じゅうごわ
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「ゲホ…ッ!ゲホゲホッ!……ふ、…っぅ、ぉえ……」
眠れぬまま日付が変わり朝が来て、昨日から何度も吐いた。いくら嘔吐しても胃の中にはもう何も無い。寝てないのに頭がぼんやりする。
昨日亜儚に見せられた夢はいつも夜に見る夢と違って、途中でそれが現実ではないことに気付いてしまった。
毎夜見る永遠と死に続ける夢と違い、自分が生きてることを自覚した上で死ぬのは慣れてない分余計にキツい…。
"わたし"は生きているのに"わたし"は殺されて。
"わたし"はあそこにいたのに"わたし"は今ここにいて。
"わたし"のからだはどこも失っていないのに"わたし"はどこかが欠けている。
"わたし"はひとりぼっちで"わたし"もひとり。
"わたし"は死にたくて"わたし"は死にたくなくて"わたし"は生きたくて殺したくて求めて泣きたくて苦しくて縋って辛くて死んでしまいたくて醜くて愛おしくて痛くて焦がれて。
"前"と"今"が混ざる。"夢"と"現実"が混ざって、混ざって、──────ああ、もう、なにも考えたくない。
「──なまえ」
ぺちりと軽く頬を叩かれ名前を呼ばれる。虚ろだった意識が覚醒し、目線を合わせるために小さくしゃがんだ不審者ルックの長身の男が目に映る。
「ご、じょうさん…?……あー、ここ部屋か」
最悪の気分だ。
周りを見渡せば昨日目の前の男から壊滅的ダメージを食らった自分の部屋。なんでここに戻ったんだろ。
嘔吐の度にトイレに駆け込んでいたので、トイレの外に出てすぐの廊下だった場所の瓦礫に背を預けた状態で蹲っていた。
そういやこの人昨日から当然のように女子寮入ってくんな。
「歩ける?歩けないなら運ぶけど」
「あるく?」
「顔色酷いよ。硝子に見てもらおう」
「しょうこ」
言葉の単語だけを繰り返す。寝てない筈なのに寝惚けているかのように呂律が上手く回らない。寝てない、寝たくない、今は夢を見たくない。しっかり、しないと。
五条さんにグイと二の腕を引かれ立たされる。
「なんでここに戻ってんの?昨日別れる時に隣の部屋使ってもいいって言ったの聞こえなかった?」
「いえ、聞こえました。ただ、なんで…だろ。
自分が居ていい場所に、戻りたくて…?私の居場所だとわかる所に」
そうだった。戻りたかった。この部屋を与えられたのがここに居てもいいって証拠みたいなものだったから。"前"と違うって実感したかった。
「…なまえ、昨日真希の部屋を出てから何かあった?」
「なに、か……。夢を、見ました。いつもと同じだけど、いつもと違う夢」
死んで死んで死んで。でもそこにはいつもと違って"今"の私の自我があって。…思い出したくないな、また
「うーん、なまえってちょっと目を離すと変なモノ抱えてて、世話が焼けるよね」
「心外なんですが」
「反論出来る元気が戻ったなら何より」
素直に認めるのが癪だったからつい否定してしまったが、確かに五条さんには面倒かけっぱなしだ。今だって成人男性が女子寮に堂々と入ってるのはさて置き、わざわざ様子を見に来てくれてる。素直になれないとしてもお礼くらいは言っとかないと。
「…ありがと、ございます……」
「え?なに?聞こえなかった」
「…ありがとうございます」
「もう少し大きい声で言ってくれないと聞こえないなぁ」
腹立つ…!絶対聞こえてんだろクソ野郎!改まってお礼言うのは恥ずかしいってのに、それを我慢してるのを知りながらニヤニヤしやがってこの人は…!
「どーもありがとうございましたぁ!」
「どういたしまして。
もう大丈夫そうだけど念の為診てもらいに行こうか」
その言葉で自分がいつもの調子なことに気付く。五条さんの掌の上で転がされてるのを教えられた気分で妙に悔しい。いつか絶対この人手玉に取ってやる…!
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