よんじゅうななわ
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「そういや贄犠ってさ、なんで最近まで呪術師の誰にもバレなかったの?」
ふと思い付いた疑問だった。軽い気持ちで贄犠に問い掛けると、贄犠は一瞬目を見開いて、少し困ったような薄い笑みを浮かべながら答えた。
「なんで、だろうね…」
「贄犠…?」
「ごめん、私も分からない」
「俺は全然いいんだけど、なんか聞いちゃいけなかった?」
「いや大丈夫。ただ理由は亜儚達からも教えられてないや」
「そっか」
そんな話をした日の夜。自室で眠りについていると、突然大きすぎる呪力を感じた。言葉では上手く言い表せない、恐怖を一気に駆り立てるような禍々しい呪力。
咄嗟に飛び起き上がりベッドから抜け出すが、足に上手く力が入らず床にしゃがみこむ。俺の荒い息遣いだけが聞こえる部屋で、ケヒッ、と宿儺の笑い声が響いた。
「そうか。隠しているのは感じていたが、まさかこれほどか…!」
心底愉快だと言わんばかりに宿儺が笑う。その声が頭の中でぐるぐる回って、気分が悪い。
たった一瞬だった。だけどその一瞬で尋常じゃない呪力をまるで暴力のようにぶつけられ、それでいて無遠慮に加減なく腹の中を掻き混ぜ蝕み侵していく、そんな感覚。
なんとか呑み込んだが、いっそのこと胃の中のものを全部吐き出してしまった方がまだ楽だったかもしれない。
「どうした小僧?これほどまでに愉快なものはそうないというのに、何故這いつくばっている?お前も笑ってみせろ。
あの女、始まりはたかが脆弱な人だった分際でこのような域に達しているとは、称讃に値するぞ?」
宿儺の言葉に言い返すことすら出来ずに、酷く息苦しい胸を押さえて耐えて、なんとか呼吸が落ち着いてくる。落ち着くまでを時間にしたらきっと30秒にすら満たない。だけど何時間も耐え続けたかのような疲労が襲う。
機嫌の良さそうな声色と笑い声を残して、現れていた宿儺の口が消えた。
絶不調な体に喝を入れ部屋の外に出ると、隣室の伏黒も同じタイミングで扉を開けていた。伏黒の顔色は真っ青と言っていいほど悪くて、俺も多分他の人からしたら同じように見えてるんだろうなって思う。
「伏黒、さっきのって…」
「…分からねぇ。今は先輩達はいねえから、まず釘崎の様子を見に行くぞ」
「おう」
贄犠の名前が出なかったのはきっと伏黒も理解してるからだ。さっきの呪力が贄犠のものだと。
女子寮の釘崎の部屋の前に着き、声を掛けたが中から返事はない。もしかして倒れているのではないかと、強めに扉を叩き再度声を張って呼び掛ける。これで出てこなかったら無理やり入るかといったところでドアが開き、今にも死にそうな表情の釘崎が出てきた。
「うるさい…聞こえてるわよ…」
「釘崎、大丈夫か…?」
「…昨日の夜食べた物全部戻したら少しはマシになった。あのバカ、絶対殴るわ…」
「やっぱ贄犠、だよな。あれ」
「アイツ以外いねぇだろ」
「なまえの奴、最近あれこれやらかし過ぎでしょ」
そして3人で次は贄犠の部屋を目指す。贄犠の部屋は釘崎や真希さんとは離れた位置にある。部屋割りは五条先生が決めてるっぽいけど、先生はこういうのも予見してたのかな。
「つかさ、贄犠って立ち位置微妙なんだよな?さっきの大丈夫なの?」
「まあ確かに。あれは絶対他の術師も気付いたでしょうね」
「どの程度の範囲まで広がったか把握出来ねぇが、デカすぎて逆に発信源を探せるようなレベルじゃねぇだろ」
「そっか。じゃあ贄犠がどうこうされるってのはないんだな」
「いや断言は出来ねえ」
「何かあっても五条先生にどうとでもしてもらえばいいわよ」
その手があったか!五条先生って贄犠に関して過保護だしな。いや五条先生に限らず、皆が贄犠にはつい過保護になってんだけど。
でも五条先生は俺らより酷いっつーか、実習の時とか半分くらい贄犠をガン見してるし。大した呪霊じゃなくとも贄犠の手助けをしたいのか、飄々としてるように見えても、手だけは所在なさげに動いてるし。
まあ取り敢えず先生に任せりゃ絶対に悪いようにはならないはずだ。先生が任務から帰ってきたら頼まねえと。
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