばらく歩いていると前方から赤い傘を差した女性が歩いてくるのが見えた。恭弥くんの腕にぎゅっとさらにしがみ付く。すれ違い様に見た顔はすごい形相していた。
「ひっ」
驚いて、悲鳴を上げそうになる。しかし、あの女性は何事もなかった様に通りすぎたのだ。振り向くとあの女性は居なくなっていた。
「恭弥くん、見た?!」
帰宅後、開口一番に恭弥くんに尋ねる。
「見てないけど」
「え? 私だけ見えてたの?」
「そうみたいだね」
私は恐怖でカタカタと体を震わせた。
「……表情、変わっていたの?」
「すごい形相だった」
恭弥くんは少しだけ考え込む。
「しばらくは一緒に帰ってあげる」
あれっきり、赤い傘を差した女性を見ることもなくなった。私は何事もなく、過ごしている。
雨の日になると思い出す。憎悪に満ちた顔を――。