よんじゅうごわ
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「あーもー!またシクった!」
今日は先日の役立たずっぷりを改めて反省して術式の練習をしている。監督の亜儚もはじめの方は隣で教えていたのに、今やぷかぷか浮かびながら私の失敗を眺めるだけだ。
「ねぇ、なんかコツとかないの」
「お前は歩くのにコツが必要か?」
「…じゃあ蝕衰の領域展開を使えた時みたいに補助みたいなやつは」
「百ほど死んでも構わないなら」
は、ら立つ…!構うに決まってんだろうが。
「何より、フラクタスの場合は領域展開に頼るべきではない」
「なんで?もし仮に領域展開を使える相手と戦うような事態になったら使えた方がいいでしょ?
一度使えたんだし練習すれば出来るんじゃないの…?まあ今は全く出来る気しないけど」
「対抗策としては正しいが、フラクタスであれば例外だ。まず練度や精度で負ける。あれあくまでも蝕衰の領域展開であり、フラクタスのものではないからだ。
領域展開とは術式を付与した生得領域を呪力で具現化すること。術式と同じく、胃の腑に落ち蝕衰と同化した際に生得領域も混じったのだろう。だが、本来生得領域とは心のうち、つまりはフラクタスが蝕衰の領域展開を使えること自体あってはならない。
しかし先程言ったように一時は蝕衰そのものであったからこそ、威力の落ちた劣化版であれば使えはする。劣化版の領域展開だから相手が誰であろうと領域が圧される。
有り余る呪力で領域の端がフラクタス自身にも掴めない程度には出来るにしても、必中必殺は恐らく見える範囲のみ。せいぜい視界内にいる広範囲の雑魚専用だろう」
ダメじゃん…!つーかなんだよその情報…、初耳すぎるわ…。お前の小出しにするのホントになんなわけ。重要なことはまとめて言っとけよ。
「故に領域展開よりは、術式や呪力による身体強化に努めるべきだ。術式が伸びないのであれば後者に取り組め」
「身体強化って言っても元々の身体能力が他の術師より劣ってるから、あんまり意味なくない?」
筋トレもしてるけど、今まで呪術師としてやってきた人達や例外の虎杖とは差がありすぎる。今後は分からなくとも早々に追い付けるものじゃない。
「何を言っている?」
「いやだから、」
「もう己の肉体がどれだけまでなら耐えられるのかは知っただろう。細かい呪力操作がお前に出来るとは考えてない。宿儺の器のように拳などの一部位にのみ呪力を乗せることだけに専念してみろ。お前の全力であれば無傷で耐えきる者はそういない」
「…亜儚も?」
まだ知らないことは沢山あるけど、コイツが殺せるのであればプラマイゼロどころかプラスに傾く。
亜儚は私自身のことは時が来るまで、などと言って話さないものの、術式や戦い方については口にする。その為に傍にいるのを許していると言ってもいいくらいなんだから。
何より殺したい呪いの死に様を期待して問いかけた。
「私も例外ではない。無論、当たればだが」
………。あのさぁ!上げて落とすのやめてくんない!?期待したじゃん!もう死んどけよ!当たらないから困ってるんだろうが!
苛立ちを隠しきれずガシガシと頭を掻き乱す。そんな私を見守るようにじっと見つめるアイツの目が大嫌いだ。それでいてこちらを挑発してきて、攻撃してみろとでも言いたげだ。あーもう、練習するよ!すればいいんでしょ!絶対当ててやる…!
そうして空中を揺蕩う亜儚に拳を振るうが毎度の如く霞のように全く手応えがしない。
「何を恐れる?お前の呪力はそれ程度ではない」
うっさいな。黙って殴られてろよ。
「まだだ。術師と関わり出して魂に身体が馴染むのも早まった。もっと出力を上げられる」
んなこと言って失敗したら怪我するのは私だろうが。
「敢えて実体のない箇所を当ててやってるが、愚直にしか攻撃出来ぬのなら本来であれば掠ることすらない」
だからぁ…!
「うるっせぇんだよ!!」
溜まった苛立ちを込めて、思い切り拳を振り抜いた。亜儚の全身が霧散し消え去ったが、こんなもので殺せたわけもない。
振り抜いたその先に薙ぎ倒された木々、遠くまで大きく抉れた地面。そしてそれを避けてる野薔薇。エッ、なんで野薔薇?
「なまえ、アンタ…殺す気か!」
「いやごめん、マジで、本当に。つかいつからいた?」
「ついさっきだよ!アンタの呪力追って着いたと思ったら攻撃されるからビビっただろうが!」
キレてる野薔薇に胸倉を掴まれガクガクと揺らされていると、消えた亜儚が再び形を取り戻し木の上に座っている。
「惜しいな。もう少し左だったか」
亜儚の姿が重なってこちらからは見えていなかったのと、今のセリフとで完全に確信犯だ。
「てめぇが原因か、こんのクソ呪霊が!」
私の首元は放さないまま、亜儚のいる木を蹴りつける野薔薇の怒りは真っ当なものだが、こうして見るとまるで不良だな。野薔薇って先日のこともあるし、伏黒より番長とか似合いそう。
苛立ちはとっくに萎えて経緯を見守っていると、瞬く間に亜儚が背後に回り、馬鹿にするように囁く。
「あの出力ならせいぜい二割、三割だ。拳に集中させるべく呪力が他の部位に流れすぎていた。呪力操作をもう少しは磨け」
それだけ言い残し、今度は完全に姿を消した。
そしてそうなると残る問題はただ一つ。
「なまえー…?」
「待って、タンマ。今のは亜儚の仕業だったじゃん。ね?」
「アンタが呪力感知出来てればよかったでしょうが」
「正論すぎる」
これからどうやって野薔薇の許しを乞うかである。正直術式の練習より苦労するであろう今からを思い、全てを諦めることにした。
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