さんじゅういちわ
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「…寂しい」
ぽつんと湖の真ん中で一人。隣には何故か少し前からカラスがいる。野生、というより普通ではなさそう。私は動物に親の仇かってくらい嫌われてるし。
「京都校の誰かの術式とかかな?」
答えが返るわけないのは理解しつつも問い掛けると、こてんとカラスは頭を傾げる。可愛いかよ。
「カラスだから箒持ってた魔女っぽい人だろうか。魔女って言ったらカラスか黒猫だと思うんだよ。
……寂しいからって独り言を言い始めたらやばいね」
一人で自問自答をしてたら不気味じゃない?もし今の状況見られてたら恥ずかしいんだけど。
にしてもこのカラス大人しいなぁ。一緒に湖を眺めてるだけで何もしてこないし。
一応呪力で守る準備はしてるけど、油断してるとこで急に攻撃してきたらどうしよ。でも亜儚曰く、私が本気で呪力で防御したら特級並の防御力はあるらしいから多分大丈夫なはず。自分がどんどん人間辞めてってる気がしてならないが、体が耐えられないのでオススメはしないと言われてる。あれ、そう考えるとダメじゃん。
スっとカラスから数cm気持ちばかり距離を取ってみるが、その分近付いてくる。クッ、可愛い…。こんなに長時間動物が近くにいるのが初めてで嬉しすぎる。まさかカラスをこんなに可愛いと思う日が来ようとは。
呪い寄ってこなくなったな、なんて考えているところにズズン、と遠くから地響きが聞こえた。誰か知らないけど派手にやりすぎじゃない?後で直すの困んないんだろうか。──って、え?帳?
空が黒く染まり始める。今回の交流会で帳を下ろすなんて聞いてないんだけど?まさか非常事態だったり?
動くべきか迷っていると戦闘音は近付き、今は川上から音がしている。合図はない。うーん…うーーん………─────
様子だけこっそり見てみようという考えに至り、木々に隠れつつ川上へ向かうと、真希さんと伏黒が呪霊と戦闘中だった。団体戦で放たれてる呪霊は二級が一番上って聞いてたけど、あれホントに二級か?二人が苦戦してるなんて予想以上に強そうなんだが。
なんとか助力出来ないか考えている途中で呪霊がこちらを見ているのに気付く。…これバレてね?あ、そうだ、呪力隠せてないわ。
『脳を揺らすほどの、甘い香り。そうか。彼が言っていたのは貴方のことですか。
ああ、確かにこれは…酷く、欲に駆られる』
呪霊の意識が完全にこちらに向く。
「なまえ!」
「贄犠、逃げろ…!」
伏黒は口から血が溢れ、真希さんは肩に傷を負っていた。そんな状態なのに二人は私を心配している。
『とても、危険だ』
そう言った呪霊から小さい何かがすごいスピードで飛んで来て、呪力で防ぐな!と伏黒が叫ぶ。御守りがあれば外側だけなら相殺出来る。ナシでも抑えるくらいならなんとか。
だけど困ったことに私は
左腕でそれを防いだと思ったら、瞬く間に何かが当たった腕から木が生え、森の木々より何倍も高く成長する。その重さで左腕が潰れ、私自身も腕と共に地面へ倒れる。尋常じゃないほどの腕の痛みと同時に、腕の木は実や葉が枯れ始め、枝、幹、根、とすべてが朽ちた。
重さは消えたが、左腕はぐしゃぐしゃで完全に動かない。だが千切れなかっただけまだマシだと思いたい。てかなにがしたかったんだろ、今の攻撃。腕を潰すだけにしては遠回しな攻撃だったけど。
『呪力の総量の底が一切見えないのは貴方がこちらに向かっている時からわかっていました。しかし芽が耐え切れないほどの呪力がたった一人の人間に存在するなど』
有り得ないとでも言いたげな声色で呪霊がこちらに近付いてくる。それを止めようとした真希さんが呪霊に捕まり、伏黒はどう見ても限界なはずなのに無理やり奮い立たせるように叫ぶ。
今の私、完全に二人の邪魔だ。助力どころか私のせいで余計に無理させてる。
相手が呪いなら。それなら私自身を餌にすれば。
その考えに至り、二人がこれ以上傷つく前にと右手に持った呪具を動かない左腕に振り下ろして───
「恵、なまえ、やめろ。私らの仕事は終わった。選手交代だ」
真希さんがそう言うと虎杖と東堂さんが現れ呪霊に攻撃を食らわせた。
東堂さんによって救出された真希さんともう限界だった伏黒を、二人の後からやって来たパンダ先輩が担ぐ。なまえも行くぞ、と声を掛けられ、自分がいたところでまた邪魔になるのは目に見えてるから小さく了承の返事をする。
『貴方だけは行かせるわけにはいきません。何故、何故、何故。ここまで欲してしまうのか、貴方を手にすればわかるかもしれない』
しかし呪霊がそれを許さず、虎杖も東堂さんも無視して私に寄る。
私が皆から離れて逃げれば囮くらいにはなれるだろうか。そんな考えが浮かんで、パンダ先輩とは逆方向に足を向けると、目の前に見覚えのある外套とお多福面が現れる。
「───フラクタス」
「黒刃…?なんで…」
「貴方は私と行きましょうか」
「は、」
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