よんじゅうにわ
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五条先生に逃げ切られた虎杖と野薔薇が帰ってきて、皆で輪になった状態で座る。
「えっと、何を話そうか…」
「全部。全部よ」
「そうだね。じゃあちょっと長くなるけど私の知ってることは全部話すよ」
そうして何度も繰り返す生死、呪いに狙われる原因となった生贄としての性質、底のない呪力の理由、毎夜死に続ける悪夢、思いつく限りの自分のことについて全て吐き出した。
どう思うだろう。どう感じるだろう。私自身まだ全ては受け入れきれてないないことだけど、出来れば今まで通り接して欲しいとは思う。
「………」
「………」
「……? あのー?」
「ちょい待って。いや、なんつーか聞いたことをまだ消化し切れてないっつーか」
「………」
「覚悟してたより重すぎて半強制的に聞き出したこととか、交流会で囮にしたこととか、その他諸々に関する自己嫌悪がやばい」
「その辺は私が言わなかったのが悪いんだから別に気にするようなことじゃないと思うけど…」
三人揃って沈んだ空気になるものだからこっちのが困惑してしまう。言うと決めたのは私の意思であって強制だとは思ってないし。
「それにこう見えて私実は打たれ強いから!」
「…どこが?」
「えっ、見えない?うーん、死ぬほどの肉体的苦痛を味わってきてるし、高校入る前はイジメだって耐えてきたから精神的にも多少は鍛えられてるはずなんだけどな」
「待って。贄犠ってイジメ受けてたの?」
「中学まではね。非術師からすると私は大分異質に感じるから嫌悪感を抱くみたい」
あれ、更に空気重くなった?もしかして不幸自慢みたいになっちゃってただろうか。
「でも暴力とかはなかったんだよ。私に直接何がする前に周りの呪霊が対処してたらしくて、むしろ相手の方が酷い目にあったと思う。
だからイジメって言っても前世や夢に比べたら本当に大したものじゃなくて。話の流れで口にしちゃっただけだから気にしないで」
「なまえ」
「うん?」
「ちょっとストップ」
「? 了解?」
あー…また余計なこと言っただろうか。全部言えってことだったけど、どの辺までが全部の範囲内か不明だ。皆が不快にならない程度だといいんだけど。
中々復活しないものだからテーブルの上にあったポテチを開封して食べ始める。部屋の中にパリパリと私が食べてる音だけが響いて数分が経過した。
「…贄犠は前からからこのこと知ってたんだろ」
「そうだね。詳細も合わせると4月ぐらいからは」
「ならこの話はもう終わりでいいんじゃねぇのか」
「はあ?伏黒、アンタ何言って、」
「呪霊に関しては贄犠が自分で祓いたがってんだから手を出すべきじゃない。だから悪夢もどうにか出来ない。ソイツ結構頑固だし。
でも俺達は事情を聞いたし今後は対応も対策も一緒に出来る。それでいいだろ」
伏黒がじっとこちらを見ながらそう言った。もしかして蒸し返したくないって言ったの気にしてくれてる?
「まあ俺らがあれこれ考え過ぎると逆に贄犠が気にしちゃうしね」
「ああ」
伏黒のお陰で話が終わる方向になる。空気が重くて気まずくなってきてたから助かった。
「なんかムカつくわ」
「え?」
「伏黒の自分の方がなまえ知ってる感出してるのが腹立った」
「出してねえよ」
「つか実際俺らより伏黒のが過ごした時間長いんだし仕方ないんじゃね?」
「寮での時間も込みだと多少は私だって長いでしょ」
「いやでも贄犠って結構伏黒の部屋に入り浸ってるよな」
「正論言ってんなよ、ぶっ飛ばすわよ」
「正論なのに!?」
急に変わった話題に気を遣われてるなと感じつつ、その様子に思わず笑みがこぼれる。
「何笑ってんのよ」
「いや、いつも通りだなぁ、って」
「…そう。よし、なまえの怪我は問題ないみたいだから買い物行ってシミラーコーデ買いましょ。男共は荷物持ちね」
「突然!?」
「いつも通り、でしょ?」
「! そうだね」
幸せで。幸せで幸せで。今、この過ごす時間が幸福過ぎて。酷く際立つんだ、
きっと亜儚は知っているから私を高専に置いている。私は今を大事にすればするほど、死を恐怖する。毎夜毎夜訪れる夢が怖い。果実が熟す。なのにこの幸せを手放せないから愚かしい。
同情されたくない。対等でいたい。この胸の内を話すことはないだろう。現実が幸せだから余計に夢が怖いだなんて、どうしようも出来ないし、不幸になりたいわけでもない。
だけど私に出来ることは限られていて、その為に足掻く。滑稽でも構わない。足掻いて足掻いて、そしていつかあの呪いすべてを──殺してやろう。
そう心の中で誓いながら、笑みを浮かべた。
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