わくらば
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
義務教育さえ終われば就職先を探して施設から出るつもりでいたのに、何故だか私は高校に通っている。いやホントになんでだろ。
受験をした覚えはないが不思議なことに合格通知が届き、中学の教師も施設の大人も怯えたように進学を了承していた。むしろ絶対に高校に行けと言わんばかりの必死さまで感じてしまったくらいだ。
中学から高校に上がったところで、こんな小さな町では顔ぶれなんて殆ど変わりやしない。つまり私に対する無視や陰口、嫌がらせのオンパレードである。
よく飽きもせずそんなことやってられるなって思う。怪我したり行方不明になった人だっているのにどうして周囲の人達はこうも私への嫌悪を隠そうとせず関わってくるのか理解出来ない。被害を恐れてるくせにわざわざちょっかいを出してくるのが疑問で仕方ないんだよね。
まあ、それによって彼らが酷い目に合ったところで、私からしたらどうだっていいんだけど。
自分から望んで入学したわけじゃないから学校生活を頑張ろうというやる気はどうも沸いてこない。屋上でサボるのはもはや日常だった。
教師陣も私の扱いに困っているから特に注意も何もなくスルー。おかげで屋上に寄ってくるのは無謀にも私に何かしてくるような奴だけだ。
ガチャガチャと錆びかけているドアノブを少し乱暴に回して春の陽気が心地良い、と言いたいところだが残念ながら今日は曇り空しか見えない屋上へ足を踏み入れると、どうやらそこには先客がいた。
まーた面倒事か。一昨日1人、理由は不明だけど病院送りになったんだから暫く絡まれないと思ってたのに。
うんざりしながらも屋上にいた男子2人もこちらに気付いたので無視するわけにもいかず、軽く彼らを観察してみる。
白髪のサングラスに変な前髪の黒髪お団子。学ランは改造してるのか2人とも異なっている。というか、どっちもこの学校の人じゃなくね?入学して1ヶ月そこらだけど、こんだけ目立つ人達を知らないわけがない。…教室戻るか。関わり合いになりたくないし。
体を反転させて閉めたばかりのドアを開こうとしたら、いつの間に移動したのかすぐ傍に来ていた白髪の男子が扉を足で蹴りつけて脱出を阻止してきた。
「ちょーっと聞きたいことあるから待ってくんね?」
「無理。他当たれ」
「あ?」
「こら悟。そんな言い方じゃダメだろ」
「うっせーよ傑。多少強引にいかねぇとコイツ逃げる気満々だったろ」
お団子の方もこちらに近付いて来て、扉を足で押さえられている以上、逃げるのは難しそうだ。仕方なしにドアからは離れて彼らと距離をとる。
「ほら、悟のせいで警戒されたじゃないか」
「なんで俺のせいなんだよ。逃げられたら困んのは事実だろうが」
「だから接し方というものを、…まあ今はいいか。
君、私達は少し話を聞きたいだけだからどうか気楽にしてくれないかい?」
この態度…もしかして私のこと知らないの?じゃあ他校生どころか、この町の人間じゃない可能性のが高い。さほど大きくない町で私の存在はもはや危険標識のように知れ渡っているから。
1/3ページ