さんじゅうはちわ
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1年の中で一番付き合いの長い贄犠の第一印象はヤバい奴。初対面の時はその呪力量から本当に人間かすら疑ったほどだ。
暫く過ごしていくうちに、人付き合いが下手くそというのも追加された。今でこそ慣れてきているが、4月頃の贄犠は他人との接し方すらわかってない感じだった。
だから五条先生が適当なことを言えばそれを信じるし、急に距離を詰めてみたり、かと思えば離れたりと距離感がブレまくってた。俺もそういうのが得意なわけじゃないが、贄犠ほどではないと断言出来るくらいには。
他には色々やらかすトラブルメーカーでもある。
炭みたいなクッキーを焼いたと思ったらそれが呪物に変化してたり、懲りずに手芸に手を出したと思ったらそれも呪物になったり。その効果までは知らねえけど、意図せず呪物製造する時点で問題児だ。
初任務の際に、呪霊同伴の上に祓い方を俺に聞いてきた時は一人の方が良かったかもしれないと思った。んで別行動の後に合流すると怪我した痕跡があるわ、建物は壊れかけてるわ、同伴の呪霊が増えてるわで、本当に俺だけ派遣してくれれば良かったのにと切実に思った。
街に出掛けると100%呪いを引っかけるのは同情するが、一緒だった場合は正直めんどくせぇ。
あと交流会でも助力に来たはずの贄犠が逆に特級呪霊に目を付けられる始末。アイツ絶対不運の塊だろ。
一緒に過ごす時間が長くなるほど贄犠は遠慮なくなっていった。それを不快と思わなかったのはアイツの体質故なのかは自分でもわからない。
そばにいる時間が長くなるほど言いようのない欲が生まれた。その時は何かを求めたわけじゃない、一緒にいるとただ落ち着く。
贄犠に付き纏ってる亜儚という呪霊は相性が良かったんだろうと言っていた。抱く欲の種類にも大きさにも個人差があり、本質に近付くほどに欲から執着が生まれ増大するのだと。
だから贄犠が御守りを持ち始めたのは正直助かった。身の内に溜まっていった欲が小さくなったからだ。そして強制的だった贄犠への関心が薄れ、アイツに対する感情が生贄に対するものだけでないことをその時初めて知った。
贄犠が時々御守りを持ち忘れる時などは酷く困った憶えがある。
確かにあの御守りは外から感知出来る呪力を相殺してる。でも一部の人間からするとそれ以上に贄犠の体質を軽減する効果の方が絶大だった。
偶に御守りを持ってなかったら、落ち着いていた欲が突然現れ、反動がどっと来たりする。最近は慣れてきたから問題ないが、初め頃は持つか持たないかハッキリしろと贄犠にキレたくなったほどだ。
ただ、贄犠はなんつーか、酷く歪だった。どこがと明言するのは難しいが、強いて言うならアイツの不安定な感情が。
そのこともあり、今は贄犠を少し別行動をしたり、目を離すだけで何をしでかすかわからないから放置出来ない奴だと思ってる。だからいつまた問題を起こすかと考えると近くにいた方がまだマシだ。
贄犠に対して言いたいこと?…人の式神に芸を教えるのはやめろ。何故か式神が贄犠に懐いているから玉犬がつい先日はおすわり、お手、おかわりに加えて伏せまで覚えてしまった。何度も言うが犬の見た目をしてようと式神と犬は違うって言ってんだろ。
あとは俺の部屋に私物を持ち込むな。間食はもう少し控えろ。何より俺の部屋に食いに来んな。せめて食ったらすぐにちゃんと片付けろ。…今思いつくのはそれくらいだな。
「で、結局のとこなまえのことどう思ってるわけ?」
「だから今聞かれたことは全部話しただろ」
「そうね。じゃあ言わせてもらうわ、アンタのそれ、最後はもう完全に保護者目線じゃねーか!私が期待したのは少女漫画的展開なんだよ!途中までいい感じの線いってたのに、なんでお母さんに転向してんだ!」
「誰が母親だ」
「テメーがだよ!」
「まあまあ釘崎、どーどー。大きい声で話してると贄犠が起きるって」
「まず男の部屋で呑気に寝てるなまえもおかしいのよ!危機感持てっての!」
「…(スヤァ」
「爆睡かよ!!」
「なんで釘崎はあんな荒ぶってんだ。贄犠がこの部屋に入り浸ってんのは前からだろ」
「釘崎は贄犠が自分より伏黒の方によく行くから羨ましいんじゃね?」
「ああ、そういう」
「黙れオス共!」
「オス…」
「ちょっとなまえが懐いてるくらいで調子乗んじゃないわよ。私なんか一緒の布団で並んで寝たことあんだからね」
「どんな張り合い方?」
「んなもん普通に考えて俺があるわけねえだろ」
「マウント取ってんだからもっと羨みなさいよ!」
「贄犠が絡んだ場合の釘崎の扱いがだりぃ…」
「伏黒、シッ!」
「もう贄犠起こせばいいんじゃねえのか」
「ちょっと何よ。私をなまえに押し付けて厄介払いしようっての?」
「厄介な自覚あったのかよ…。つか正直全員俺の部屋から出てって欲しい」
「エッ、俺も?」
「全員」
「えー…じゃあ誰が贄犠起こすの?」
「………」
「………」
「………」
「…(スヤァァ」
この3時間後にやっと目が覚めた私であった。
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