よんじゅうさんわ
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寂れた祭壇に手足を縛られた状態で転がされる。縛らずとも私はまだ這いずることすら出来ないというのに。
大人の気配がなくなれば、暗いその空間にいくつもの目が光る。暫くすると足の先から痛みが走って。カリカリカリと、私を餌と判断した鼠達が身体の端から捕食する。
ちょっとずつ、ちょっとずつ。いっそのこと一気に食べてくれれば、痛みも意識もなくなれば、それが可能ならどれほど救われただろうか。
お腹が減った。喉が渇いた。届かぬ場所に置かれた食料に首を伸ばすがあと少し足りない。
これで犬神様の祟りは鎮まるだろうかと老人が呟く。
届かない。あと少しなのに。あと、少し。口からはもう声が発せず、空気だけが漏れ出る。
生に縋り付く私を何人もの老人が囲んで見下ろす。その中の1人は刃のよく研がれた斧を手にしている。
犬神様、犬神様、どうかお怒りをお鎮めください。贄を捧げます。貴方様と同じように、この人間の幼子を捧げます。
何の話かなんてわからない。ただお腹がすいた。ひたすらに食べ物に向かって首を伸ばして、すべてが終わった。
身体を清めるのだと水の中に落とされる。暫くしたら引き上げられて、もう一度。十ほど繰り返しやっと終わった。
美しい刺繍の施された白の装束を身に纏い、森の奥に住まう大蛇の前へと差し出される。ペロリと丸呑みされて、皮膚が、肉が、骨が、溶けていった。
─────
「なまえ……なまえ…」
「………」
「任務前に寝てんじゃないわよ」
「………」
ぺしりと頭を軽く叩かれ意識が覚醒する。どうやら任務へ向かう車の中でいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
まだ夢の中で感じた痛みが身体に残ってるものの、どこも欠損はしておらず、五体満足だ。手をグーパーしてみても問題は無い。
ただ中々死ねない夢の後は精神的にキツい。臓腑を食われる瞬間とか思い返してしまうともう最悪だ。
「聞いてんの?」
「…うん、大丈夫。起きた」
「夢は、」
「いや、寝惚けてただけだよ。夢は…何も見なかった。
ごめん、ついウトウトしちゃって」
「そう。ならいいわ。だけど言わせてもらうと、アンタ嘘下手よ」
下手かぁ。まあ確かに上手ってわけでもないな。切羽詰まってたら一応それなりの嘘もつけるんだけどね。
「なまえが酔うからって助手席にしたのが逆にダメだったわね。虎杖変われ」
「さすがに今は無理なんだけど」
「じゃあ仕方ないから1歩譲ってなまえには私の膝貸してあげるわ」
「それ何を譲ったの?しかも贄犠も車走ってる間は動けねえからね?」
話を聞いてるとちょっとずつ身体の痛みも落ち着いてきた。あと後部座席に4人はダメだろ。
「すいません、どっかコンビニ寄ってもらっていいですか」
「いっスよ」
伏黒の要望に新田さんがカーナビを触ってコンビニを探す。
「いやわざわざコンビニまで行ってもらうほどじゃないから大丈夫だよ」
「…俺が喉乾いたんだよ」
「うーん…伏黒は私以上に嘘下手だと思う」
「せめてトイレくらいにしときなさいよ」
「うるせえ」
そんなことを話してるうちにコンビニに到着し、新田さんが任務前の激励っス!と飲み物を奢ってくれた。
虎杖だけ冒険してすごい奇抜な新作を選んでたけど美味しくはなかったようで、しょぼしょぼした顔でなんとか飲み切ってた。まあ新作って当たり外れあるよね。どんまい。
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