にじゅうはちわ
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「──なまえ、みぃつけた」
太陽光を遮るほど木々が生い茂った薄暗い森で、瞬きをする一瞬の間に目の前に現れる長身の男。私が10分かけて逃げ隠れたのを、スタートからわずか10秒で捕まえられた。しかもこの底意地の悪い教師はこちらが一息ついた隙を狙って驚かせるかのように現れる。
発信機でもついてんのかと疑いたくなるほどの素早さと正確さ。どこに隠れようと、何度やっても、尽く居場所がバレるものだからそろそろ本気で怖い。もはや一種のホラーだ。
「じゃあ他の子探しに行こっか」
「…うっす」
これはかくれんぼをして遊んでいる訳ではなく、交流会に向けての特訓なんだ。…おそらく。
先日東堂さんに指摘されたことを狗巻先輩に相談してみたら何故かとんとん拍子にかくれんぼをすることとなった。最初は狗巻先輩の悪ふざけだったんだけど、その場に五条先生が居たのがいけなかった…。狗巻先輩の悪ふざけに五条先生が悪ノリしやがったのがこんな状況になった顛末だ。
鬼は僕がするよ、と引き受けたのは絶対に私への嫌がらせかと思いたくなるほどだ。
現に全員が五条先生に見つかりやり直し、というのを数回繰り返しているが、どれもまず私が見つかる。で、残りの人達を探しに行くというのがテンプレ化してきてる。
そんで他の人を探す時には、どこにいると思う?と聞いてくるのだが、私にわかるわけがない。
「なまえ。野薔薇はどこにいると思う?」
ほら来た。
「わかりませ、」
「わからないはナシね」
本当に性格悪いなこの野郎。
「あー…右?」
「残念。真っ直ぐだよ」
なんでわかんだよ。まずそのコツを教えろよ。
「なまえは索敵が下手にも程があると思うよ?」
うるせぇ。
野薔薇、真希さん、狗巻先輩、パンダ先輩が見つかり、あとは伏黒を残すのみだ。私以外の人達は休憩と言って木陰でのんびりしている。確かに初っ端から見つかったカスですけど、片や休憩、片や最初から最後までほぼ鬼役に同行って落差が激しすぎる…!
そういえば伏黒はさっきから見つかるのが後半ばっかな気がする。なんでだろ?
「五条先生、伏黒ってなんでなかなか見つからないんですか?」
「恵には玉犬がいるからね。僕らの居場所は把握してるでしょ」
!! マジかよ伏黒。呪力感知出来ない私にこそ玉犬貸して欲しかった。
「ま、僕は式神がいてもいなくても捉えることくらい余裕だけど。恵を最後にしてるのは、気分?」
アッ、やっぱ意味なさそう。というかこの大人げない教師、気分で私を最初にしてるってのと同意義のこと言いやがったんだけど!
「そろそろお腹減ってきたし、パパッと終わらせようか」
そう言った五条先生は私の襟に手を伸ばし──次の瞬間、目の前の景色が変わった。同じ森なのだが、先程より木々が少なく川が流れている。……で、何が起こった?
キョロキョロ辺りを見回せば、五条先生が私の襟を持つ手と逆の手がその場にいた伏黒の肩に置かれている。わぁー、ほんとにパパッとだったわ。これ、五条先生が鬼だと無理ゲーじゃね?生徒に勝たす気なくね?
五条先生の手が離れ解放されたので、とりあえずそこにいた玉犬の黒をモフっとく。はー、ふわっふわしてる。癒されるわー。
ついでに吸っとこ。すー、はー。式神だからか獣臭はしない。ただ背中らへんを吸ってると、頭を撫でろとでも言いたげに、グリグリと頭をお腹に擦り付けてくる。なんだよ、可愛いかよ。
黒ちゃんと戯れていると一瞬にして目の前のわんこが消え去る。おそらく伏黒が消したのだろう。
「消すならせめて一言くらい言おうよ。伏黒くんの口は飾りですかぁ?」
「じゃあ消した」
「事後報告…!」
「昼食後はいつも通り組手ね。ぶっちゃけ僕もう飽きたし」
自由か。
「但しなまえは別メニューで呪力コントロールかな。本人無自覚だけど、最近御守り持ってても呪力が隠しきれてないよ」
エッ、うそぉ。ちょっと前に私もう御守りナシでもいけんじゃね?とか思ってたのに。
「じゃあまたぬいぐるみのやつですか?」
「うん。ただ学長から壊しすぎって苦情が来てるから気を付けてね」
「アッ、ハイ…」
私だってわざとじゃないんですよ。気付いたら、こう、パーンッ…みたいな?未だに自室の壁には目玉の部分のビーズがめり込んでる。
苦手なんだよね、ぬいぐるみのやつ。永遠と針穴に糸を通し続けてるような感覚だから。気を抜こうものなら四散するし。可能ならもうちょい耐久力のあるものを要求したいところだ。学長に自分から言う勇気は皆無だけど。
「贄犠」
「?」
ハッ、伏黒の目が言ってる…。お前、接近戦も一番弱いのにまた呪力コントロール出来てないのかよって。
仕方ないじゃん!こちとら数ヶ月前までは一般人だぞ!体育もせいぜい平均ちょい上なんだよ!
くっそ、今に見てろよ。交流会では伏黒が腰抜かすくらい急成長…は、さすがに無理だな。じゃあ一番活躍?…も無理。あれ?私ってなにも出来ることなくね?言われるまでもなく戦力外じゃん。うわ、文句言ってないで頑張ろ……。
この後、ご臨終なされた学長のぬいぐるみが二桁に到達したのはまた別の話だ。
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