24話
夢小説設定
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「あ、苗字ちゃん。いい所に」
言葉を聞き終わる前にスタートダッシュを切る。が、慈悲なく捕まった。
「いやぁぁ…!これから小南先輩とどら焼き食べるんですよぉ!うぇぇん!誰かー助けてー!ひーとーさーらーいー!」
「どうして君は俺が探してる時は毎度そうも警戒するかな」
「アンタがわざわざ私を探してるなんてロクな用事じゃないのがわかりきってるからだよ、私だって学んでるんだよコンチクショー!」
「そっか、ならまともな用事を頼もうかな」
「へっ…???」
迅さんの用事はバイトに行った烏丸くんが忘れた携帯を届けて欲しい、という内容だった。普通過ぎて逆に怖い。
携帯の地図アプリを片手にさっきから似たような場所をグルグルしている。………ここどこぉ…。
烏丸くんに連絡すれば早いんだろうが、連絡手段が彼のも自分のも私の手の中なんだよ…。つまり電話かけたところで出るのは私しかいないわけで……意味が無い…!
というかさ、私の携帯のGPSおかしくない?海の上にいるんだけど。海なんて一番近くても車で移動する距離じゃんか。
「あれ、苗字ちゃんだ」
「! い、犬飼パイセン…」
「どしたの?めっちゃ不審者じゃん」
「う、うるせーですよ。あっ、ちょっとこっち来ないで…!」
ニヤニヤしながら近寄ってくる犬飼先輩から目は逸らさず後退りしながら距離を置く。外面と刺さる感情が一致していないとかでカゲ先輩がめっちゃ嫌ってる人だ。それにつられてちょっと苦手だったんだけど、この野郎そのことを知ってからというもの面白がって会う度にちょっかい出してきやがって…!今じゃ天敵に等しい存在だ。
「何か困ってるなら助けてあげようか?先輩に相談してみなよ」
「困ってない!困ってませんから!ノーセンキュー!」
「でもキョロキョロしてたよね。何か探してるなら手伝うよ」
うわぁ、この人全く引かない…。いつもの事ながら、こんなにもハッキリ拒否ってるのにどんな神経してんだ。
「そういえば緑川との模擬戦とか見たけど最近すごい頑張ってんね。でもあんなに拘ってた狙撃手は諦めたんだ」
うぐっ、痛いとこを突いてきやがる。あと諦めてはない。小休憩みたいなものなんだからな。
「苗字ちゃん、才能なかったからねえ」
「……もうヤダ!カゲ先輩助けてー!」
遭遇してからずっと逃げる隙を伺っていたけど、犬飼先輩が喋る度にキリキリと胃を締められるような感覚にそんな余裕もなくなる。わざとだよ!この人絶対に私が嫌がりそうなワードばっか選んでるし!
カゲ先輩にヘルプを求めて電話をかけるが、呼出音はするものの出る気配はない。後退りなんてとっくにやめて去ろうとしてるのに、笑いながら何故かついてくる。しかもこっちだけ競歩。コンパスの差ぁ…!
どうやって撒こうかと暫く土地勘のない場所を彷徨っていると、曲がり角で誰かに激突した。鼻…!鼻打った!
「苗字…?」
「その声は、烏丸くん!!」
お目当ての人発見!用事より先に犬飼先輩を何とかしたくて、烏丸くんの後ろに回り込み盾にするように犬飼先輩との間に入ってもらう。
「目的!烏丸くんを探してただけなのでもう目的達成しました!」
「…そっか、残念。もっと話したかったんだけどね」
「ぴぇっ」
目が笑ってない!バイバイ、とにこやかに手を振って去っていったのだけど、出来ることなら一対一では会いたくない。
「なんだったんだ?」
「通り魔に絡まれたみたいなものだと思って」
「そうか」
自分で言っといてなんだけど今ので納得しちゃうんだ!?
「で、苗字は何か用だったか?」
「あ、うん。迅さんから頼まれて烏丸くんの忘れ物持ってきた」
「…ありがたい、けど今から玉狛支部に戻るんだが」
「マジか。バイトは?」
「終わった」
私が迷子になってる間に…。つか玉狛帰ってくるなら私完全に必要なかったじゃん。
「つまり迅さんの企みか…」
「だろうな」
「迷子になった上に犬飼先輩に会っただけなんだけど…!」
「戻ったら理由を聞いてみればいいだろ」
「教えてくれると思う?」
「思わない」
ですよね!
結局迅さんの意図は分からず仕舞いで玉狛支部まで烏丸くんと仲良く並んで帰った。
そしてその夜、LINEの知り合いかも?の欄に犬飼先輩らしき人が入ってて戦慄が走った。誰だ、あの人に私のID教えやがった奴。もちろんブロックした。
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