よんじゅうわ
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継ぎ接ぎの呪霊がやって来たのは夜中だったが、あの後はさすがに眠るなんて出来ずに夜が明けた。
一夜明けて機嫌の直った呪詛師の男がまたやって来た。
「真人の奴、急に来てアンタに会わせろって勝手だよな。殺さず拐えたのは俺の手柄なのに全部横取りされるかと思ったわ。ちなみに真人って昨日ここに来てた呪いな」
「………」
「あ、言っとくけど、俺はアイツらと仲間とかじゃないぜ?多少協力し合ったりもした…いやしてねえな。…まあただの知り合いくらいの間柄なんだよ。
でもあんな凶悪な呪いに脅されちゃあっちの要望を突っぱねるわけにもいかなかったみたいな?」
聞いてもいないのにベラベラと言い訳じみたことを言い連ねる。私から見たらお前もあの呪いも大した違いはねえわ。
「つかさ、たった1日で随分デカくなってんな、その呪霊」
ちょっと引いたような表情をしながら私に纏わり付く呪霊を眺めている。
昨日、真人とか言う呪霊が去ってから男が戻ってくる前に逃げようと試みたが、私の怒りで増幅した呪力を一気に食らい、簀巻きの如く動きを封じられてそれは失敗に終わった。
その上、夜が明けるまで更に成長を遂げ、今やその重量で身体が悲鳴を上げる寸前だ。お陰で薬を打たれずとも動くのは不可能になってしまった。
「そんだけ呪力奪われてるのに死んでないのが不思議すぎるわ。永遠と呪力を捻出し続けれんの?」
「知るかよ」
「あっそ?ま、俺はその辺興味ねえや。とにかくお前の呪力はやべえってことさえ分かっとけば十分だろ」
聞いときながら勝手に自己完結してやがる。情報の詳細さから考えるに亜儚や蝕衰とは手を組んでなさそうだな。じゃあ昨日言ってた前の私の死体で気を引いたってのも本当だろうか。まあまだ決めつけは出来ないけど。
「俺さぁ、昔は善良な呪術師目指してた頃も合ったんだけど思ったんだよ。非術師より俺のが優れてるのに、なんでアイツらは俺に媚びへつらわねえのかなって。おかしいだろ?幸せに暮らしてる手助けをしてやってる俺は感謝すらされることなかったんだぜ。
腹が立って一人殺しちまったことがあって、それがとんでもなく爽快でよ。そっからはもう止められねえったら。警察共も凡人だから俺が殺してるのも気付きやしねえのが面白くて仕方ない。
呪いや術師の存在はもっと世に知らしめるべきなんだよ。そして向けられる恐怖がもっと俺らを愉快にする」
自分語りし出した男はいかにも呪詛師って感じ。行動も思考も、醜悪過ぎて吐き気がする。
「だから俺はもっと人から恐れられたいんだわ。今はお前も俺のこと怖いだろ?」
怖い?馬鹿言わないで欲しい。
「死に対する恐怖はあってもお前のことは全く恐ろしいとは思えない。宿儺と対面したからかな。宿儺と比べたらお前、その足元にも及ばないくらいショッボイ小物だし?」
そうだ、宿儺。あの呪いの王はきっと誰より恐ろしい。
「は、ははっ。今日は殴んねえよ。死なれたら面倒だし。でも麻酔はナシにしてやるよ」
麻酔?何に使うつもりだ?
男は鉈を取り出し、呪霊を傷付け始める。何してんだコイツ。左腕の周りに纏わり付いてた呪霊の身体をぶった斬ったと思ったら、自由になった片腕を踏みつけられた。やっと動かせる状態になったけど成人男性の体重で踏まれていると反撃は出来ない。
「こういう時って口に何か噛ませとくんだっけ?ま、腹が立ったし別にいっか」
不穏な言葉が聞こえた直後、言葉にすら出来ないほどの激痛。
「─────!!!」
痛みに耐えられず声のない叫びを上げながら腕を引き戻そうとするが、男がそれを許さない。
「1発じゃ足りなかったな。骨って結構硬いんだなー」
ガンガンと打ち付けるように手首に鉈が振り下ろされる。何度かそれが繰り返され、ぶつりと汚い切り口を残し手首から先が切り離された。
「っ…ふ、ぅ…、っ!ぅ…く、」
落ち着け、落ち着け、落ち着け。この怪我なら出血多量にならない限り死なない。大丈夫、まだ死なない、から。後で蝕衰に治させればいい。だから、落ち着け。
「ひゅー!泣き喚きもしねえとかすっげーな。この程度慣れたもんってか?」
「だ、まれ…っ」
「騒がねえでくれて助かるわ。これからもっとやってかねえとだから」
「これ、から…?」
「お前って特級呪物なんだろ?俺が使ってみても良かったんだけど、それよりこうやってパーツ毎に誰かに売っちまった方が得だしよ。初めは思い切って手から貰ったけど、次から指を1本ずつにするから安心しろよ」
何が、安心だ。くっそ…。死んでくれるなよー、俺の金の成る木ー、などと面白そうに笑いながら、止血をしている。
死にたくない。死にたくない。でもこんな男の為に生きたくない。
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