にじゅうにわ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ひいさん、途中からおもろいくらいに成長せんねぇ」
「うっさい!」
今日は蝕衰の術式を教えて貰ってる。亜儚のも試したけど、今のとこ蝕衰の術式が一番習得に近いと言ってもいいだろう。
と言っても始めは順調だったが、ある程度完成形に近づいたと思ったらそれ以降成長の兆しが見えない。つまり失敗続きだ。
その術式に呪力を10使うとして、私の場合だと100でも1000でもぶち込んでいるらしいので術式として成り立つ前に祓うべき呪いの体が耐えられない。
内部から爆発したような先日の学長のぬいぐるみや蝕衰が街中で呪いにやった時のように、それよりもすごい勢いで四散する。一瞬でそれを避ける身体能力など身に付いてないので、毎回のごとく全身に血なのか内臓なのかよくわからないものを浴びてしまっている状態だ。
しかも時々呪力を注ぐ位置を間違えてるようで何故か周囲が爆散する。
祓えてると言えば祓えているが、術式ではないのは確かだ。というか力ずく過ぎる上に確率で周りに被害が及ぶので実践で使えるわけもない。
おかしいな。爆発する術式じゃないはずなんだけどな。
「見てや、ひいさん。さっきの呪いの目玉、中からピンクの血ぃ出てきたで。変なんもおるんやなぁ」
「グロい!見せんな!」
「えぇ?ひいさんがやったのに」
ピンクの血もどきと一緒にねとりとした粘膜がついている潰れかけの目玉を顔に近付けられたので、咄嗟に蝕衰の腹を蹴りつけ距離を取る。キモイわ!ただでさえ全身汚れたんだから更に汚れを近くにやんじゃねえよ。
「今のは中身の液体が多い呪霊でハズレやったねぇ。次はどんなんが来るか楽しみやわぁ」
「どこがだ…」
粘度の高い体液が未だに付いている気がして嫌気が差しながら水道でその感覚を洗い流す。寮に帰ったら即風呂に入る。絶対に。
「呪霊の体は殺したら消えるんやからそんな気にせんでもええんやない?ほら、ひいさんもう綺麗やろ」
「気分の問題なんだよ。体液を頭から被ったって自覚してんのが最悪。粘ついた感触がまだ肌に残ってて気持ち悪い」
「人間って難儀やねぇ」
私からしてみればそれを理解出来ないお前の方が意味わかんないっての。
「休憩も終わったし、どんどん行こか」
「はぁぁあああ……なんでそんなにやる気だよ…」
大きすぎる溜息を吐きつつ蝕衰に御守りを渡す。これを持たないまま呪力のコントロールを意図的に怠れば勝手に呪いから寄ってくる。気分はゴキブリホイホイだ。テンション上がらないわー…。
体から力を抜いてすぐ、裡だけに留まっていた呪力がくゆる煙のようにじわりと外に溢れ出す。
「さすがひいさん。もう釣れたわ」
「そう言われても私には呪いの気配はさっぱりだから。いつになったら察せるようになることやら」
「まあひいさんには難しいんやない?人間に蟻んこの気配を探れ言うてるようなもんやしねぇ」
あ、そりゃ無理だね。よーし諦めよ。索敵は伏黒に丸投げする、はい決定。伏黒とじゃない時はこの呪霊共どれか使おう。
蝕衰の言葉通り、甘いものに集る虫のごとく数体の呪いが姿を現した。
「ひいさん、まだ殺したらあかんよ。動きを制限するとこからや」
「いやさっきまでも祓う気はまだ一切なかったんだけど」
「…ボクが二体捕らえとくから、ひいさんはその体の大きい鈍いやつの動きを止めてみてくれん?」
無視かコラ。
いいよ、いいけどさ。どうせ失敗したのは私だし。だから何度も繰り返して成功するまでやるしかない。
片手で印を結ぶ。印を結ぶだけならまだ大丈夫。
「-禁錮-」
呪霊の四肢に杭が打ち付けられる。本来ならこの術式はここで終了。だが問題なのはこれから。
その杭が刺さった場所からぶくぶくと水疱が現れ始め四肢が肥大化してきた。あ、まずい。まただ。
「ひいさん、もっと呪力抑えよか。そのままやとまたパーンてなってまうよ」
「んなの、出来たら元々苦労してない…っ」
抑える?どうやったら抑えられるの?ていうか抑える以前にそんな呪力込めてるつもりないんだけど。
「あらら、またダメやったねぇ」
蝕衰がそう口にしてすぐ水疱の一つが弾け、それに続いて呪霊の体の至る所に内部から爆発のような現象が起こり始める。ここまでいってしまうともう止められない。
元のサイズの倍近くまで体が膨らみ格子に食い込む。もう無理、逃げよ。そう思った瞬間、爆散した。また、逃げれなかった…!
「ふふふ、ひいさん今度は真っ黒け」
「だまれ…くっそ、最悪だ」
「また失敗してもうたねぇ。でも大丈夫やわ。代わりはいくらでもたぁっぷり居るんやから。
ボクはひいさんと一緒に居れて、ひいさんの失敗するかいらしい姿見れて嬉しいし。何度でものーんびりゆーっくり仕上げればええわぁ」
私は、まっっったく楽しくない!!一日でも早く完成させてやるからな!
1/1ページ