何度も鍔迫り合いになる。何とか拮抗しているものの、基本的な剣術では私が幾分も劣る為、そうなってしまうといつかは追い詰められる。
刃のぶつかり合う甲高い音が響く。





太刀川さんが大きく孤月を振りかぶる。その攻撃を防ぐ為に右手のスコーピオンを握る手に力を入れた。
刃と刃がぶつかり合い再び力の押し付け合いになる、はずだった。


｢――は？｣

パキリと大した抵抗も手応えもなくスコーピオンの刃が折れる。強く踏み込み斬りかかったせいで力の向ける先のなくなった勢いは殺せず、太刀川さんの体勢が崩れた。
その隙を見逃すはずもなく、身体を反転させながら左手のスコーピオンを上からその無防備なうなじに突き刺す。

｢ッッた！やっと一本！！｣

私の苗字の右側、4つ続く×印の後に○が追加される。
小さくガッツポーズをして初の白星に喜んでいると、大して余韻に浸る暇もなく再び太刀川さんのトリオン体が五体満足で現れる。もうちょい休憩させてくれたっていいのに。


｢なあ、今のどうやったんだ！？もっかいやれよ！1回分勝ちをやるからさァ！｣

わお、強者の傲り極まれりだなぁ。というかそれ言いながら本気で襲いかからないで欲しい。その時点で勝ちを譲ってくれる気ないだろ。譲るという言葉の意味を辞書で調べてこい。

たださっきなんとなく出来ただけの新技だからもっと練習してから戦術に加えたいんですがー…。
反論したいところだが期待のこもった目で見られてる上に、それ以外の選択肢は許さないとでも言いたげに剣戟が止まない。
まず成功するだろうか…？とっさに出来たけども2回目も出来るとは限らない。……でもやらないとダメなんですよね、ハイ…。

えーっと、どうやったけな…。確かスコーピオンの起動は普段通りで、がわ（・・）を残して中のトリオンを吸い取る。大規模侵攻の時にトリオンキューブを体内に戻したような感覚で。

｢よっし、出来た！て、あ……｣

出来たのはいいけど、その防御力皆無のスコーピオンで正面から太刀川の攻撃を受けて止めて、私は頭から真っ二つになった。ンッンー、10本終わるより先に帰りたいよぉ…。