あざれ
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目を覚ませば壁一面気味の悪い御札が貼られた薄暗い部屋だった。どこだよ、ここ。
上体を起こしぐるりと室内を軽く確認してみるが、これといってこの場所の手がかりになるような物は何もない。
まあ五体満足なだけマシかな。上空で気を失ったから多分白髪か前髪のどっちかが助けてくれたんだろう。
私が自殺なんてそれこそ──悪夢みたいだ。
もしかしたら誰か説明に来たりするのかも、と暫く待ってみたが誰も来ない。むしろ自分の動く音以外は物音一つしない。…暇だな。
制服のまま連れて来られたようで手元に荷物は何もない。何かしら暇潰しができるアイテムとか置いといてくれたらいいものを。
考え込むように手を顔の近くに持ってきて、そこでやっと気付いた。
「……え?」
壁の御札と似たような字が書かれた包帯っぽい布が手に巻かれている。逆になんで今まで気付かなかったのかと自分に聞きたいくらいだ。
袖を捲っていけば二の腕近くまで巻かれているだけでなく、他の所を確認すると腕程ではないにしても脚にまで布以外に御札もプラスして貼られていた。正直厨二病みたいで恥ずかしい。
寝ている間にこれは…もはや痴漢じゃね?訴えてやろうか。
カリカリと爪で引っ掻いて剥ごうと試みるけど全然取れない。なんでだ。そんな強力な接着剤使いやがったの?
手の込んだ嫌がらせにイラつきがらも暫く苦戦していたが、全く剥がれる気配がないので諦めた。視覚的には気持ち悪いけど不思議と動かすのには違和感ないしまあいいや。
脚を見た時に目に入ったけど床に燃えカスのような物も散らばっている。この部屋ってちゃんと掃除されてる?
私、ほぼ初対面の相手からそんなに嫌われてるんだろうか。…ん?いや、それはいつものことだったわ。そこには納得して制服についていた燃えカスを手で払った。
悪質な嫌がらせは後回しにして状況確認ってことで部屋を探索してみることにした。
入口はあるものの堂々とそこから出てみるのは少し勇気がいるし、なんかこう…抜け穴的な所がないかなと壁に貼られた御札を捲ったり引っ張ったりしてみても変化はなし。
そしてそんなことをしていると、少し力を入れすぎて御札が剥がれてしまった。でも困ったことに手元を見ていなかったせいでどこから取ったのか不明である。御札は壁一面に隙間なく、その上不規則に貼られているので予測も出来ない。ダメだ、考えれば考える程どこか分からん。詰んだ。
どう対処すべきか迷いに迷って、結局適当な所へそれっぽく貼り直しておいた。こんだけあるなら1枚くらい場所がズレててもバレやしないでしょ。取れたらヤバい系のやつじゃないことを祈る。
…というか壁の御札は簡単に取れたのに、私の体のは布だけでなく御札すら剥がれる気配がない。なにゆえ…。
結局部屋には何もないし、腕や脚の嫌がらせも今はどうにも出来ないって結論で落ち着いたものの、そうなるとまた退屈がやってくる。というか冷静に思ったんだが、今の状況って拉致されたのでは?
だって助けてくれたにしても保健室か最悪その辺に放置してくれればよくない?周囲からの嫌われ具合ではそこからまたずっと放置されそうな気もするけど、意識のないうちに知らない場所に連れて来られるよりはマシだと思う。
逃げるべきか…?あの2人の話してた内容的にタチの悪い宗教団体って可能性が捨てられない。
ヤバい洗脳とかされるんじゃないのか、これ。もしくはすっごい高い物押し売りされたりとか。
さっきまでは誰か来るのを待ってたけど、よくよく考えたら誰も来ない方が私にとって有利な状況だよね。堂々と入口からは勇気がいるだの考えてないで、逃げるなら1人の今のうちのが成功率は高いはず。
でもどこに逃げればいい?外に出たところで土地勘は間違いなく皆無だ。あの町の外に行ったことすらないんだから。
仮に大きな移動はしてなかったとしても、町中も施設や学校付近以外は行動範囲外だから多分わからないし。…詰んでね?
疎まれてるからとはいえ、自分の行動範囲の狭さを恨むわ。こんなことなら人の目気にせず歩き回ってやればよかった…。まあここがあの町である保証なんてどこにもないけど。
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