にじゅうななわ
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「なんで呪いはなまえにこだわんだ?多少悟から聞いてはいるが、普段は普通の人間と変わらねえだろ」
ずっと疑問だった。悟は肝心なとこをぼかしやがるからなまえのことをあまり知らない。
私らが聞いてるのは強い奴ほど惹きつける因果を持っていて、呪力がめちゃくちゃ多いってことくらいだ。なんでそんな訳わかんねぇ体質なのかも、なんで呪いがなまえに固執するのかも、何も知らない。
「なにも感じんの?おかしいねぇ。六眼の坊じゃないにしろ、自分らもひいさんの影響受けてるけどなぁ?」
「こんぶ…?」
「ひいさんの近くやと落ち着かん?あまぁい匂いとかせん?」
落ち着くのは確かだ。傍に居るだけで満たされる。でもそれはきっとなまえが大事な後輩だからだ。
「匂いなんてしねぇよ。特に呪力がない私はなまえの体質に影響されねぇだろ」
「んー、なんでそう思うんか、よおわからんわ。自分、満たされてない器やろ?そういう縛りなんやろうけど、たかだか人一人の一生分の縛りでひいさんの因果から逃れられるわけない。むしろ器ん中が少ないから満たしとうて求めてるはずやけど?」
「な、に」
否定が、出来なかった。有り得ないと言えるほど自信を持てない。
印象は良くない初対面だったにも関わらず、簡単になまえを受け入れた自分がいるからだ。
「呪力を生むことはあっても呪力を扱えへん非術師はひいさんを恐れ、縛りのせいで呪力のほとんどない自分は求めて、術師は強いほど惹かれる。強さの基準は曖昧やから、ひいさんとの相性もあるやろうけどな。
それにしても人間にはわかりにくいんやろか。せやけど六眼の坊はさて置き、黒髪の坊は自覚してたし、自覚するかどうかも個人差があるかもしれんねぇ。
ま、人間やない呪骸ならひいさんの価値も匂いも存在も、よぉく理解してるんとちゃう?」
「ノーコメントで」
「ふふふ、いけずやねぇ。
ただなぁ?ボクには理解出来ひんのんよ。なんでひいさんは人間がええんやろ?なんで人間の味方を選ぶんやろ?
ひいさんを呪ったんも、生贄を求めたんも、果実に溺れたんも、ぜぇんぶ人間が始めたことやのに。ひいさんは人間のこと殺したいほど憎悪してるはずやのに。
何度生まれ変わってもひいさんは人間として生まれる。なんで、やろねぇ?」
呪われたってなんだ。生贄って、果実って。生まれ変わるって、一体なんの話だよ。
「……知るかよ、んなこと」
知らねぇよ、なにも。自分の感情ですら曖昧なのに。
──────
今日もまた限界までしごかれダウンしたところを木陰に移動させられた。マジで無理、交流会までに一本取れる気がしない…。
そして蝕衰な。なんで呑気に先輩達と話してんだ。お前呪霊だよね?さすがに馴染みすぎだと思うんだけど。
蝕衰との話が終わったようで、なまえーそろそろ起きろよー、と悪魔の声が聞こえてくる。聞かなかったことにしたい。でも無視すると後々手合わせ中に厳しくされるから、言う通り動かなければならない。
顔に乗せていたタオルを取り払い、召集の声のもとに向かう。あれ、野薔薇と伏黒がいない?やめてよ、両方がいないとか私の負担が大きいだろうが。
「あのー…野薔薇と伏黒って…」
「パシった。帰ってくるまではなまえに付きっきりでやってやるよ」
お願いだから私も一緒にあの二人とパシリさせてください…!
「おかか」
「なんだよ、棘。次は自分の番だってか?なまえは生身の戦闘力雑魚なんだから近接戦闘を重心にやった方がいいだろうが」
「おかか!ツナ、明太子」
「まあ確かに呪力のコントロールをもう少し覚えた方がいいってのはあるが…」
「しゃけ。高菜」
空気を読まずに私のために争わないでって言いたい。いや本当に争わないで。パシリに行かせて。
「そこまで言うならしゃーねえ。じゃあ棘の次は私だからな」
「んじゃ、その次が俺で」
いーやー!そんな順番決めて欲しいんじゃないんだよ…!
二度目のダウン。完全に伸びているところをパンダ先輩の小脇に抱えられ移動している。もうね、私は置いてってくれてよかったんだよ?皆が戻ってくるのを校庭で大人しく寝ながら待ってるからさ。
反論空しく、動けない私は荷物のように運ばれる。そんな中、先輩達が京都校の話しているのだが、内容はちょっと不穏気だ。
「京都校の人…?仲悪いんですか?」
「悪いっつーか、なあ?」
「???」
向こうの人達が嫌がらせ大好きって言ってたし、過去に嫌がらせでもされたんだろうか。野薔薇と伏黒、大丈夫かな遭遇してないといいんだけど。
しかしその願いを裏切るように、突然物音と言うには酷く大きな、建物が破壊されたような音が響いた。
「こりゃまずいな。行くぞ!」
「え?え!?よくわかんないけど私は置いてってください!!!あ、ああぁぁぁぁぁぁ………」
音を聞いて急に走り出したパンダ先輩にぼとりと落とされたと思ったら、怪我した伏黒と上半身裸の知らない男の人がそこにいて、狗巻先輩が男の動きを封じパンダ先輩が頬を殴りつける。状況は読めないけど、あの人が伏黒を怪我させたってことだろうか。伏黒のことは心配なんだが、その前に───
「酔った…おぇ……。だから置いてってって言ったのに…」
先輩が私を抱えてるのに容赦なく腕を振って走るから…。
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